25年度に完了迫る群馬県避難ビジョンの進捗と課題

激甚化する自然災害を踏まえ、県は避難の在り方をまとめた「群馬県避難ビジョン」を3年前に定めました。ビジョンの完了が2025年度と迫るなか、進捗や課題などを取材しました。

2011年の東日本大震災や今年1月の能登半島地震など大規模災害が発生した際には、避難生活による健康状態の悪化が原因で亡くなるいわゆる「災害関連死」の発生が課題となっています。また、県内にも大きな爪痕を残した2019年の台風19号をはじめ、近年激甚化している自然災害への対応が急務です。

こうした課題に対応するため、県では「群馬県避難ビジョン」を2021年3月に定めました。

このビジョンは、災害時における避難の基本的な考え方が掲げられ、県や市町村、関連団体などが連携して、2025年度までの実現を目指しています。

「能登半島地震を見ても明らかな通り、分散避難と災害関連死を防ぐためにBFT(ベッド・フード・トイレ)の重要性が叫ばれています。やはり県民の方々1人1人にしっかり自分の命は自分で守るということで避難行動を取ってもらおうと(作成しました)。(全国と比べても)先駆けの取り組みになっているのではないかと思います。」(堀越危機管理監)

ビジョンでは、新しい避難の形として「分散避難の推進」を掲げています。
今までは、発災後に近くの学校の体育館に避難するのが通例でしたが、自宅に留まる在宅避難、ホテルや旅館への避難、親戚や知人宅への避難など、避難の選択肢を増やすことが重要とあります。

防災の専門家は、県避難ビジョンを次のように評価します。

「1つの選択肢しか避難する方法がないというのを解消しようというのが今回の県の避難ビジョンになります。良いなと思うのは、すべての市町村の防災担当者が何らかの検討グループに入っていて、他の市町村との連携を平時からやっていますので、災害時に何かあったときにはそれがうまく機能するんじゃないかなと思います。」(群馬大学・金井教授)

改善点も見えてきました。各分野の達成状況を測る重要業績評価指数・KPIの昨年度の実績です。
「個別避難計画の作成」や「宿泊事業者等との協定締結」など11項目がありますが、なかには目標値の設定のない項目もあります。

県は、現状では達成状況が「分かりにくい」として、KPIの修正を市町村や関係団体と協議して今年の夏までに行いとしています。

「さらに分かりやすい指標を提示できるように検討を進めている状況です。35市町村がしっかり連携が取れるような枠組みを作って推進していきたいと考えております。」(堀越危機管理監)

ビジョンの実現に向け群馬大学の金井教授は、エリアごとの連携と県民の協力が必要だと話します。

「すべての災害対応を小さい市町村でやるのは限界がありますので、中核になるような市を人口規模に応じて決めて、そこを中心に連携できる仕組みができていけば、それで目標達成というのは考えとしてあるんじゃないかなと思います。そしてあと何より、各県民の皆さんも何かあった時にどうやって自分の家族が避難生活を送るのか、具体的に考えていく必要があると思います。」(群馬大学・金井教授)

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