もうすぐ入園。発熱への備え、事故予防…ママ小児科医に聞く、保育園・幼稚園の入園前にやっておくべき5つのこと

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4月に新入園を控えている家庭も多いのではないでしょうか。仕事復帰に合わせての保育園入園や、幼稚園への入園、その前に気になることがあったり、準備したほうがいいことに悩んだりしていませんか。小児科医・白井沙良子先生の連載「ママ小児科医さよこ先生の診療ノート」の4回目は、4月の入園前に、おさえておきたいポイントについて解説します。

入園後の子どもの「急な発熱」への備えを

「子どもってこんなに熱出すんですね・・・」(1歳)
「熱のたびに仕事を休んで、まともに働けていないです・・・。まわりに申し訳ないし、なんのために園に預けてるのかわからなくなります・・・」(0歳)

保育園や幼稚園など、集団生活が始まる時期は、さまざまな感染症に曝露するため、どうしても発熱の頻度が増えるもの。朝は元気に登園したのに「お子さんが発熱したので、お迎えに来てください」という電話がかかってくることが、必ず起こります。

「保育園に通う0歳の子どもは、平均すると1年間に約19日、発熱のために園を休む」という報告(※1)があります。1歳では約13日など、年齢が上がるにつれて徐々に休む日数は少なくなり、5歳では約5日まで減ります。何歳で入園したのか、きょうだいがいるか(ウイルスなどは、きょうだい間での感染も多いです)など、もちろん個人差がありますので、あくまで参考ですが、思ったより頻度が多いなという印象ではないでしょうか。また上記は保育園児を対象とした報告ですが、幼稚園の場合でも、入園当初は発熱する頻度が増える傾向にあります。

とくに保育園の場合は、保護者の仕事の調整が大変ですよね。発熱時の電話連絡はだれが受けるのか、どうしても仕事がはずせないときの対応はどうするのか(祖父母への連絡、病児保育・シッターサービスへの登録など)、園や自宅から近い小児科はどこなのかなど、入園前に家族で確認できるといいですね。

発熱時の受診の目安やホームケアも、把握しておきましょう。また感染症によっては、登園前に登園許可書などが必要になることもあります。園で指定の書式がある場合もあるので、こちらも確認しておくと安心ですね。

ヘルメット・チャイルドシートの見直しを!

「ヘルメットをかぶるのをすごく嫌がるんですが、どうしたらいいですか?」(3歳)
「抱っこひもにいれて自転車送迎、ってやっぱり危ないんでしょうか?」(0歳)

園に送迎する際、自転車や自動車を使う方も多いと思います。月齢や年齢が上がると、子どもの自我も強くなり、ヘルメットやチャイルドシートを嫌がってしまうこともありますよね。ただし自転車や自動車に乗るときは、必ず装着してください。

おんぶひも・抱っこひもに子どもを入れて、自転車に乗る場合も注意が必要です。おんぶひもで赤ちゃんを背負った状態で自転車に乗っていた保護者が、自動車と接触し、ひもの中の赤ちゃんが落下した事故が報告(※2)されています。赤ちゃんはヘルメットをかぶっていない状態で頭を強くうったため、後遺症として、てんかんや腕のまひが残ってしまった症例です。

そのほかにも子どもを抱っこしたまま自転車に乗ることで、転倒や転落、それによる大きなけがの報告が相次いでおり、国民生活センターからも喚起(※3)されています。またチャイルドシートの設置方法が不適切であったために、子どもに重大な後遺症を残した交通事故も報告(※4)されています。

6歳未満のチャイルドシートについては2000年から、自転車に乗る人全員がヘルメットを着用する努力義務は2023年から、道路交通法にて施行(※5)されています。チャイルドシートは月齢・年齢に合っていて、かつ適切な設置ができているか、また子ども用のヘルメットは頭のサイズに合っているか、今一度確認しておきましょう。一緒にヘルメットを選んだり、名前や絵を書いたり、好きなシールを貼ったりしながら、子どもたちも前向きな気持ちでヘルメットをかぶれるといいですね。

断乳・卒乳は、親子とも無理のない進め方がベスト

「復職するので断乳したいのですが、どうやって進めていけばいいかわかりません。」(1歳)

