「驚くような新展開が…」江戸時代から続く伝統的な「定置網漁」最新技術で資源把握や効率化【SDGs】

伊豆近海の海では「定置網」による漁が伝統的に行われています。漁師の経験や勘が頼りの定置網漁ですが、見えない海の中を最新の技術で可視化する事で、資源の把握や漁業の効率化に役立てようという動きが加速しています。

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静岡県伊東市の玖須美元和田にある石川鮮魚店です。きょうのおすすめは?

<石川鮮魚店 石川弘樹さん>
「いい型の入ってきてますよ。でかくて脂があって」
Q.イワシ、パックで300円ですか?
「パックで300円大きいところで選んでますんで」

このイワシが取れるのは、伊東市・富戸魚港の沖合800メートルに仕掛けた定置網です。網に誘い込まれた魚を水揚げする定置網漁は、江戸時代から続く伝統的な漁。この日の水揚げはイワシとサバ合わせて10トン。3月以降、豊漁が続いています。

しかし、思い通りにいかないこともあります。

<城ケ崎海岸富戸定置網 秋元正樹漁労長>
「前の日にすごい入ってる時があるのですが、朝行ってみたらまるっきりいなくなっちゃたとか。そういうことは多々ありますね。朝来てみないとわからないです」

漁獲高の減少や人手不足など漁業を取り巻く状況が日に日に厳しくなる中、いま、静岡県と協力してある実証実験が行われています。

<静岡県経済産業部 水越麻仁主査>
「水温計を設置するための前準備をしています。安価で、リアルタイムで水温を確認することができます」

水温がわかることで、どんな魚がどのタイミングで網に入るのかを調査できるといいます。これは、静岡県が2023年度から始めた「水産業デジタル実装促進事業」の一環です。見えない海の中を最新技術で可視化しようという取り組みは、学術的にも注目を集めていています。

この日は、東京大学の研究室に県定置網協会の代表や県の職員、メーカーの担当者が集まりました。

<日東製網 細川貴志課長>
「ここから真下を映すように(カメラを)つけたいという話になってまして」

富戸の定置網に導入を考えているのは、水中カメラ。魚の量や種類を可視化することで魚の生態研究にも役立つといいます。

<東京大学農学生命科学研究科 八木信行博士>
「資源のモニターをすることができるし、どの魚が何%いるかとか、取れているのが何%いるのか分かる」

<静岡県定置漁業協会 日吉直人会長>
「まさにそこを知りたい」

<東京大学農学生命科学研究科 志賀智寛さん>
「漁獲予測ができれば流通のところもそうですし、資源管理とか操業の効率化みたいな所にすごく生きてくるのかなと。現場に適応できるような研究にしていければと思っている」

また、この映像を水揚げ前に仲買人などと共有することで、市場にきょう入ってくる魚を伝えるなど、販売促進につなげることも可能になるといいます。

<静岡県定置漁業協会 日吉直人会長>
「僕ら漁師にしてみれば驚くような新しい展開ができるような可能性があるな、と非常に感じた。次の世代につなげたいという思いでこういうのに取り組んで、漁業の現場で生かせるようになればと思ってます」

伝統の漁と新しい技術の融合は、静岡の漁業に新たな価値を生み出しそうです。

水中の映像が見られるのは透明度の高い富戸の海だからこそできる取り組みだということです。静岡県でもこの事業を後押ししていて、漁業者が継続的に静岡で漁業を続けられるようにサポートしていきたいということです。

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