ロッテ・井上晴哉「本当に打つだけだと思う」復活のカギは“タイミング”

「打つしかないと思われているだろうし、自分自身も自覚している。そこしかない」。

春季キャンプ中にこのように話していたロッテ・井上晴哉は、3月8日のソフトバンクとのオープン戦で初出場すると、初打席で二塁打を放ち、9日のソフトバンク戦でも2安打、「やっていることができているということじゃないですか」と、ここまで3試合に出場して打率.375をマークする。

井上は21年10月に『右手関節三角繊維軟骨損傷に対しての関節鏡下にて縫合術』を受け、復帰後は「右手の使い方が変わっているところがあるので、苦労はしていますけどね」と本来の状態を取り戻せずにいた。「あまり右手を使わないことにしました。右手を意識してもかぶるだけになっちゃうから。力を使わずにそのまま流したほうが、その分左手を使えるようにしないといけない」と左手の使い方の新しい感覚を手にし、22年9月に月間打率.302(86-26)、4本塁打、19打点、得点圏打率は驚異の.550と抜群の勝負強さを誇った。

“新しい感覚”を掴み迎えた23年はさらなる活躍が期待された中で、32試合に出場して、打率.179、1本塁打、8打点の成績に終わった。昨季はシーズン中に左足、右足の使い方をいつもと変えたりと、試行錯誤。左手の感覚はうまく使えているが、「タイミングなんですよね。クイックが速いピッチャーだったり、球の速いピッチャーというのは一軍にバンバンいるから二軍で感覚よく打っていても、タイミングの部分が大きく遅れるのが目立っていたので、そこかなと思います」と、打てなかった原因のひとつに“タイミング”を挙げた。

「やっぱりタイミングが遅れるのが怖い。ちょっと小さめに取れる。すぐに右足に溜められるスタンスといったら、ちょっと小さくなりました。若い時は何も考えなくても良かったけど、自然とワンテンポ、あ〜なんか遅れたなとかというのが目立ってきた」。

昨年夏以降は左足を小さくしてタイミングを取っていたが、「それを通常にしようかなと。小さくしてゆっくり取れるようにしようかなと」とのこと。

春季キャンプ中には、「変化球とか色々混ざっているのをみていないから、どれくらい対応できるかわからないけど、タイミングを遅れなければなんとか対応できると思うし、真っ直ぐに対してのタイミングが取れるかな」と話していた。

ZOZOマリンスタジアムでのオープン戦に合流するまで、石垣島春季キャンプ、ロッテ浦和に戻ってからは「合流する日をだいたい考えて、あとは浦和に帰っての試合がある、実戦でどうするかを考えながらやっていました」。

一軍に合流してから早速結果を残した。タイミングについても「早めに始動してというのがうまくいっていますし、タイミングは測れていると思います」と手応え。

開幕を近づくにあたって、投手陣のレベルも上がってくる。そこにどう対応していくかが課題になってくる。「そうですね、今やっていることをどれくらい対応できるのか、試合で対応していって応用していくみたいな感じですね」。

結果を求めながら、今取り組んでいることの精度を上げなければならない。「難しいですけど、そこは打つしかないので、はい」。

井上が守る一塁はライバルの多い激戦区。「入った時から外国人とやってきたし、共通だと思うし、どのみち外人とやり合って相手が衰えるわけじゃないけど、それに負けないくらい、一緒のレベルでもいいと思う。負けたという感じもしていない」とキッパリ。

開幕まで残り3週間。「本当に打つだけだと思うので、若い子達に負けないようにやっていきます」。打って、開幕一軍、そしてもう一度、ZOZOマリンスタジアムのファンの大声援に応えてみせる。

取材・文=岩下雄太

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