衆院長崎3区補選 “不戦敗”調整の自民、結論示されず地元困惑 「主体性ない」県連執行部批判も

 衆院長崎3区補欠選挙(4月28日投開票)に独自候補を擁立せず“不戦敗”の方向で調整している自民党が、同16日の告示まであと1カ月に迫ろうとしているにもかかわらず、結論を出さない状態が続いている。党県連は今月10日までの結論を党本部に求めていたが返答はなく困惑。野党が準備を加速させる中、主戦派の自民県議らは、擁立判断を党本部に委ねた県連執行部の姿勢を「主体性がない」と不満を募らせている。
 5日、東京・永田町の党本部。古賀友一郎県連会長は、擁立には「賛否両論ある」として「党本部の決定に従う」と改めて伝えた。向かい合った茂木敏充党幹事長はこう返した。「県連が戦う意見を取りまとめてくれば、すぐに公認作業に入るつもりだった」
 茂木氏は擁立に前向きだった。2月13日、古賀氏らに「戦う準備を」と電話。これを受け県連は人選を本格化した。3区内の県議らは難色を示したが、長崎市区の江真奈美県議が意欲を見せた。
 古賀氏は同26日の党本部協議で選定状況を伝えた際にも「賛否両論」を強調。さらに、票の見返りに選挙区で自民を応援してきた公明党との関係にひびが入る恐れもあると懸念を示した。
 3区は小選挙区定数「10増10減」の区割り変更で、次期衆院選から新2、新3両区に分割される。自民関係者によると、茂木氏はこの特殊事情を踏まえ、補選後の比例処遇や資金面で「相当配慮した」が、古賀氏から出たのは「後ろ向きな言葉ばかり」だった。
 茂木氏は怒りをにじませて、こう尋ねた。「あなたはどうしたいのか?」。重苦しい空気の中、古賀氏は「できればやりたくありません」と絞りだした。

 3区補選は政治資金パーティー裏金事件を巡る谷川弥一氏の議員辞職が発端。逆風の中、当初は県連内にも、不戦敗を容認する慎重論が漂っていた。
 一方、2021年衆院選で谷川氏に惜敗した立憲民主党の山田勝彦氏=衆院比例九州=が出馬を表明。日本維新の会も新人、井上翔一朗氏を擁立する。ともに次期衆院選を見据えて動き自民批判を強めているだけに、離島を中心に影響を危ぐする自民関係者らの間で主戦論はいまだ根強い。
 こうした懸念はもともと本県選出の国会議員や元議員にもあったが、「慎重論に変わった」(県議)。本県は古賀氏を含め宏池会(岸田派)出身議員が多く、次の首相候補と目される茂木氏がリードする構図を嫌い、「岸田文雄首相の意向が働いた」との見方もある。
 党本部は不戦敗で調整しているもようだが、県連執行部の進め方に対する不満が足元から噴出しつつある。ある県議は「県議の多くが『戦うべき』と言っているのに、一度も意見集約しなかった。不戦敗ありき」と反発。別の県議は「主体性を発揮しなかった執行部の責任が問われる」と指摘する。

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