「曲水の宴」平安貴族の歌遊び 再興15回、英語で“亡き母想い”漢詩を詠む詩人も 京都・北野天満宮

北野天満宮「曲水の宴」1000年あまりの時を経て2016(平成28)年に再興、15回目を迎えた<2024年3月9日 京都市上京区>

学問の神として知られる菅原道真を祀る北野天満宮(京都市上京区)で9日、平安貴族の歌遊びを再現した「曲水の宴」が開かれた。

【画像】北野天満宮「曲水の宴」

曲水の宴は、北野天満宮の境内西側、紅梅殿の前に広がる「船出の庭」で詩歌を読む平安時代の宮中行事。

2016(平成28)年11月3日に約1000年あまりの時を経て再興され、今回で15回目を迎えた。以来、春と秋の年2回開かれている。

菅原道真は、高い文才を評価され、宇多天皇主催の曲水の宴に文人として幾度も招かれたとされる。

道真は日本古来の心と、国外から伝来した新しい文化を兼ね備える「和魂漢才」が必要だと説いたという。このため北野天満宮では和歌と漢詩を詠み(和漢朗詠)、道真の偉業を称える年中行事となった。

北野天満宮の和歌撰者・濱崎加奈子氏(有斐斎弘道館・館長)の解説のもと、小袿(こうちぎ)をまとった女性と狩衣(かりぎぬ)姿の男性が1組となり、計4組8人が「梅」や「酒」などを題材に和歌や漢詩を披露した。
和歌を詠むのは女性(歌人)、漢詩は男性(詩人)。

この日、京都の最高気温は6.9度と冷え込み、あられが降る中での開催だったが、参拝者約400人が平安貴族のみやびな文化を楽しんだ。

平安時代に始まった男装の演舞「白拍子(しらびょうし)」の奉納のあと、雅楽の調べに乗せて、童子らが酒を注いだ杯を載せた盃台を小川に流す。
盃台は羽觴(うしょう・雀の形の盃)や鴛鴦(おしどり)をかたどっている。歌人、詩人は杯が目の前に流れつくまでに詩を作り、流れて来た杯を取り、神酒を一献いただく。

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これまでの15回で、珍しく「和洋朗詠」を体現した詠者もいた。

前回(2023年11月)、小倉百人一首の英訳で知られるアイルランド出身の詩人、翻訳家のピーター・J・マクミラン氏は、「酒」を題材に英語で詠んだ。

その内容は、「中秋の名月の夜、(自身が住む京都・嵯峨の)池のほとりでは花が散っていたが、満月の光が蓮の葉を銀色に染めていた。そこに亡き母の面影が映っていた」というものだった。

マクミラン氏は日本に在住して30年以上。日本人の精神性や文化を翻訳という形で世界に伝えている。

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