【専門家提言】あなたの街は大丈夫?東京都が公表“地震危険度”ランキング 「首都直下型地震」で注意すべき2大被害とは?防災のプロに聞く「“住居別”命を守る備え」【東日本大震災から13年】

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13年前の3月11日に発生した「東日本大震災」は、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらしました。これまでに震災で亡くなった人は1万5900人。未だに2520人の方が行方不明となっています。今年に入って、元日の能登半島地震、さらに、千葉県で地震が頻発するなど大地震への備えが必要不可欠になっています。我々は、東日本大震災の教訓をどう生かすべきなのか、最新の被害想定と防災対策とは?防災・危機管理アドバイザー山村武彦氏が解説します。

想定死者数約2万3000人…マグニチュード7.3の「都心南部直下地震」

30年以内に70%の確率で起こると言われている首都直下地震。内閣府は、想定マグニチュード7.3の「都心南部直下地震」の首都圏の最大被害想定を2013年に出しています。それによると、震度7を観測するのが江東区や江戸川区、震度6以上を東京23区全域で観測するとされています。想定死者数は約2万3000人、これは阪神淡路大震災の約3.6倍となっています。ただ、このデーターには近年の耐震性能が反映されていないということで、2025年の春に“改定計画書”を発表予定だということです。

Q.恐ろしい数字ですね。

(防災・危機管理アドバイザー山村武彦氏)

「10年ぶりに見直しをするので、耐震化率なども進んでいるので、来年の春に発表された時点では、多少被害状況が変わってくると思います」

都が “地震危険度”地域ランキング発表 専門家警鐘“火災旋風”の恐ろしさ

首都直下地震の注意すべき2大被害は、「同時多発火災」と「液状化現象」です。想定される東京都内の建物被害19万棟の内11万棟が火災によるものです。地図で赤く示したところが火災による被害が大きいとされています。道路の幅や建物の倒壊など障害物があって鎮火が遅れ、強風や火災旋風で広域延焼の怖れがあるということです。

Q.火災旋風は恐ろしいと聞きますね。

(山村氏)

「関東大震災のときもこの火災旋風で多くの方が犠牲になっています。火災旋風というのは、酸欠で窒息死してしまうんです。それくらいの激しい火災です」

液状化現象は、地表付近の水を多く含んだ砂が振動によって液体のようになり構造物が浮いたり沈んだりする現象のことです。考えられる被害としては、道路の陥没や建物が傾く、埋まっている配管などにダメージを与え、ライフラインに影響を及ぼすということです。

都内の停電率想定は平均で約12%です。想定で最も停電率が高いのは墨田区で40%以上。さらに広範囲で計画停電の可能性もあるそうです。都の想定としては発電所が停止すれば復旧再開まで1か月ほどかかる可能性もあるといいます。山村氏によると(夏場だと)「停電により空調が利用できず、熱中症や脱水症状になる可能性」があり「震災関連死が増加する」ということです。

Q.夏でも冬でも怖いですね。

(山村氏)

「断水停電という、生活必需品のインフラが長期に途絶える可能性が高いのです。特に東京東部は地盤が悪いので、配管が壊れやすい、電柱が倒れやすいということがあります」

都の想定では、断水は都内平均で26%になるといいます。最も断水率が高いのが葛飾区で約60%以上となってきます。浄水施設などが被災した場合、断水が長期化する恐れがあるということです。山村氏によると「火災発生時に断水により消火が遅れる」。また、避難生活で「水を飲むのを控えて脱水症状の懸念も」あるといいます。

東京都が火災や地盤などの観点から判断した“地震危険度”ランキングがあります。1位が荒川区・荒川6丁目、2位も荒川区・町屋4丁目となっています。山村氏によると「一歩横に曲がると行き止まりになっていたり、狭い路地が多い。非常に狭いところは、手を伸ばせば届くような幅で、消防車も入れないし、消火活動も厳しい状況にあると思う。また、耐震基準以前の建物が多く倒壊しやすい。その上、この荒川区というのは、東京の東部に位置し、荒川と隅田川が流れているので、地盤的には地震の揺れが増幅しやすい、揺れやすい場所」だということです。

Q.こういう場所ではどういった対策が行われているのでしょう?

