≠ME、12人と“君”の青春は次なる大きなステージへ 結成5周年プレミアムコンサートを振り返る

≠MEが結成5周年を記念したコンサート『≠ME 5th ANNIVERSARY PREMIUM CONCERT』を3月3日に武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナで開催した。

アンコールを含めて24曲、2時間半におよぶ今回の公演は、「クールでかっこいい」「あまあまでかわいい」「かけがえのない青春」の大きく分けて3ブロックの楽曲で構成された、グループの5年間を総括するようなセットリストとなっていた。

コンサートの幕を開けたのは「天使は何処へ」。史上最高難度のダンスで観る者を魅了しながら、〈「私は私」それでいい?〉と強い女性として生きていく決意表明を示した、ノイミーとしての新たな武器となった2023年を代表する楽曲だ。5周年コンサートに向けてはグループのYouTubeチャンネルにて、これまでの周年コンサートの映像が少しずつ公開されてきたが、そのなかの一曲が4周年コンサートにて初披露となった「天使は何処へ」だった。グループはこの一年間、「天使は何処へ」をさまざまな場所でパフォーマンスしてきたわけだが、今回のコンサートでは、センターの冨田菜々風によるアカペラ(日本武道館公演の「はにかみショート」を彷彿とさせる)から始まり、2段階となっているメインステージと巨大スクリーンを使用した“天使の羽”の演出など、集大成またはさらに進化した「天使は何処へ」を提示することに成功していた。

メンバー自身も“変化”を感じた一曲だとVTRのなかで語っていた「チョコレートメランコリー」に、重低音のメタルサウンドと櫻井ももの歌声が融合する「桃色デイブレイク」、特効の燃え盛る炎をまるで操るかのようにステージを制圧していた永田詩央里のダンスが映える「ワタシアクセント」と、さまざまなクールのバリエーションを見せながらブロックのラストに披露したのが、「アンチコンフィチュール」だ。「天使は何処へ」と後述する「想わせぶりっこ」を経て、ノイミーが辿り着いた〈甘いだけが私じゃない〉という新たな自分(≠ME)。一括りに「クールでかっこいい」と言っても、そのテーマのなかで多彩な表現に挑戦しているのが、今のノイミーである。

「超絶かわいい注意報」のアナウンスがアリーナに鳴り響いた中盤ブロックには、「想わせぶりっこ」を皮切りにして、かわいいに振り切った楽曲が並ぶ。シングル表題曲として初めて鈴木瞳美がセンターを務めた「想わせぶりっこ」は、ノイミーがストレートな愛情とかわいらしさをぶつける、あまあまなラブソング。「天使は何処へ」同様に、2023年で披露し続けてきた新たな挑戦の楽曲と言えるが、冒頭の鈴木の〈ちゅーする?〉を〈ちゅーしよう!〉に、〈「好きかも」〉を〈「好き」〉へと確信に変えていたりと、所々にライブアレンジが見られなかで、TikTokを中心に盛り上がりを見せた“ねこみみダンス”でのコールの揃い方も、会場にいて驚くものがあった。

新たなライブチューンとして親しまれていくことを予感させたのが、シングル『アンチコンフィチュール』に収録の「ヒロインとオオカミ」だ。“しおみる”こと永田詩央里と本田珠由記のふたりによるダブルセンター曲で、オオカミの耳がついたキュートな衣装と〈ちゅるりら ぱぴぷ〉の呪文が頭から離れなくなる楽曲。同時にカメコによる撮影可能曲でもあり、ストレートに衣装のかわいらしさがSNSとの相性も抜群だと感じた要素だ。

この5年間で、ノイミーはクールであまあまな自分を手に入れながら、活動初期から大事にしている青春も変わらずに歌い続けてきた。本編終盤からアンコールまでのブロックは、その青春を体現した楽曲が怒涛の勢いで続いていく。ノイミーにとってはじまりの曲である「秘密インシデント」、夏の弾けた空気感を閉じ込めた「す、好きじゃない!」、ライブのボルテージを上げていく「まほろばアスタリスク」などがそれらに当てはまるなか、この一年で新たに仲間入りした楽曲も披露された。谷崎早耶がセンターに立つ「初恋カムバック」、鈴木、冨田のダブルセンター曲「デートの後、22時」、そして「ラストチャンス、ラストダンス」がそうだ。

センターである冨田がVTRのなかで「この楽曲に出会えてよかった」と語る「ラストチャンス、ラストダンス」は、爽やかな雰囲気が詰まった楽曲。3月20日にリリースされる1stアルバム『Springtime In You』のリード曲であり、「君の中の青春」という意味合いのタイトルを含めて、ノイミーにとってある種の原点回帰とも言える楽曲だ。この日は、ライブでのフル初披露となり、ストーリー性の高い歌詞から春の訪れを感じさせるパフォーマンスに思えた。

ここまで3つのブロックに分けてライブを振り返ってきたが、もうひとつ独立したユニットブロックが存在している。なかでもファンから大きな歓声が上がったのが、「2時半ろけんろー」「ピオニーズ」「サマーチョコレート」の3曲でのメンバーシャッフルだ。昨夏に開催された『イコノイジョイ 2023』で初日がオリジナル、2日目がシャッフルという流れだったように、この日も昼公演がオリジナル、夜公演がシャッフルという仕掛け。永田と本田の「2時半ろけんろー」を“ひぃさや”こと鈴木と谷崎が、“ちょこもなか”の蟹沢萌子と冨田による「ピオニーズ」を永田と本田が、鈴木と谷崎の「サマーチョコレート」を蟹沢と冨田がそれぞれ披露するなかで、特に黄色い歓声が響いていたのが「ピオニーズ」である。『イコノイジョイ 2023』では=LOVEの佐々木舞香と野口衣織の“いかりんぐ”がパフォーマンスしている、もはやシャッフル曲の代名詞とも言える妖艶な「ピオニーズ」を、“しおみる”コンビが披露するというそのギャップ。〈君にキスをするふりをして〉の歌詞では、永田が本田へと唇を近づけ、会場に割れんばかりの悲鳴にも似た声がこだまする。同時に年少組のイメージだったふたりも、この5年間の歳月のなかで大人へ成長したことを実感させる一曲だったとも言えるだろう。

「5年間は平坦なものではなかった」と冨田が手紙のなかで口にしていたように、2019年にスタートしたノイミーは、コロナ禍やメンバーの体調不良など、さまざまな壁に阻まれながらも、心がバラバラになった時は、いつだってライブがグループをひとつにしてくれていた。結成から変わらずメンバー12人が手を繋ぎながら5周年という節目を迎えられたことはまぎれもない奇跡であり、いつだって七色の虹よりもカラフルなペンライトの海がメンバーに揺るぎない自信を与えてくれていた。

今春からはメンバー12人の出身地を巡る全国ツアー『≠ME 全国ツアー2024「やっと、同じクラス」』が開催される。昨年9月に発売された『≠ME Walker』(KADOKAWA)の座談会にて、筆者は先んじて凱旋公演について聞いており、どのメンバーもとびきりの笑顔で質問に答えてくれていたのを思い出す。親孝行を兼ねた、メンバーにとっても思い出深いツアーになるだろう。そして、蟹沢と櫻井の出身地である神奈川公演、ツアーファイナルは横浜アリーナ。2021年に=LOVEのツアー(この時も出身地を巡るツアーだった)でノイミーがオープニングアクトとして立った場所だ。12人と“君”の青春は、さらなる大きなステージへと続いていく。

(文=渡辺彰浩)

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