試合中の抽象的な指示、精神論のようなアドバイスはNG

幼稚園児から大学生まで野球を指導して27年。『たてぶり先生」の愛称で親しまれる榊原貴之さん(座間ひまわり野球倶楽部代表)が監修した書籍、『少年野球 ワンランク上の選手になるための新常識52』(日本文芸社)が発売されました。「昔から正しいとされてきた野球界の常識」にメスを入れ、古い常識をどのようにアップデートするべきかを伝えるこの本の中から、「コーチング」のNGについて、たてぶり先生にお話を聞きました。


——試合を見ていると、ピンチの場面などで「集中しろ!」「考えてプレーしろ!」「気持ちで負けるな!」のようなことをベンチから大声で言っている指導者をよく見かけます。

何をしたら良いか? 何に気をつけたら良いか? 具体的なことを言ってあげないと子どもは何をしたら良いのか分からないですよね。

——確かに「集中しろ!」と言われても、具体的にどうしたらいいか子どもも分かりませんよね。

抽象的な言葉や精神論でしか指示ができないのは、その指導者が具体的にどんなことを言ったら良いのかが分かっていないからだと思います。だからそういう抽象的な言葉や精神論に逃げてしまうのだと思います。

——なるほど。

それが分かっている指導者は試合状況を瞬時に分析して「今、何に注意すべきか」を言語化できて、具体的かつ簡潔にそれを子どもに伝えることができますよね。例えば、一塁ランナーを気にしているピッチャーに対して「気持ちで負けるな!」「考えろ!」みたいな抽象的な言葉ではなく、「この場面は走られて良いからストライクを取りにいこう」と具体的なことを言ってあげたりできますよね。

——それができるようになるためには、指導者にはどんなことが必要になりますか?

普段の練習や練習試合の中から、試合展開や状況判断の仕方をチーム内で共有しておく必要があると思います。こういうことができているチームは、試合に出ている選手やベンチの選手から、自然にプレーに関わる声が出ていますよね。

——本の中では「勝つためには選手に我慢をしてもらおう!」も『NG度』が3段階の3になっていますね。

子どもは野球をプレイするためにチームに入っていると思うんですけど、彼等が純粋に野球を楽しめるチーム作りこそが本来の姿だと思うんです。

——そうですね。

だけど、野球の上手い下手、体が大きい小さいとかによって、練習内容に差をつけたり、メンバーに入れなかったり、試合に出してもらえなかったり、出てもバントしかさせてもらえないとか、それを「自己犠牲」という言葉を使って正当化させているように思うんです。そうではなく、全ての子ども達が平等公平に野球ができることが当たり前であって欲しいんですよね。

——なるほど。

野球を楽しむことが試合に勝つことを放棄することにはならないと思います。子ども達に多くのプレイする機会を与えることが彼等の成長に繋がりますし、結果としてそれがチーム力のアップに繋がると思います。

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縦振り先生/榊原貴之
座間ひまわり野球倶楽部代表。『たてぶりせんせい』って呼ばれてます。野球の技術指導が本業です。小中学生に野球教室をしたり、甲子園に出るような高校の外部コーチもやってます。自身が代表を務める『座間ひまわり野球倶楽部』は小学部と中学部があります。SNSにも野球観、人生観を毎日綴っています。https://twitter.com/taka19740921

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