水機構/利根導水路大規模地震対策事業の完工式典開く、110人が完成祝う

水資源機構(金尾健司理事長)が整備してきた「利根導水路大規模地震対策事業」が2023年度末で完了する。9日に完工式典が埼玉県行田市の行田市教育文化センターで開かれた。関係者ら約110人が参加し、くす玉開披で工事の無事完了を祝った。利根導水路の最上流部に位置する利根大堰は、24年度中にも累積取水量が1000億立方メートルを突破する見込み。今後も首都圏の水インフラを支える重要な施設として役目を果たす。
式典で金尾理事長は「より強靱な施設へと進化した利根導水路として運用を開始することになる。将来にわたり首都圏の生活や産業を支える水インフラとして一層貢献できるよう、職員一丸となって適切な管理に向け精進していきたい」とあいさつした。
来賓の小池百合子東京都知事は「昭和30年代の深刻な水不足が利根導水路の完成により救われた。都内の水の4割が利根導水路を経て供給されている。都市インフラの強靱化が図られ心強く感じる」と述べた。大野元裕埼玉県知事は「農業、工業と多目的に水利用を行っている埼玉県にとって将来にわたる安定的な水供給への安心は計り知れない」と感謝の意を示した。
1963年に工事が始まった利根導水路は、利根川から取水する利根大堰とそこから分岐する武蔵水路、見沼代用水路、葛西用水路、邑楽用水路、埼玉用水路で構成する。さらに武蔵水路から荒川へ放流された水は秋ケ瀬取水堰を経て、朝霞水路から朝霞浄水場へ導かれ東京都内の広い範囲に水道水として供給される。利根導水路全体で約1670万人に水道水を供給し、2万3300ヘクタールの農地を潤している。
施設の老朽化により首都直下地震が起こった際、致命的な損害を負う危険性が指摘されたため、14年度に大規模な耐震化事業に着手した。総事業費は297億円。10年かけて利根大堰や秋ケ瀬取水堰など各地にある堰堤、樋管などの改築、耐震補強を施した。

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