【スプリングS】ミホノブルボンが後続に1.2秒差つけて勝利 名馬輩出の出世レースの「記録」を振り返る

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単勝1.2倍に応えた未来の三冠馬ナリタブライアン

今週はスプリングSが開催される。1990年代はミホノブルボン、ナリタブライアン、バブルガムフェローなどが勝利。2000年代はタニノギムレット、ネオユニヴァース、メイショウサムソン、2010年以降もオルフェーヴルやキタサンブラックといった時代を象徴する馬たちがここを制している。今回はそんな当レースの記録を振り返る。データは1986年以降とする。

出世レースのスプリングSだが、ここ10年では1番人気がわずか1勝(18年ステルヴィオ)で、人気に応えられていない。特に19年の勝ち馬エメラルファイトは単勝オッズ27.1倍(10番人気)で、これは勝ち馬としては3番目に高いオッズだった。

最も高い単勝オッズの勝ち馬は98年のクリールサイクロンで27.7倍(7番人気)。次点が93年マルチマックスで27.3倍(10番人気)だった。また、単勝オッズ20倍台の勝ち馬計5頭のうち、2頭の鞍上が蛯名正義騎手。同騎手はこの他にも05年5番人気のダンスインザモアでも勝利しているように、当レースで伏兵を激走させるのに長けていた。

最も人気を集めた優勝馬は94年のナリタブライアン。単勝オッズはなんと1.2倍。2位が02年タニノギムレットで同1.3倍、3位は01年アグネスゴールドで同1.4倍だった。

ナリタブライアンは1993年8月に函館芝1200m戦でデビュー。2戦目で勝ち上がり次走の函館3歳Sで6着に敗れると、その後はマイル以上を主戦場に転向した。1400mのデイリー杯3歳Sこそ3着に敗れたものの、京都3歳S、朝日杯3歳Sを連勝し、さらに年明けの共同通信杯4歳Sも4馬身差の完勝。迎えたスプリングSでは、のちの重賞4勝馬フジノマッケンオーらを相手に圧倒的な支持を集め、3馬身半差をつけて勝利した。その後、ナリタブライアンは三冠を達成したほかに、単勝オッズ1.0倍に2度支持されるなど、歴史的なアイドルホースとしての道を歩んでいった。

菊花賞で馬券圏内を独占した92年スプリングS組

ナリタブライアンがスプリングSで後続につけたタイム差は0.6秒。これは1986年以降では3位のタイム差である。2位は90年にアズマイーストが記録した0.8秒差。2戦2勝で単勝オッズ1.7倍の1番人気に推されたストロングクラウンが6着に沈み、単勝オッズ10倍だった3番人気アズマイーストが好位から押し切った。5馬身差の2着に入ったナリタハヤブサは、のちにダートへ転向して、93年のJRA賞最優秀ダートホースに選出される素質馬でもあった。

そして歴代トップのタイム差は、92年ミホノブルボンがつけた1.2秒で着差は7馬身と驚きの圧勝劇だった。前年の朝日杯3歳S制覇までは逃げることのなかったミホノブルボンだが、ここで初めて逃げ切り勝ちを収めた。ここから逃げの競馬をするようになった同馬は皐月賞、ダービーと勝利し、見事二冠馬となった。

92年スプリングS2着のマーメイドタバンは13番人気、単勝オッズ166.8倍の伏兵で、馬連配当は547.8倍と波乱の決着となった。この年のスプリングSは、のちのスプリント王サクラバクシンオーや、のちの長距離王者ライスシャワー、他にもマチカネタンホイザなどが出走する豪華なメンバーだった。ミホノブルボンの三冠がかかった菊花賞では、粘る同馬をライスシャワーが差し切って勝利。2着とアタマ差の3着にはマチカネタンホイザが食い込み、スプリングS組が1~3着を独占した。

歴代タイム差ランキングの4、5位についても90年代の馬たち。歴代7位タイとなる0.2秒差まで00年代以降の馬は出てこない。20年代では、20年ガロアクリーク、23年ベラジオオペラの2頭が0.2秒差をつけているが、他2年はタイム差なし。今年は久々の圧勝劇が見られるのか、それとも大接戦か。新たなるヒーロー誕生を期待しつつ、見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。



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