〈確定申告の期限迫る〉忘れてない?「ふるさと納税」の寄付金還付&税金控除の手続き…しくみとメリットをおさらい【FPが解説】

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確定申告の期限が迫っていますが、ふるさと納税をされた方、還付や税金控除の手続きを忘れていませんか? ここでは、ふるさと納税のしくみとメリット、ルールを平易に解説します。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

1月から12月末までにふるさと納税した金額が「寄付金控除」の対象に

生徒:私はここ数年、ふるさと納税にハマっています。地方の海産物が本当においしくて。きちんと税金を支払って、地方の名物を食べられるなんて、ふるさと納税は本当にいい制度ですね!

先生:これは税金を納めているわけではなく、正確には地方自治体への寄付なのです。年末になると、みなさん大急ぎで寄付されますね。

生徒:そういえば、毎年12月になると、駆け込みでふるさと納税する人が増えますよね。

先生:そうです。1月から12月末までにふるさと納税した金額が寄付金控除の対象になり、所得税や翌年の住民税を減らせるからです。つまり、自分が支払うべきであった税金を減らして、その分だけ寄付金を支払えるということですね。寄付した自治体からは、寄付額の最大30%相当の返礼品をもらえます。ただし、2,000円の自己負担が必ずありますし、寄付金には上限額があります。

[図表1]ふるさと納税のイメージ

生徒:上限額を超えたらどうなるのですか?

先生:寄付したければいくらでもできますが、上限額を超えた金額は寄付金控除の対象になりません。純粋な寄付になってしまいます。例えば、給与収入300万円で独身か夫婦共働きの人の上限額は2万8,000円です。専業主婦の世帯であれば1万9,000円ですね。

生徒:共働きのほうが上限額は大きいのですね。うちは夫婦共働きで、高校生の子どもが2人います。その場合、上限額はいくらですか?

先生:会社にお勤めでしたよね。年収はおいくらですか?

生徒:額面で500万円くらいです。

先生:それなら、上限額は3万6,000円ですね。

生徒:ちなみに、うちの会社の社長は年収2,000万円だそうです。その場合、上限額はいくらですか?

先生:仮に、妻が専業主婦で高校生以上の子ども2人の場合、上限額は53万6,000円ですね。

生徒:それはすごい! 50万円以上も寄付できるのですね。高額納税者は、たくさん寄付できますね。

[図表2]全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安

先生:ただし、住宅ローン控除や医療費控除などがあると上限額が変わりますよ。家族のだれかの治療費が増えていて医療費控除が増えると、ふるさと納税の上限額が下がるということですね。また、子どもが16歳になれば扶養控除の対象になりますから、これによって上限額が下がってしまいます。

生徒:なるほど…。

控除や還付の方法は「確定申告」と「ワンストップ特例制度」の2種類

先生:ご存じの通り、寄付金は税金の控除や還付で取り戻せますが、手続きのやり方は2種類あります。1つはそろそろ期限が迫っている「確定申告」です。

生徒:毎年のことですが、確定申告は面倒ですね…。

先生:医療費控除がない、確定申告の必要がないというのであれば、もうひとつのやり方として「ワンストップ特例制度」があります。これは、給与所得者が5つ以下の自治体に寄付した場合、寄付先にワンストップ特例の申請書を提出すれば、確定申告不要で翌年度の住民税から控除される制度です。

生徒:ワンストップ特例の申請書は、地方自治体へ郵送するのでしょうか?

先生:そうですね。オンライン申請できる自治体もありますが、基本は紙の申請書を翌年1月10日必着で郵送します。

[図表3]ワンストップ特例のイメージ

生徒:確定申告と比べて、ワンストップ特例にデメリットはないのでしょうか?

先生:確定申告すると、寄付金は、所得税と住民税の両方から控除されます。しかし、ワンストップ特例では控除されるのが住民税だけです。ワンストップ特例の場合、上限額を超えてしまう可能性が確定申告よりも高くなります。それがデメリットですね。また、住宅ローン控除や医療費控除があって、確定申告しなければいけない場合には、そもそもワンストップ特例を使うことはできません。

インフレ加速中…日用品を生産している都道府県に注目

生徒:ふるさと納税の返礼品では、どんなものが人気ありますか? やはり海産物でしょうか?

先生:2022年に最も多くの寄付金を集めたところは、宮崎県都城市で、特産の牛肉や豚肉が人気でした。その次に寄付金を集めた北海道紋別市は、カニやホタテが人気だったようです。肉・米・カニはどこでも人気がありますね。

生徒:食品もいいですが、最近は日用品の値上げで家計が苦しくなってきたので、トイレットペーパーやティッシュペーパーも魅力ですね。

先生:そうですね。返礼品は地場産品に限るというルールがありますが、日用品を生産している都道府県に注目したいですね。

生徒:そういえば、最近は寄付金に比べて返礼品が少なくなったという評判を聞きます。「2023年10月から値上げ」という自治体が目立ちましたね。

先生:そうです。2023年10月から自治体が負担する経費を寄付金額の5割以下に抑える「5割ルール」が厳しくなりました。ワンストップ特例制度や寄付金受領証の発行に関する費用も含めた費用全体を、寄付金額の5割以下に抑えなければならないことになったのです。結果として返礼品自体に回す額が縮小したということですね。

生徒:東京都に住む私たちは、北海道など地方へふるさと納税することが多いですよね。ふるさと納税で地方自治体へ寄付した金額は、所得税だけでなく東京都の住民税から控除されますよね。結果的に東京都に入るはずだった税金が減ってしまうのではないですか?

先生:そうですね。東京都の行政サービスが低下するかもしれません。ただ、東京23区は、財政が豊かですから、その点はまあ、大丈夫でしょう。

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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