東日本大震災から13年/復興庁統括官・宇野善昌氏に聞く、住民帰還へ除染など推進

未曽有の災害となった東日本大震災の発生から13年が経過した。この間、地震や津波の被災地域を中心にインフラ整備が着実に進展。今後は「特定帰還居住区域」への住民帰還に向けた準備や、創造的復興の中核拠点となる「福島国際研究教育機関(F-REI)」の整備などが本格化していく。政府の司令塔として被災地の復興を先導してきた復興庁の宇野善昌統括官に今後の政策展望を聞いた。

--発災からの13年で被災地の復興はだいぶ進んだ。
「住まいの再建や復興街づくりは、地震・津波被災地でほぼ完了した。発災から最初の10年であれだけの規模のインフラを一気に整備できたのは、政府や関係者が、地元の協力を得ながら努力した結果だろう。整備に尽力した建設業の存在も欠かせなかった。インフラ分野で象徴的だった三陸沿岸道路(復興道路)が開通したことで、物流面だけでなく人々の交流や産業の活性化にも大きな効果が表れている」
--地震・津波被災地域での復興の進め方は。
「地震・津波被災地域では、心のケアやコミュニティーの再生など目には見えにくい部分への取り組みが中心となる。被災3県全体の話になるが、産業面では不漁やALPS(アルプス、多核種除去設備)処理水の放出に伴う中国の禁輸措置などで厳しい状況に立たされている漁業者や水産加工業者をサポートしていく」
--原子力災害被災地域では住民帰還への準備が着実に進む。
「帰還困難区域のうち、先行して街づくりが進む特定復興再生拠点区域(復興拠点)では基本的に除染が終わり、フォローアップを残すばかりとなった。今後は特定帰還居住区域での住民帰還に向けた環境整備が重要になる。2020年代をかけて帰還意向のある住民に戻ってもらうという目標に向け、除染や必要なインフラ整備をしっかりやっていきたい」
--除去土壌などの最終処分に向けた取り組み方針は。
「中間貯蔵施設(福島県大熊、双葉両町)には約1・4万立方メートルの除去土壌があり、今後、特定帰還居住区域で除染した土壌が運び込まれる。45年の県外最終処分という目標を見据え、関係省と連携しながら除去土壌の減容化や再生利用に関する取り組みも進める。いずれにしても、前提として正しい知識や情報を発信し、国民の理解を得る『リスクコミュニケーション』が大切になる」
--F-REIの施設整備を通じて研究者のニーズや地域の期待に応えていく。
「F-REIの施設整備では、エネルギーやロボットなど各分野の研究者が混ざり合い交流できる空間を設けることを重視したい。それがイノベーションを促し、世界最先端の研究開発が行われる土台になるのではないか。開発技術の産業化も意識しながら、住民や民間企業の人など来街者が自由に出入りできる、街に開かれた施設にしていく。災害に強い施設づくりやカーボンニュートラル(CN)に対応した施設も求められるだろう」。

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