【今週のサンモニ】陰謀論にしても雑過ぎる佐高信|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。今週は久々の登場の佐高信氏が相変わらずだったようです。

佐高氏、久しぶりだけど相変わらずの発言

2024年3月10日の『サンデーモーニング』で印象に残ったのは、久々登場の佐高信氏です。視聴者をガッカリさせるグダグダのおやじギャグや唐突に無理やり始まる人格攻撃は今も健在でした。

佐高信氏:トランプっていうのは統一教会の熱心な支持者だ。安倍氏が統一教会のアレに出たのも、その前にトランプが出ている。

まず、トランプ氏は、統一教会ではなく、キリスト教福音派の熱心な支持者であることが知られています。教義に整合的な政策を呈示することで莫大な宗教票を取り込んでいるのです。

米国における統一教会の信者数は極めて少なく、統一教会の関連団体の会合におけるトランプ氏のスピーチは、トランプ氏が「統一教会の熱心な支持者」であるから実現したのではなく、福音派と親和性が高い統一教会がトランプ氏に莫大な講演料(3億円)を支払ったから実現したと考えるのが蓋然的です。

関連団体で講演を行ったことを根拠に「統一教会の熱心な支持者」であると断定する佐高氏の推論は、お気の毒なほどに可能性が低い帰納論証と言えます。陰謀論にしても雑過ぎます(笑)

病的にこじつけた陰謀論

佐高信氏:だからトランプが(共和党に対して)「団結」と言うと「あ~統一教会的団結か」という感じがする。

「トランプ氏は統一教会の熱心な支持者である」という前提が万が一に真であったとしても、ごく一般的な言葉である「団結 unity」という言葉を「統一教会 Unification Church」と結びつけるのは、あまりにも病的にこじつけた陰謀論であるかと思います。

そもそも恐れるものを知らないトランプ氏が統一教会の熱心な支持者であるのならば、支持を明確に宣言して布教活動に協力するものと考えられます。

なお、3億円という講演料は、大統領候補者にとって魅力的な収入であることは確かですが、2020年米大統領選の選挙運動費の総額が1.4兆円、2024年選挙では各陣営の調達資金だけで1000億円規模になることが予想される中、トランプ氏を操れるほど大きな金額とは言えません。

佐高信氏:こういう米国にベッタリくっついて言っていいのかということが一番大きなポイントだ。

これは、旧統一教会の関連団体と関係がある政治家を問題視しない米国とベッタリくっついて言ってよいのかという日本でしか通用しないドメスティックな主張です。

そもそも、過去に問題があった宗教団体の信者であることを根拠に、政治参加という個人の公民権を私人であるマスメディアが禁じてしまう日本の状況が極めて異常なのであって、米国人の選挙に対する意識は日本人よりよっぽど真面です。

もはやハラスメントレベルのおやじギャグ

佐高氏は自民党の汚職問題にも噛みつきます。

佐高信氏:自民党の汚職というのは宿便のようなものだ。ロッキード便にリクルート便が重なりその上に佐川急便が重なった。今回はそれに裏金便が加わっている。

この薄汚い残念なおやじギャグはハラスメントのレベルです(笑)

佐高信氏:宿便体質ってことは、自民党をそこから切り離すことができるかということだ。私は難しいと思う。

佐高氏は、意味不明な言葉の羅列を論点であるかのように装って、個人的懐疑で否定しています。このような不規則発言を厭わない宿便コメンテーターを切り離すことができない『サンデーモーニング』には本当に絶望します。

佐高信氏:自民党の中の本当に少数派に伊東正義氏がいた。「政治の本質は政治の人格なんだ」と。「あの人がやっているなら」「逆にあんな人がやってる政治なんて」ということにもなる。これだけ人格から外れてる宿便政治家、我々に返されている問題だ。

これは、論者の人格を根拠にその言説を否定する【人格論証/人格に訴える論証/人格攻撃 ad hominem】という極めてプライマリーな誤謬です。

論者の人格の善悪と言説の真偽は無関係です。言説に誤りがあれば、それを根拠とともに指摘するのが言論であり、論者の人格を否定する行為はそれこそ人格不適者の所業です。

このような「言説を議論する」のではなく「論者の人格を攻撃する」という暴力的な考え方が最終的に戦争を起こすのです。

「寺島氏が言いたかったことを100字以内でまとめよ」

さて、奥深い禅問答コメントで視聴者の脳内を毎週鍛えてくれる寺島実郎氏ですが、この日のコメントはいずれも比較的平易で理解しやすいものでした。ただ、そこは寺島氏、オキマリの禅問答でディープなファンを愉しませてくれることも忘れません(笑)。

寺島実郎氏:政治資金の問題、これほどまでにひどい問題が我々に突き付けられているのに政権交代を期待するなんていう意見がほとんど出てこない理由をよく考えてみたい。国民として。議論がどんどん政治資金の不記載だとか、何に使ったかという議論にどんどん政倫審は行っているけど、問題の本質は何なんだというと、アベ政治とか戦後日本の保守政治とかいうものを根底から考える力を国民が持たなければいけないというか、考えてみたら、アベ一強支配の功罪って奴がこういう形で政権派閥だけにキックバックができるほどの資金が還流していた構造があるわけだ。

