71歳ひとり暮らし女性が孤独死→1カ月後に発見の悲劇…やっておけばよかった「おひとりさま必須の対策」とは【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

おひとりさまの高齢者は決して少なくありません。人との付き合い方もさまざまですが、「気が楽だから」「1人で生きていけるから」と周囲と交流をもたないで過ごしていると、想像もしない最期を迎えるリスクがあります。本記事では『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)から一部抜粋し、「突然死の後、誰にも気づいてもらえない」という悲劇的な例を紹介するとともに、防止するための対策をご紹介します。

着々と「終活」を進めていた、ひとり暮らしの高齢女性

両親を看取ったTさん(71歳、女性)はひとりっ子だったため、今度は自分の身の上を考え始めました。両親の老後を1人で見てきたことからも、その大変さを人一倍感じていました。

その一方で、遺産相続については、自分1人が相続人だったことから、割とスムーズに進めることができました。

とはいえ、親の遺産を引き継いだものの、自分の財産については引き継ぐような兄弟や姉妹もいません。そのため、何かあれば宙に浮いてしまうことがわかっています。

1人になった今、Tさんは終活を始めることにしました。どこから手をつけたらいいのかわからないなりにも、まずは身軽になったほうがいいだろうと感じていました。

まずは、相続した実家。今は自分が住んでいますが、親戚一同が集まることができるくらい広い家です。1人では持て余してしまいます。開放的なのはいいのですが、ドアや窓が多くて防犯上好ましくありません。

そこで、思いきって自宅は売却することにしました。売却に伴い、自宅の中の整理ができたのでスッキリした気がします。次に取りかかったのが、通帳を整理することでした。

働いていた時の付き合いで、いらない通帳を含め5冊の通帳を作っていました。それを生活口座のものと何かあった時の積立用とにまとめ、2冊にまで減らしました。不要な通帳がなくなり、また1つ身軽になった気分です。

あとは、両親の墓じまいでした。お寺に納骨堂を購入し、そこに新たに入れてもらいました。自分も何かあればそこに入ることができるので、気持ちがより一層楽になりました。

自宅を売ったあとのTさんは、公営住宅で部屋を借りて生活しています。固定資産税の支払いがなくなり、自宅のように定期的に家の修理の心配をする必要がなくなりました。これでようやく身軽になったなと感じていました。

まだまだ元気だと思っていたが…まさかの事態に

Tさんは、まだまだ体は元気なので、しばらくは公営住宅でひとり暮らしをする予定にしています。どこか体が不自由になったら、施設に入るなりしようと計画していました。そんなTさんのポストに、ダイレクトメールやチラシといった郵送物がたまり始めました。

まだ公営住宅に入ったばかりで、近所の人もTさんのことをよく知らない人ばかりです。何となく気になるものの、誰が声をかけるわけでもありません。

ポストの入り口からダイレクトメールやチラシがあふれ始めた頃、近くの人が異臭に気づきました。季節は冬だったのですが、これまで嗅いだことがないような臭いがTさんの部屋からしてきたのです。

公営住宅の管理部に連絡をし、部屋を確認してもらいました。その後は警察が公営住宅に来て検視が行われました。

Tさんは誰にも気づかれずに、1人、部屋で亡くなっていたのです。それも死後1カ月が経過したあとの発見でした。

周囲との交流がない…ひとり暮らしの「孤立」は危険

Tさんは自立していて、福祉関係者との接点を持っていませんでした。自立できていたので安心し、見守りなどを頼んでいなかったのです。極めて外部との接触が少ない状況に陥っていたといえます。

見守ってくれる人がいないと、体調の変化や早期の生存確認が期待できません。高齢のひとり暮らしの場合、実は孤立していた、とならないよう対策を講じておくことが重要です。

近所の人などと普段から交流を持っておくと、いざという時に助かるはずです。生存確認をしてくれる人がいないなら、「見守り契約」の利用を検討しましょう。

おひとりさまに心強い「見守り契約」

この「見守り」という言葉、少し前までは福祉的ニュアンスが強く、要介護の方をサポートする意味で使われていました。見守りと言えば、転倒はしていないか、食事は取れているかなど、当初は生活支援が中心でした。

しかし、最近ではもっと広くとらえられるようになっています。定期的な様子伺いも含まれます。今は元気だが将来のためにお互いコミュニケーションを取りながら、健康確認や生存確認を行うことも対象となっているのです。

見守りの方法としては、定期的な電話連絡や面談を行います。それらの活動を通じて、日々の生活に変わりはないか、生活や健康状態について確認します。

今では民間の警備会社、NPOなどさまざまな機関がサービスを提供しています。また、筆者のような士業も依頼者と見守り契約を結ぶことができます。費用やサービス内容については、まさに千差万別です。パンフレットや契約書などでよく確認することが肝要です。

※本記事に登場しているのはすべて架空の人物です。

岡 信太郎

司法書士

※本記事は『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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