「養子」「隠し子」「胎児」は相続人になれる?相続専門税理士が「相続人の範囲」を解説

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相続人の範囲についての知識がなければ、あなたは相続人が誰になるのかが分からず、困るでしょう。なぜなら相続人の範囲を知ることは、様々な相続のことについて知るためのスタートであり、相続人の範囲が分からなければ、誰がいくらの遺産を相続できるか等を知ることができないためです。相続が発生していない人も、すでに相続が発生している人も、最初に知るべきは、誰が相続人になるのかという相続人の範囲です。そこで相続人の範囲について、フローチャートや相続関係図を用いて解説していきます。

これだけ見れば、誰が相続人になるのかが分かる

誰が相続人になるのかを調べる方法は、法律の文章だけを読んでも、難解で分かりづらいため、図やフローチャートを使って確認することで、あなたも簡単に相続人の範囲について知ることができます。ここでは、相続人の範囲についての原則論と、具体的な図やフローチャートを用いて、相続人の範囲について知る方法を紹介します。

相続人の範囲は第3順位までのグループに分かれる

人が亡くなったときに所有する財産や借金は、相続人に引き継がれますが、財産を引き継ぐ相続人は、民法によって定められています(民法886条~895条)。

相続人の範囲については、民法上第3順位までグループがあり、このグループに該当しなければ、内縁の妻や同性のパートナー等、どんなに身近な人であっても相続人にはなりません。相続人の範囲の確定ですが、考え方としてはシンプルで難しくありません。

大原則:配偶者は必ず相続人になります。

第1順位:子供、代襲者である孫・ひ孫・養子

第2順位:父母(父母が亡くなっている場合には祖父母)

第3順位:兄弟姉妹

たとえば、あなたが、特定の人の相続人に該当するかどうかを見る時に、第1順位に該当しなければ、次に第2順位を確認し、またいなければ第3順位を確認するというように、第1順位から順番に確認していきます。

すぐに相続人の範囲が分かる相続人関係図

相続人の範囲を分かりやすくしたものが、相続人関係図(図表1)になります。

【図表1】相続人関係図

【相続人関係図の見方】

①「本人」の箇所は、亡くなった人や亡くなると想定される人を基準とします。

②まず第一順位の箇所に、あなた(もしくは調べたい人(以下同様))がいるかを確認します。

たとえば本人が父親で、あなたが「子」であれば、第1順位のグループですので、相続人になります。

③第1順位に該当する人がいなければ、次に第2順位のグループを見ます。

④第2順位のグループに該当する人がいなければ、最後に第3順位のグループを見ます。

さらにこの相続人関係図だけではなく、相続人発見フローチャートを用いることでも、簡単に相続人の範囲を知ることができますので、下記でも併せて確認してみましょう。

カンタン相続人発見フローチャート

このフローチャート(図表2)で、亡くなった方(被相続人)を基準として、誰が相続人になるのかを簡単に確認することができます。

【図表2】フローチャート…誰が相続人か

※被相続人:亡くなった人のこと。

※代襲者:たとえば、親よりも子が先に死亡してしまった場合に、亡くなった子に孫がいれば、孫が親の立場を引き継いで相続人となります。この場合の孫を代襲者(代襲相続人)といいます。

よくある相続人の範囲についての3つの疑問点

これまで相続人の範囲について、図やフローチャートを用いて解説してきましたが、上記以外でもよく相談を受ける相続人の範囲についての3つの疑問点(養子、隠し子、胎児)がありますので、これから解説していきます。

養子は相続人になる

養子縁組とは、血の繋がりとは無関係に、役所に申請をすることで法的な親子関係を発生させることをいいます。たとえば、幼い頃に親が事故で亡くなってしまった場合に育ての親と養子縁組するケースや、資産家の方が相続税の節税対策のために養子縁組をする(相続人の人数が増えれば相続税が安くなるため)等といったケースがあります。この養子縁組には、「普通養子」と「特別養子」の2種類があります。

・普通養子:実親との親子関係を継続した状態で、養親の子となります。このため、実親と養親の双方の子として相続人になります。

・特別養子:実親との関係は消滅し、養親の子として相続人になります。

いずれのケースでも、養子縁組をした養親の子として相続人になりますが、実親の子の立場が消滅するかどうかに違いがあります。物心がついていない幼い時期に養子縁組をしているケースですと、自分が養子縁組したのかどうか知らないまま大人になることもあります。

この点については、養子縁組をしていると、戸籍には、通常であれば「父」や「母」といった記載しかありませんが、「養父」「養母」という記載が出てくるため分かります。養子縁組をした時期についても記載があります。またその際に、「養父」「養母」のみの記載で、実親である「父」や「母」の記載がなければ、普通養子ではなく、特別養子であることが分かります。

隠し子は認知の有無次第

隠し子という言葉がありますが、法律上は、「婚姻関係にない男女間に生まれた子」という解説になります。この隠し子が相続人になるかどうかは、「認知」しているかどうかで異なります。認知とは、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を、父親が自分の子であると役所に届出を行い、認めることをいいます。

・認知している場合:相続人になります

・認知していない場合:相続人になりません

このように、認知しているかどうかによって、子が相続人に該当するか否かが決まるため、子の立場としては重要な事実となります。なお、結婚して子が生まれ、その後で離婚をした場合には、婚姻関係がある間に生まれていますので、認知の有無に関わらず当然に子として相続人になります。

この認知の有無についての調べ方は、戸籍を確認することで分かります。認知されていなければ、戸籍上には何も記載が出てこないためです。認知されていなければ、仮に血のつながった父親がいても、相続人に該当しないため、相続権がありません。

認知は父親が生きている間に役所に届出を行わないと成立しませんので、あなたが仮に認知されていない子であることを知ったのであれば、認知のお願いを父親にすることも選択肢の一つに入るでしょう。

胎児は相続人になる

お腹の中に赤ちゃんがいる時に、夫が不幸にも事故や病気等で亡くなった際、胎児であっても、相続人として財産を相続することができます。これはまだ産まれていなくても、すでに産まれたものとみなすという民法により定められています。

ただし、不幸にも死産であったようなケースでは、もともと相続人ではなかったものと考えることになります。配偶者については、必ず相続人になるという大原則を冒頭で紹介しましたが、たとえば夫が事故で亡くなった際に、胎児が無事に産まれてくるかどうかで相続人の範囲が変わります。

①胎児が産まれてきた場合:妻と子が相続人になります。

②胎児が死産した場合:妻と第2順位(夫の父か母、いなければ第3順位の夫の兄弟姉妹)の立場の人

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