震災伝承へ特別授業 福島県大熊町の「学び舎ゆめの森」 前町長の渡辺利綱さん、子どもらにエール

大熊町の子どもたちに被災直後の状況や避難先で学校を再開させた思いを語る渡辺さん(右)

 福島県大熊町の義務教育施設「学び舎(や) ゆめの森」は11日、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶や教訓を次の世代につなぐ「特別授業」を実施した。原発事故に伴う全町避難や復興を指揮した前町長渡辺利綱さん(76)が講師を務め、原発の安全神話を信じていた過去への反省や教育の立て直しに尽くした在任中を振り返った。「夢に向かって頑張ってほしい」とエールを送った。

 渡辺さんは地震直後、災害対策本部を立ち上げた際の意識を「津波被害から町民をどう守るか」を必死に考えていたと述べた。「原子力災害が起きるとは思っていなかった」とした上で「『原発は大丈夫』という認識でいた。後に反省することがたくさんあった」と率直な思いを語った。

 先代の町長らに教わった「まちづくりは人づくり」との信念を胸に、避難先での町の再建では「子どもの教育」を最優先としたと説明。「町の未来を担う子どもたちのため、まずは安心して学べる環境を整えようと思った」と学校再開に注いだ熱意に触れ、仮設校舎を受け入れてくれた会津若松市への感謝を述べた。

 子どもたちに向けて「夢を持つ大切さ」を説いた上で「自分の好きなことをやって、困難に負けずに頑張ってほしい」と励ました。

 授業には小泉進次郎元環境相も加わり「自分で決めた道を進み続けてほしい」と伝えた。

 受講した1~9年生22人のほとんどは震災と原発事故発生後に生まれた。6年生の佐藤翔和さん(12)は「震災があったことを忘れず、大きな災害が起きたときはみんなで助け合うことが大切だと思った」と述べた。震災当時2歳だった9年生の斎藤羽菜さん(15)は「13年前から子どもたちを最優先に考えてくれたからこそ今の私たちがあると実感した」と感謝した。

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