「頭ポンポン」報道に強烈な違和感…グラビアアイドルが告発する「業界」の悪しき“セクハラ”体質

グラビアアイドルも「むやみに他人に触る行為は不快です」と頭ポンポンに拒絶反応(keyphoto / PIXTA)

「”頭ポンポン”はマスコミが流行させたのに、やった人を『セクハラだ』ってたたいているのは違和感があります」

こう明かしたのは29歳のグラビアアイドルのAさんだ。

頭ポンポンについては、少なくとも99件のセクハラ行為が第三者委員会の調査で認定され、3月5日付で辞職した岐阜・岐南町の小島英雄町長(74)が、「私の時代は頑張った子には頭ポンポンしていた」とセクハラの認識はなかったことを最初の会見で明かし、猛批判を浴びた。一方で世間では「セクハラと言われるの?」という声も少なくない。

こうした状況にAさんは、ズバリ指摘する。「他人の体にむやみに触る行為は相手にとって不快です。私なら頭ポンポンでも、『セクハラですよ』とハッキリ言います。セクハラって、胸や尻を触ったりするような痴漢行為に近いものを思い浮かべるんでしょうけど、とんでもないです」と力を込める。

かつては頭ポンポンを推奨していたメディア

かつては頭ポンポンをむしろ推奨していたからこそ、マスコミの今回の姿勢に不信感をあらわにするのだ。

実際、何年も前から多数のメディアが「頭ポンポンで女子がキュンとする」という奇怪な論説を流布。まるでセクハラを後押しするような下地ができあがっていた。

<頭ポンポンはやっぱり鉄板。女性がきゅんとするボディータッチのコツ>
<理想的な頭ぽんぽん♪男性にされたい頭ぽんぽん8選!>
<女の子はなぜ頭ぽんぽんに弱いの? そのメカニズム>

こんなタイトルの記事がネット検索をすればいくらでも見つかる。ある女性向けWEBメディアは22年5月に「頭ポンポンする男性をどう思う?」のテーマで女性100人にアンケート。結果を踏まえつつ、その心理状況を分析している。

それによると、頭ポンポンされた時の気持ちの上位は「うれしい」「ときめく」「安心する」などとなっている。一方でされたくない派もいて、「バカにされた気になる」「あざとさを感じる」「恥ずかしい」などが上位にあがっている。

あくまでも「好きな人にされたら」が前提のようだが、それにしても記事を読むと、頭ポンポンが女性を著しく不快にさせる行為とは思えない印象を受ける。

そんな中で発覚した、74歳の町長による”頭ポンポン騒動”。ニュースや情報番組でも、多く報じられ、TBS系のバラエティー番組『世界くらべてみたら』では、女優の上白石萌音さん(26)が「頭ポンポン」への嫌悪感をあらわにした。出演ドラマで「頭ポンポン」される役を演じた経験があり、「すごく見下されている感じ」と話した。

ハラスメントの概念があるかさえ疑わしい芸能界の実態

芸能界はこの手のセクハラには敏感だ。なにしろ華やかな美女が無数にいる世界、若いアイドルや女性タレントがテレビ番組やイベントに出演すると、やたら触りたがる人がいるからだ。

Aさんが証言する。

「芸能界は、昭和の感覚が残った70代の上司ひとりとかじゃないんです。もっとたくさんの人が日常的に触ってくるんです。テレビ番組だったら、男性の共演者が初対面なのに肩や手をさりげなく触ってきたり、お笑い芸人が移動中に手相を見るとか言って触って、その手が太ももに伸びてきたり。マネジャーが同行していても、相手が一般人じゃなく先輩タレントだと止めにくい状況になります。そこで許しちゃうとエスカレートするんですよ」

イベント出演などでも現場の主催者やスポンサーなどがその立場を利用し、肩を組んできたり、抱き寄せてきたりすることも珍しくないという。

「グラビアアイドルって女優さんとかよりも軽く見られることもあって、ひどいのになると水着に着替えるとき部屋に来て、ずっと出て行かないとかあります。『匂いを嗅がせて』と顔を胸に近づける40代ぐらいの主催者もいましたね」

これらを放置していたら、「とても身が持たない」と、Aさんの場合はハッキリと「やめてください!」、「嫌です」と相手に伝えるという。「後輩の若いタレントにも、そうするようにアドバイスしています」とAさん。

「頭ポンポン」については、年配の芸能人に何度もされた経験があるという。

「そういう人って最初から私の名前を呼び捨てで、いかにも親しい関係みたいに迫ってきますね。有名な俳優さんに、やめてくださいと言ったとき、“このぐらいセクハラでも何でもないぞ”って言われたこともあります」

こうした芸能界のあしきしきたりのようなハラスメントを自衛で回避してきたAさんだからこそ、ネット上の「頭ポンポン」推奨記事には強い違和感を覚えていたという。

セクハラを自衛するために必要な心得

セクハラという概念があるのかさえ疑わしい芸能界。Aさんは、そんな中で、しっかりと自分の意思を示し、嫌な思いを回避してきた。

とはいえ、頭ポンポンに限らず、性的ハラスメントにあたるのかが分かりづらい行為は数多くある。町長のセクハラの中には、「ポニーテールを揺らされた」というものや、妊娠した女性職員が「産休報告時に腹をさすられ、耳を当てられた」というものもあったといい、女性職員が即、「セクハラです」と声を上げにくい側面もあるだろう。

そうした点については、厚労省が明確に判断基準を示している。<一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得ます>(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/120120_05.pdf)。

Aさんのように、相手の行為を不快に感じれば、たとえ単発でも毅然(きぜん)とした態度で、意思表示する。被害側は改めて、そうしたスタンスを徹底することが、ひいては職場の無自覚加害者を減らすこと、不快な思いをする場面自体を減少することにもつながりそうだ。

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