「この出場時間で決定的な役割をするのは難しい」鎌田大地がCL敗退後に語った本音。ラツィオの現状には「僕だけじゃなくてチームも...」【現地発コラム】

バイエルンとのチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16・ファーストレグを1-0で勝利していたラツィオはアウェーでのセカンドレグで、前半に2失点。後半も反撃の糸口を見つけることができないまま、最終的に0-3で完敗した。

試合後の記者会見でマウリツィオ・サッリ監督が「前半はいいプレーができた。前半終了間際に2失点目を喫したのは残念。希望が小さくなってしまった」と振り返るように、前半は確かにボールを自分たちでキープしながら運ぶシーンもあった。

ただ「多くはなかったが、チャンスもあった。状況をうまく作れていた。ただシュートに持ち込めなかった」と指揮官が認めるように、最後のところで変化がないままの展開だったのは否めない。

バイエルンのトーマス・トゥヘル監督はイタリア人記者にこんな質問をされていた。

「前半はラツィオにもチャンスはあったが、後半はノーチャンスだった。ラツィオをどのようにみて、チームにはどうプレーさせようとしていたのか?」

【画像】セルジオ越後、小野伸二、大久保嘉人、中村憲剛ら28名が厳選した「 J歴代ベスト11」を一挙公開!
トゥヘルはこう答えている。

「ラツィオはいい守備組織といいコンビネーションで攻撃するチームだ。サッリのチームは細かい距離と壁選手を使ってボールを進めるのが特徴。選手が短い距離でポジションを取り、当てて落としてそこからさらに縦へ、をダイレクトパスで行なってくる。守る側からすると連続でボールが動いて戻って動いてに対応するのはとても難しい。そこを考慮したうえで戦うことができた。大事なのはオープンな展開からシュートチャンスを許さないこと。それができていた」

守りにくい前進を全て止めることはできなくても、守備組織を整えて対峙することで、シュートにまで持ち込ませなければ大けがをすることはない。そんなゲームプランを持っていたことから考えると、ラツィオが「シュートに持ち込めなかった」前半の戦いはむしろバイエルンにとってイメージの範疇ということになる。

80分から途中出場したラツィオのMF鎌田大地もその点を指摘していた。

「うちのスタイルはああやってパス出して戻して、パス出して戻してっていうのがある。バイエルンみたいに自分たちのダイナミックさがあるわけじゃない。このやり方は、先に失点してしまうと、やっぱり、かなりきついかなっていう感じはありますね」

勢いに乗るバイエルン相手に完全にオフェンシブへと舵を切ってしまったら、カウンターから次々に失点するリスクもある。ラツィオ戦後のブンデスリーガでマインツが1-8で濁流に飲み込まれてしまったように。守備バランスは可能な限り維持したままで、少しでも攻撃のチャンスを高めるところに着手するのは理にかなった手ではある。

ただ、リスクチャレンジができないとチャンスを作り出すのは困難というジレンマをどう解決するのかが今のラツィオには難題としてのしかかっているようだ。残り時間少ないなかで鎌田が出場しても、決定的な役割をするのはどうしたって難しい。

鎌田は「この出場時間でインサイドハーフとして出て、何か決定的な役割をするっていうのはまあ、まあ難しいことだと思う」と切り出した後、次のように語っていた。

「どれだけ長い間出てる選手でも、今年に関しては去年のラツィオに比べてやっぱりみんな落ちていると思う。これは僕だけの問題ではなくて、チームとして明らかにゴール数が少ない。僕だけじゃなくてチームとしてすごく難しい時間を多分過ごしてると思うんです」

CLでの旅は終わった。この敗退はこれからのシーズンにどんな影響を及ぼすのだろう。記者会見でイタリア人記者にそんな質問を振られたサッリは少し考えてから、落ち着いたトーンでゆっくりと答えた。

「まだこれから難しい試合がある。今日のバイエルンは別だが、チャンピオンズリーグではグループリーグからいいゲームをすることができた。コッパ・イタリアでは準決勝(相手はユベントス戦)にコマを進めているし、リーグではヨーロッパリーグの(出場権獲得)の可能性も残しているよ」

リーグにおける守備の安定感では27節終了時でインテル(13失点)、ユベントス(21失点)、ボローニャ(25失点)、トリノ(26失点)に次ぐ、29失点で5位となかなかの成果を残している。一方で得点32は物足りない。ここからシーズン終盤へ向けて、順位をあげていくためには、チャンスメイクとゴールメイクの質と頻度を高めることは必要不可欠なはず。サッリが選手起用を含めて、今後どのような手腕を見せるのかに注目が集まる。

取材・文●中野吉之伴

© 日本スポーツ企画出版社