稲垣吾郎、SMAP時代から続く箭内道彦との縁 自ら挑戦する“ロック”な心意気にもリンク

稲垣吾郎がパーソナリティを務めるラジオ『THE TRAD』(TOKYO FM)3月5日放送回のゲストに、クリエイティブディレクターの箭内道彦が登場した。箭内といえば、数々の広告・映像作品を手掛けてきたトップクリエイターとして知られ、なかでも有名なのがタワーレコードの企業メッセージ「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーンだ。1996年より四半世紀以上にもわたって愛されてきた広告だが、2020年には香取慎吾がポスターを飾ったことでも大きな話題になったことも記憶に新しい。

「ちょこちょこ最近お会いします」と稲垣の口が思わずほころぶのも無理はない。箭内は3月9日放送の『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)にて「子ども記者会見」のコーナーに出演したばかり。さらには、つい先日TOKYO FM内で目的のスタジオを見つけられずにいた箭内が、たまたま稲垣のいるブースに迷い込んで助けられたというのだ。

寄せては返す波のように、人と人は急に近づいたり遠のいたりするもの。「会おう」と言ってもなかなか実現しない人も多くいるなかで、偶然が重なってよく会う人とは不思議な縁を感じずにはいられなくなるものだ。もしかしたら、その結びつきを生んでいるのは、彼らに共通する仕事へのスタンスかもしれない。

番組では、稲垣が箭内に「広告を作るうえで大切にしている考え方は?」と尋ねる場面があった。その際、返ってきたのは「応援することだと思う」という言葉。「商品を応援したり、作った人を応援したり、それを買ったり食べたりする人の生活を応援したり、それが存在する社会を応援したりっていうふうにありたいなと思うので。応援したいものの広告を全力で作りたいなと思います」という箭内のチャレンジは、広告制作以外にも広がっている。

フリーペーパー『月刊 風とロック』の刊行、『風とロック芋煮会』を筆頭にした各イベントの開催、そして福島県出身のミュージシャンによるバンド・猪苗代湖ズの結成……。また、イベントのチケットや配信シングル「I love you & I need you ふくしま」の利益を全額寄付するなど、その幅広い活動はアイドルでありながら、ステージのみならずバラエティや俳優業、そしてチャリティにも積極的に取り組んできた稲垣らのキャリアともリンクするものがある。

そうした精力的に活動を続ける箭内だが、今年の4月10日で還暦という節目を迎える。3月30日・31日には『箭内道彦 60年記念企画 風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ “FURUSATO”』を開催し、彼を慕う多くの人気アーティストが一堂に集う。

そんな大きなイベントを企画した理由について聞かれると、「ふるさとを広告したいという気持ちがまずひとつあったのと、自分が還暦になるっていうタイミングで何か無茶をしないとって」「サンボマスターじゃないけど“できっこないを やらなくちゃ”っていうことに挑まないと、60歳が始まらないんじゃないかなと思って」と語るのだった。

昨年12月8日に50歳となった稲垣は、年齢を感じさせない箭内のエネルギッシュな姿に刺激されたかのように「僕もちょっと最近ロックなんですよ。ギターをまた久々に始めて」と思わず近況を報告。猪苗代湖ズでギターを担当している箭内としても「おお! いいじゃないですか」と声が弾ませずにはいられない。「ロックを聴くとすぐコピーしたくなって。気持ちわかってくれますよね」と続ける稲垣に、「わかります!」とすっかり意気投合。さらには「僕も仲間に入れてください、『風とロック』!」という言葉まで飛び出した。もしかしたらロックな稲垣が見られる日もそう遠くないのでは、という未来を想像して頬が緩んだ。

振り返ってみれば、箭内と稲垣らの縁が深まるのは、社会が元気を取り戻してほしいというタイミングと重なるような気がする。東日本大震災が起こった2011年の年末、猪苗代湖ズは『NHK紅白歌合戦』へ初出場を果たした。そして、奇しくも、その年の大トリはSMAPが務めていたのだ。

その時にSMAPが歌った「not alone ~幸せになろうよ~」の〈ひとりじゃないさ〉というメッセージは、新しい地図を広げて以降『LOVE POCKET FUND』(愛のポケット基金)へと受け継がれた。オフィシャルサイトに寄せられたメッセージ、「誰もひとりにしない世界」(稲垣)、「僕達は一人ぼっちではありません」(草彅剛)、「一人じゃないって思える強さ」(香取)というそれぞれのフレーズからも、その変わらぬ思いが感じられる。

また2019年、香取が「NO MUSIC,NO LIFE.」キャンペーンに登場した時もそう。1stアルバム『20200101』を携えてソロアーティストとして新たな一歩を踏み出そうという香取の姿を見せつつ、ちょうど世界的パンデミックの前兆を感じ始めた不安いっぱいな世のなかに向けて「音楽は大きく背中を押してくれるもの。音楽のこと、忘れてませんか?」というコピーとともに顔を上げるきっかけをくれたような気がする。

そして、大きな震災と迎えることとなった2024年。私たちは、ふるさとを愛する大切さ、人と繋がる尊さ、そして音楽の力の大きさを痛感しているタイミングではないだろうか。どんなに社会が大きく揺らごうとも、何度だってこの社会に生きる人々を応援し続け、時には自ら挑戦する姿を見せることで勇気づけていく。そんな仕事で魅了し続けてくれる彼らに、あらためて元気をもらうことになりそうだ。

(文=佐藤結衣)

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