入園をきっかけに、断乳や卒乳を検討する家庭も多いのではないでしょうか。医学的に絶対正解、という方法は無いので、家族の考え方や子どもの様子、ライフスタイルに合わせて無理なく進めていけるといいでしょう。

断乳や卒乳と言っても、実はさまざまな方法があります。「帰宅後や夜間だけ授乳を続ける」「休日は思う存分、吸わせてあげる」というのも、立派な断乳・卒乳の進め方です。母乳をあげるタイミングや時間が少なくなっても、母乳分泌が一度軌道に乗っていれば、ホルモンのしくみによって、吸われたタイミングで母乳が適切に分泌されるようになっています。

入園を機に完全に母乳をやめる、という場合も、入園に向けて徐々にやめていけるといいですね。数日に1回を目安に、授乳回数をだんだん減らしていき、子どもの機嫌が極端に悪くなったり、乳房の張りで痛みが強くなりすぎたりしないか、確認しながら進めていきます。

なお保育園の場合は「今まで母乳だったから、ちゃんと哺乳びんで飲んでくれるか心配」という声もよく聞きます。保育園で使っている哺乳びんや乳首が決まっていることもあるので、あらかじめ確認して試すのもいいでしょう。また、哺乳びんの中に母乳を入れて飲ませてみると、スムーズに進む場合もあります。
また「どうしてママがいるのに、おっぱいをくれないの?」と混乱して、哺乳びんを拒否してしまうというケースもあります。哺乳びんで授乳するときは、お母さん以外が試してみるというのもいい方法です。

トイトレは「小さな成功体験」がカギに

「入園前にトイレットトレーニング(トイトレ)が完了する自信がないです...(3歳)」

とくに幼稚園だと、入園する前に日中のおむつがはずれていることが、求められる場合があります。また大人が思っている以上に、トイトレはかなりこまかい小さなステップを踏んでいく必要があるとされています。

たとえば、おまるに座れるようになるまでには、こんなにステップがあるのです。
(1)おまるを準備する
(2)おまるにシールを貼ったり、名前を書いたりする
(4)おまるを使いやすい場所に置く(リビングなど普段の遊び場がおすすめ)
(5)おまるに洋服を着たまま座る
(6)子どもがおまるに座って遊ぶようになる
(7)子どもがおまるに服を脱いで座れるようになる

子どもができたら、その度にほめたり、シールなどのごほうびで、成功体験を積んでいることを実感させてあげるといいとされています。こうしてトイトレが完了するまでに、平均およそ6~7カ月くらいはかかると言われていますが、個人差も大きいです。

入園前にどうしても間に合わなそうだな、という場合は無理せず、園の先生に早めに相談しておくといいでしょう。園での預かり時間のうち、最初の数十分だけパンツですごし、あとはおむつにできないかなど、お子さんのトイトレの進み具合に応じて話し合えるといいですね。

また忘れがちなのが、便秘のチェック。とくにうんちのトイトレが進まないというお子さんは、便秘が原因になっていることがあります。

ワクチンの接種状況をチェック

入園後はバタバタして、なかなか受診も難しいもの。入園前にぜひ、月齢・年齢相当のワクチンを接種できているか、母子健康手帳で見直しましょう。日本小児科学会の推奨スケジュールは、学会のホームページ(※6)で確認できます。

文・監修/白井沙良子先生

構成/たまひよONLINE編集部

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4月の新入園で、家族の生活が変わりとまどうことも多いでしょう。医学的に正しい知識をチェックしつつ、心配なことは園の先生にも相談してみましょう。

※1 保育園児の病欠頻度に関する研究、東女医大誌、第87巻、第5号、頁146~150、平成29年10月
※2 日本小児科学会 傷害速報 No.071 自転車運転中の保護者に背負われた状態から転倒時に放出された乳児の重症頭部外傷
※3 国民生活センター 報告 「こどもを抱っこして自転車に乗ることは危険です-転倒・転落によりこどもが頭部に重篤なけがをすることも-」
※4 日本小児科学会 傷害速報 No.044 不適切に設置されたチャイルドシートによる頭部外傷
※5 警視庁 「自転車に乗る時はヘルメットを着用しましょう」
※6 公益社団法人 日本小児科学会 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

●記事の内容は2024年3月5日の情報であり、現在と異なる場合があります。

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