東日本大震災13年 鹿沼に避難の武内さん 発生後初、古里で3月11日 「安心の場所」思い強く

東日本大震災後、初めて「3月11日」を古里で迎え、知人と談笑する武内さん(右)=11日午後3時、福島県大熊町

 郷友との久々の再会に頬を緩ませた。東日本大震災から13年となった11日、福島県大熊町から栃木県鹿沼市に避難している武内都(たけうちみやこ)さん(74)は、震災後初めて「3月11日」を古里で迎えた。地域に伝わる伝統芸能の練習会や震災の追悼行事に参加。「やっぱりほっとする」「地元の行事に参加できて誇らしい」と、つながり続ける大切さを実感した。町内の武内さんの家は帰還困難区域のままで、今春解体する。これからも鹿沼市で暮らすが、改めて古里への思いを強くしている。

 11日午後。武内さんは大熊町役場の広場で行われた追悼行事に参加した。

 「今日は戻ってきたんだ」「元気でしたか」。会場では知人から次々と声をかけられた。「うれしいですね。やっぱり安心する場所です」としみじみ語った。

 東京電力福島第1原発が立地する大熊町は原発事故の影響で全町避難となった。町の人口は震災前、約1万1500人。今年2月1日現在、町内に住むのは当時の1割の1144人だ。

 武内さんは震災直後の2011年3月、宇都宮市に娘が住んでいた縁で同市に家族で避難した。翌12年12月から鹿沼市で暮らしている。

 大熊町へは年に数回、訪れる。震災前から参加していた地元の伝統芸能「相馬流れ山踊り」の保存会の練習日が、今年は偶然、11日に重なった。

 震災後に建設された町役場の会議室には、地元や各地の避難先から15人ほどが集まった。約1時間、音に合わせて扇子や小道具の動かし方を確認した。

 踊りは、南相馬市で行われる国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追(そうまのまおい)」で5月に披露する予定。「震災前は当たり前だったが、今は古里の行事に参加できることがうれしいし、誇らしい」と当日を心待ちにする。

 武内さんは11日、帰還困難区域のままの自宅を遠目に眺めた。この1、2年で著しく老朽化し、解体して更地にすることを決めた。「梅の木はもう見納めね」と口にした。

 古里で迎えた3月11日。「元通りにはならないが、若い人が住みたいと思える町になってほしい。私も置かれた立場で自分なりに前を向き、力になりたい」。そう古里の復興を願った。

東日本大震災後、初めて「3月11日」を古里で迎えた武内さん。追悼行事で手を合わせた=11日午後3時、福島県大熊町
東日本大震災後、初めて「3月11日」を古里で迎え、知人と談笑する武内さん(左)=11日午後3時、福島県大熊町

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