「木陰」に集って、語らって 芸工大生が組み立て式屋台製作、仙台で披露

組み立て式屋台「KOKAGE」を囲み、住民らと談笑する設楽大翔さん(左から2人目)、田沢紘子講師(同3人目)、上田健斗さん(右)=仙台市若林区・井土集会所

 東日本大震災で失われた住民同士のつながりを取り戻そうと、東北芸術工科大(山形市)の学生が学科を超えて協働し、組み立て式屋台「KOKAGE(こかげ)」を製作した。震災前にはあちこちで見られた井戸端会議の復活を目指し「木陰」のように人が集う場をつくる。仙台市若林区の井土集落で11日、お披露目を兼ねた慰霊祭が行われ、元住民らが屋台を囲んだ。

 震災直後から仙台市沿岸部で地域コミュニティー再生の研究を続ける同大企画構想学科の田沢紘子講師がゼミ生6人と共に、同集落と、隣接する三本塚集落で、生活に根付いた集落史の調査を行ってきた。海が近い井土集落は36人が亡くなり、震災前の103世帯から11世帯に激減。軒下や縁側などで住民が交流する風景は震災を機に失われ、かつての暮らしを懐かしむ声も聞かれたという。

 調査で見えた課題に対し、空間デザインで解決策を提示しようと田沢講師は、同大建築・環境デザイン学科の加藤優一講師とゼミ生7人に協力を依頼。井土集落ではマルシェが、三本塚集落では住民の食事会が行われていることに着目し、組み立て式屋台を考案した。

 屋台の大きさは高さ約2メートル、幅約1.3メートル、奥行き約1.2メートル。部材を簡素化・軽量化し、運搬から設置、解体までを1人でできる。容易に修理できるようにとホームセンターで購入可能な材料を選び、日よけの布は強い海風を考慮し、切れ込みを入れた。

 慰霊祭には元住民ら約100人が集まり、井土集会所前の屋台には自然と人の輪ができた。加藤ゼミで設計と製作を担当した共に3年の上田健斗さん(21)、設楽大翔(だいと)さん(21)は「初めからそこにあったかのように受け入れられている」と笑顔。田沢講師は「当たり前のコミュニケーションが生まれ、井土らしさを取り戻すきっかけにしてほしい」と期待した。

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