ゼレンスキー氏、ウクライナ初のアカデミー賞を称賛 マリウポリの記録映画

ウクライナ南部の港湾都市マリウポリがロシアによって残忍に包囲される様子を記録したドキュメンタリー映画が、ウクライナ映画として初めて米アカデミー賞で受賞したことを受け、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が11日、この作品を称賛した。

10日夜に米ロサンゼルスで授賞式があったアカデミー賞では、「実録 マリウポリの20日間」が長編ドキュメンタリー映画賞を受けた。この作品は、街が破壊される最中のマリウポリ住民の苦しみを、貴重な証言で記録している。

ゼレンスキー氏はこの映画を、「ロシアのテロリズムの真実を示す」ものだと

大統領は「マリウポリの恐怖を、決して忘れてはならない。人道にもとるロシアの侵略がこの国の国民に何をもたらしたか、世界全体が見て、記憶しなくてはならない」と書き、「遅れや寸断のない国際支援がなぜウクライナに不可欠なのか、このドキュメンタリーが思い出させてくれる」と指摘した。

「ロシアの悪は止まらないし、平和を求めない。マリウポリやブチャをはじめロシアの占領下で苦しんだ他のウクライナの街と同じ運命を、ロシアは自分たちがたどりつくすべての街に遭わせようとしている」とも、ゼレンスキー氏は書いた。

ムスティスラフ・チェルノフ監督は授賞式のスピーチで、ウクライナ人初の受賞者となって「光栄だ」と喜び、「この映画を作らなければ良かったなどと、この壇上で言う監督は、おそらく私が初めてだろう」と述べた。

また、「この賞と引き換えに、ロシアがウクライナを攻撃せず、私たちの都市を占領することもなくせればいいのだが」と発言。ロシアは「私の同胞のウクライナ人を何万人も」殺してきたと付け加えた。

チェルノフ氏はさらに、「歴史が正確に記録され、真実が語られ、マリウポリの人々や命をささげた人々が決して忘れ去られることがないように」しようと呼びかけた。

そして、「映画は記憶を形成し、記憶は歴史を形成する」と強調した。

チェルノフ氏は受賞スピーチを、「Slava Ukraini!」(ウクライナに栄光あれ!)の言葉で締めくくった。昔から使われてきたこのかけ声は、現在、国内と世界各地で何百万人ものウクライナ人が繰り返している。

キーウで取材するBBCのジェイムズ・ウォーターハウス記者は、ウクライナでも「実録 マリウポリの20日間」の受賞が祝福されていると伝えた。大勢がソーシャルメディアで喜び、「歴史的勝利」だと伝えるニュースチャンネルもあるという。

ジャーナリスト3人からなるチェルノフ氏のチームは、2022年2月にウクライナへの本格侵攻が始まってからの数カ月間に、ロシア軍がマリウポリを徐々に包囲していく様子を記録した。

チームは命がけで撮影した後、撮影した素材を車のシートの下に隠した。ロシアの検問を何度もくぐり抜け、どうにかマリウポリを脱出した。

アゾフ海に面するマリウポリは、数カ月にわたる激戦の末、ロシア軍がほぼ破壊し尽くした。

ロシアは2022年5月後半に同市を掌握したことを「解放」と表現している。

(英語記事 Oscars 2024: Zelensky hails Ukraine's first-ever Oscar victory

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