サイズは大きく、値段は安く…暖冬で春野菜の市場に異変 成育良すぎて農家も小売店も「悩ましい」

暖冬の影響を受ける春野菜=1日、鹿児島市のフレッシュアリーナしろやまアミュプラザ店

 暖冬が春先に出荷されるはずの鹿児島県内の野菜に異変をもたらしている。2023年12月~24年2月の平均気温は過去2番目に高く、野菜は全般的に生育が良すぎる傾向にあった。例年より大きい規格が増えたほか、出荷が前倒しになった反動で相場は乱高下している。

 「春野菜祭り」「旬を食べよう」-。スーパーでは春野菜のポップが目に入る。フレッシュアリーナしろやまアミュプラザ店では、2月前半には新ジャガイモや新タマネギなど売り場を春野菜中心にした。例年なら主力のダイコンやハクサイといった鍋商材の動きが鈍かったためで、普段より3週間ほど早い。

 生育の良さは小売店を悩ませる。「ジャガイモが例年より大きい」と、こぼすのは青果仕入れ担当の永田健一郎さん(55)。スーパーは袋に詰めて売りやすく、消費者が使い切りやすいLサイズ(130グラムほど)を好む。市場にはそれを上回る2L、3Lサイズがあふれ、仕入れに苦労する。

 青果は年間を通して全国に安定供給できるように、県内外の産地で時期を分けて出荷される品目がほとんどだ。鹿児島中央青果の上園博野菜部長(65)は「暖冬の影響で全般的に出荷が前倒しになり、端境期が生じている」と話す。

 例えば県産キュウリは昨年12月に出荷が集中し、卸値は前年同期より2割ほど安かった。1月も安く推移したが、2月に入ると反動や日照不足で収穫量が減り始め、3月の卸値は前年の2倍になっている。

 鹿児島県が日本一の生産量を誇るソラマメにも影響が及ぶ。指宿市のソラマメ農家の西山茂さん(65)は「異常も異常のシーズン。こんなに早い出荷のピークは経験したことがない」と頭を抱える。

 指宿産は通常なら3月中旬に出荷のピークを迎えるが、今年は3週間ほど早く、例年より2割ほど安い相場だ。「昨年は寒さにやられて、今年は暑さに苦労した。資材が高騰する中、生産者が減ってしまうのではないか」と険しい表情を浮かべた。

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