それに対してはアベノミクスなるものに拍手を贈ってた経済界及び国民の、要するに、問題意識がこれに投影されているわけだ。日本が今後どういう政治に進むべきかという時に、政倫審だとかの機会を通じて、本当は野党が糺すべきは、アベノミクスってどういう意味を国民にもったのかを本気で糺さないと、スキャンダル事件だけとして議論をしていたんじゃダメだということだけはちょっと言っておきたいですね【原文ママ』。

関口宏氏:あぁ~そうですか~。かもしれません。

もし「ここで寺島氏が言いたかったことを100字以内でまとめよ」という国語の問題があったら、かなり手強い難問ではないでしょうか。関口氏の口ぶりでは、少なくとも関口氏は理解できているようです。真偽は不明ですが(笑)

【今週のサンモニ】寺島実郎氏の「禅問答」に徹底的に付き合ってみた|藤原かずえ | Hanadaプラス

どこまでも復興を妨害する「サンモニ」

番組の最後は、この時期の番組の風物詩になってしまった「東日本大震災 あの日から13年」でした。内容は例年通り、原発事故の被害を誇大に報じて、国を批判するものでした。マスメディアが事故の悲惨さを報じることには価値がありますが、事故を政治利用するのは、本当にやめていただきたいものです。

アナウンサー:一度起きたら取り返しがつかない原発事故。去年8月、原発処理水の海洋放出は始まったものの廃炉の見通しは立たず、また帰還困難区域のうち、除染が終わり住めるようになったのは13年経っても僅か8%です。

汚染水デマを流して住民を対立させ、福島被災地の復興作業を妨害してきた番組が、他人事のように「処理水の海洋放出は始まったものの」などと言うのは、恐ろしい欺瞞です。

【今週のサンモニ】「汚染水放出」と風評加害を拡散する『サンデーモーニング』|藤原かずえ | Hanadaプラス【今週のサンモニ】「汚染水放出」デマを繰り返す日本最大級の風評加害番組|藤原かずえ | Hanadaプラス

また、帰還困難区域の8割は、元々人が住んでいたわけではない森林であり、日常の生活圏ではありません。人が住む生活圏である特定帰還居住区域の空間線量は概ね20mSv/年以下まで低下しています。「13年経っても僅か8%」というのは、悪意があるとしか考えられない卑劣なミスリードです。

『サンデーモーニング』は、どこまで福島の人々をはじめとする日本国民を認知操作で絶望させ、復興を妨害すれば気が済むのでしょうか。そもそも、こんな報道を無理やり行う番組の目的は一体何なのでしょうか。

守るべきは人々の生活

佐高信氏:自己責任でやれないところを国がやる。ところが今の日本では国が自己責任をさらに押し付ける。

国の主権者である日本国民は福島復興のために一丸となって莫大な資金を投じて被災地を支援してきました。国家公務員は2年間にわたって給与を平均7.8%減額しました。復興は現在も継続中です。「自己責任をさらに押し付ける」というのは、具体的に何を指しているのでしょうか。

佐高信氏:津波で流される時に「原発が開く新しい未来」というのがあった。原発が違う未来を開いた。国家に対する疑問から私たちが出発しなければいけない。犠牲者の不幸をちゃんと考えているのかということを問い返したい。

佐高氏が言及している「原発が開く新しい未来」というのは、双葉町の商店街に掲げられていた「原子力明るい未来のエネルギー」という標語の看板であると推察されます。

「明るい未来のエネルギー」看板、展示始まる 負の遺産:朝日新聞デジタル

ただ、実際に津波はこの場所には至っていませんし、この標語を考えて看板を掲げたのも国家ではありません。佐高氏は、妄想を混乱させて歴史を改竄しています。

何よりも犠牲者(原発事故による直接的な死亡者はゼロ)を勝手に政治利用し、「不幸をちゃんと考えているのか」と頭ごなしに叱責しています。これは典型的なモラル・ハラスメントです。

松原耕二氏:原発事故の翌年に当時の民主党政権が2030年代の原発ゼロを一旦打ち出した。ところが実際には動き出せなかった。なぜなのか。民主党政権の幹部が米国にお伺いを立てに行った。米国はいい顔をしなかった。(中略)
米国の圧力とは言わないが、日本は米国に強く物が言えない。原発もいろんな問題を抱えているのに結局思考停止に陥っていないか。守るべきは何かをもう1回考えてほしい

松原氏は何か勘違いしているようですが、守るべきは人々の生活です。『サンデーモーニング』をはじめとする一部マスメディアが13年前から始めた反原発キャンペーンに日本社会は大衆操作され、経済性・環境性・安全性に優れた原発を長期間停止しました。

その結果、日本の電気料金は高騰すると同時に回避可能な温室効果ガスを大量放出するに至りました。さらに『サンデーモーニング』が大宣伝してきた再エネの太陽光発電は、日本の電力システムに大きな負荷を加えて大きな問題となっています。加えて、莫大な数のソーラーパネルが日本の美しい山林や平地を覆い、環境と景観を破壊しています。反原発と再エネ推進が人々の生活に与えた負荷ははかりしれません。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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