「なぜ建物は倒壊するのか?」 地震への備え 住宅耐震化の重要性 行政も支援拡充へ

今年1月1日に発生した能登半島地震や過去の大規模地震では、住宅の倒壊により
多くの死者が出ました。

専門家は改めて住宅の耐震化の重要性を訴え、行政も支援の拡充に乗り出しています。

2月、BSS取材班は、能登半島地震の被災地・石川県に入りました。

そこで見たものは…。

安松裕一記者
「こちらの家は出窓のガラスが完全に割れてしまっています。そして玄関には要注意の黄色い紙が貼られています。そしてこちらはお店でしょうか、1階が完全に押しつぶされてしまっています」

街には倒壊した家屋や商店がいたるところに。
私たちはその惨状を目の当たりにしました。

石川県での死者はこれまでに241人。
このうち死因として最も多かったのは、倒壊した建物の下敷きになったことなどによる「圧死」でした。

地震により、なぜ建物の倒壊が起きるのか?

そのメカニズムを鳥取県の防災顧問を務める鳥取大学工学部の香川敬生教授に
聞きました。

鳥取県防災顧問 鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「建物自体は特に揺れやすい周期があるります」
「いわゆる固有周期という揺れやすい周期で、そこにちょうどそれと同じような揺れが地面に入ってくると建物がすごく揺れます。これを共振といいます。逆にゆっくりとした揺れだと何も起こりません。早すぎても何も起こらない。ちょうどいい揺れが入ってくるとブランコをこいでいる時にどんどん揺れが大きくなっていくように共振という現象が起こる」

ここで重要になるのが建物の耐震性です。

耐震性が高いと、共振しても建物の揺れは戻ります。
しかし、耐震性が低いと、建物が損傷して、揺れ方=「周期」がゆっくりになります。
そこへさらに同じ「ゆっくり周期」の「強い揺れ」が来た場合、共振によってさらに建物が損傷。
それが繰り返される負のスパイラルに陥った結果、最終的に倒壊に至ることが多い
と言われています。

1981年、建築基準法が改正され、それ以前は旧耐震基準、それ以降は新耐震基準と呼ばれています。

(インタ)鳥取県防災顧問 鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「いわゆる新耐震と旧耐震では、震度6ぐらいで倒壊率が全然違ってきます」

1月の地震、奥能登地方では新耐震基準を満たした住宅が5割ほどと低く、被害拡大の要因とされています。

山陰両県の耐震化率は、公表されているデータで鳥取県は85%(2020年度)
島根県は75%(2018年度)です。

鳥取県では、能登半島地震以降、各市町村に耐震化に対する問い合わせが100件以上来ていて、関心が高まっているとのこと。

鳥取県 住宅政策課 小谷良和 課長補佐
「どういった補助内容があるとか、どういったことが対策としてできるのかといったような問い合わせが多いと聞いています」

鳥取県は、2000年5月31日以前に建築された1戸建て住宅を対象に、耐震化の補助制度を設けています。

耐震改修までの流れはこうです。
まずは耐震診断を行い、続いて改修設計、そして最後に耐震改修となります。
各段階それぞれ、多くの市町村で補助を受けることができます。

鳥取県は能登半島地震を受け、来年度予算案に改修設計と耐震改修の補助額の
拡大を盛り込みました。
また、家全体を改修しなくても済むように1部屋単位の耐震改修や、耐震ベッドの設置に対する補助制度を新設します。

鳥取県 住宅政策課 小谷良和 課長補佐
「なかなか予算的に難しいという方も、命を守る取り組みが進んでいくと思っている」

地震から自分の命を守る耐震化の重要性、香川教授は、同時に地域を守ることにも
つながると話します。

鳥取県防災顧問 鳥取大学工学部 香川敬生 教授
「古い家が倒壊したことによって道をふさぐ、あるいは新耐震の強固な家を倒れて押しつぶしてしまうことも起こっていますし、避難路をふさぐということもあるので」

いつなん時起こるか分からない地震への備え。
改めて考えてみてください。

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