なんで回らないのに「回転ずし」なの?「廻転鮨 銀座おのでら」大阪のど真ん中に初出店で話題

ミシュランガイドで星を獲得している鮨の名店「銀座おのでら」の流れをくむ「廻転鮨 銀座おのでら 大阪店」が9日、大阪・心斎橋にオープンした。回転ずし形態での出店は東京・表参道、京都河原町に続いて3店舗目だが、レールはなく、回らないのが大きな特徴。なぜ、廻転鮨と名前がついているのに回転しないのか。

本格的な江戸前鮨なのに価格はお手ごろ

今回オープンした「廻転鮨 銀座おのでら 大阪店」はミシュラン星獲得店「銀座おのでら」の新形態で東京、京都に続いて3店舗目。大阪初進出となる。場所は大阪のど真ん中。メインストリートの御堂筋に面した「御堂筋ダイヤモンドビル」の地下1階にある。近くにはアメリカ村やアップルストアなどがあり、若者とインバウンド客でごった返している人気エリアだ。

「銀座」と名がつくと条件反射的に腰が引けがちになるが、そこまで心配はいらないようだ。本格的な江戸前鮨と高級感あふれる内装。なのに価格は思った以上にリーズナブルだった。

「銀座から世界へ」現在は3カ国で15店舗を展開

運営するのは「ONODERAフードサービス」(千代田区)で、2013年に「銀座おのでら」をオープン。以来「銀座から世界へ」をコンセプトとして現在は東京を中心にロサンゼルス、ハワイ、上海を含む3カ国15店舗を展開している。

そのなかで「廻転鮨 銀座おのでら」は、お手ごろ価格での提供を目指しており、1号店は21年10月に表参道にオープン。昨年7月には京都に2号店が誕生した。大阪の一等地ともいえる立地でのオープンは狙いすましたもの。長尾真司代表は「2年半前からリサーチしていた。コロナ禍で一度見送りましたが、とても賑わっている場所。若い人やカップル、外国人客をターゲットにしています」と意気込み、今後は本格的に全米へ進出する計画もある。

新春1番マグロの落札は5回目

また母体の「ONODERA GROUP」は1月5日に行われる恒例の東京・豊洲市場新春マグロ初競りで有名だ。今年も1億1434万円で一番マグロを落札。これで何と4年連続5回目の快挙を達成しており、ご存じの方も多いのではないか。

回転しないのに廻転鮨と呼ぶ理由

ただし、この「廻転鮨 銀座おのでら 大阪店」は名前とは裏腹にネタは回っておらず、回転ずしの命ともいうべきレールもない。一瞬、看板に偽りあり、と思ってしまったが、そこには「気軽に親しみやすく」という店側の思いがあった。長尾代表が言う。

「回転ずしというと、子どものころから楽しいイメージがある。そういう雰囲気の中で握りたてのお寿司、自分の大好きなネタをお手ごろ価格で楽しんでもらえたらと、唯一無二の存在を目指しています。大阪の人にもぜひ喜んでいただきたいですね」

確かに、回転という響きもあってか、なぜか落ち着く店構え。というのも全体的に夕陽や海をモチーフにした色使いになっており、たそがれどきの海や波を連想させてくれるからだろう。白木調のデーンとした大きなカウンターは高級感を感じさせるが、天井には「イカ釣り漁船」の集魚灯をおしゃれにしたシャンデリアがつるされ、温かさが伝わって来た。

それに寿司職人は統括総料理長の坂上暁史さんをはじめ、ブスッとした人はいない。ネタは「鮨 銀座おのでら」と同じルートで仕入れ、セントラルキッチンで一括管理。新鮮な状態でさばき、仕込み、飾り、隠し包丁などを施す江戸前鮨を提供してくれるが、みなさん、腕はしっかりしていて、笑顔でいたってフレンドリーなのも居心地の良さにつながっている。あと、上がりの入れ方やかわいい感じの皿は、どこにでもあるような回転ずしのそれ。これも気軽さにひと役買っているように感じられた。

その一方で、目の前で握ってもらえるのはどこか得した気分。さらに、店ではライブ感をより味わっていただこうと1時間に1回、特定のネタを安価で提供することも考えている。もちろん、「おのでら」といえば、最大の売りは豊洲市場のマグロの仲卸業者「やま幸」から仕入れる本マグロだ。今回は気仙沼産の赤身と1番人気の中トロを握ってもらい、パクリといただいた。さらに対馬産の穴子や天草産の車海老、ウニの軍艦食べ比べも味わい尽くした。シャリは山形産で赤酢を混ぜる「赤シャリ」でやや固め。「よくかんでもらって、ネタとの一体感を味わってもらいたい」と坂上さんは話す。

注文はタッチパネルででき、シャリやわさびの量は調整可能だ。そうそう、大阪人の心をつかもうと大阪店限定メニューとして、マグロを3段に重ねた「箱寿司」を提供。試行錯誤の末、真ん中にはトロタクを挟んでいるが、これは坂上さんがトロタク発祥の店とされる札幌の名店「すし善」の出身ということから考案されたものだ。さらに、大阪店では阪神ファンに向けた新たな鮨ネタのアイデアも計画中だとか。

オープン記念もライバルひしめく激戦区の大阪を意識したのか、17日まで過去最大級のキャンペーンを実施する。期間中は「やま幸」本マグロを使用した鮨全品をはじめ、穴子や車海老などを大特価で提供。生ビール半額、店舗初の松坂牛の握りも登場する。また会計後は店舗で使用できる商品券プレゼント抽選も行い、最終日の17日にはやま幸マグロ解体ショーを実演する。

回らない廻転鮨の銀座おのでら大阪店。とはいえ、驚くほどのホスピタリティと、このおいしさとあれば、お客さんがもの凄い勢いで「回転」するのは間違いなさそうだ。

◇「廻転鮨 銀座おのでら 大阪店」

大阪府大阪市西心斎橋2-1-3 御堂筋ダイヤモンドビルB1階、10:30-22:30(最終入店21:30、L.O22:00)、不定休

https://onodera-group.com/kaitensushi-osaka/

(よろず~ニュース特約・チコ山本)

© 株式会社神戸新聞社