(山村氏)

「この町の人たちは、自分たちで初期消火を徹底しようということで、消化器の本数を増やしたり、訓練も一生懸命やっています」

東京都は「燃えない」「倒れない」まちづくりを目指しています。例えば北区・十条駅の周辺地域など、木造家屋密集地域の中で特に改善を図るべきエリアとして、都内で52カ所を「不燃化特区」に指定されています。ここでは、消防活動のための道路の拡幅整備や震災時にオープンスペースとなる公園の整備などを行っています。山村氏によりますと、「市街地の『不燃化特区』の中で改善できたのは現在54%、目標は70%。不燃化特区以外の地域でもどう対策するかが課題」となっているということです。

(山村氏)

「東京都は石原知事のときに『向こう三軒両隣で防災隣組を作るべきだ』という私の提言を入れて、『東京防災隣組制度』というのも作って、いざという時は、お互いに助け合おうという形で進めています」

木造家屋、マンション…専門家に聞く「“住居別”命の守り方」

木造家屋の多い「木密地域」で耐震性のない2階建て住宅の場合、まず地震発生時は2階の場合は机の下などで身の安全を確保し、揺れが収まってから速やかに屋外避難をしてください。1階は、旧耐震基準の場合、倒壊の可能性が非常に高いという事で、緊急地震速報など揺れる前に行動可能であれば屋外避難するべきだということです。

(山村氏)

「2階建ての1階が潰れると、(机の下に入っても)机も一緒に潰れてしまう可能性があります。耐震性が高い建物だったら慌てて屋外に出る必要はないと思いますが、とりあえずは命の通り道、避難経路を開ける。ドアを開けることが大事だと思います」

山村氏は「木密地域の場合、屋外も危険が多いので避難できる安全な場所(公園など)を確保する必要」があるといいます。また、「減災を考えると初期消火も重要、消火器の設置、住民の『共助』など」も大切だということです。

山村氏は、「高層階では、揺れ対策や初期行動が極めて重要。さらに、エレベーター閉じ込め“高層孤立”の対策を」と話します。首都直下地震ではエレベーターの停止が約3万100基、閉じ込めが最大約1万7000人、南海トラフ地震では、停止が4万1900基、閉じ込めが最大約2万3000人と想定されています。「エレベーターで揺れを感じた場合すぐに近い階から全ての階のボタンを押す」「非常時ボタン、インターフォンなどで連絡、救助を待つ」「ホイッスルなどや硬いものなどで音を出す」ことが大事だといいます。一方、「大声」は体力を消耗するので注意。さらに、「扉を強くたたく、無理に開ける」といった行為はエレベーター故障のおそれがあります。

東京都では人口約1400万人のうち約900万人がマンションに住んでいるということで、マンション防災が課題となっています。2023年5月、都は地域防災計画を修正して高層マンションについて「非常用電源の確保」「耐震エレベーターへの更新」などを記述。初めて「在宅避難」の考え方が明記されました。東京都内の多くの自治体では、「自宅が安全なら在宅非難を!」と呼びかけています。なぜかというと、「耐震基準を満たしたマンションは、倒壊の怖れが少ない」「都内の避難所の収容人数が約320万人」ということで、収容能力に限界があるためです。

山村氏によると「自治体の備蓄品は基本的に避難所の人が対象。マンション居住者は原則「在宅避難」だから“備え”が必要」だということです。

(山村氏)

「停電などでエレベーターが止まる可能性が高いですので、そうなると高い所へ運べませんから、水、食料、トイレそういったものの備蓄が大事です」

東京の防災ホームページには、「東京備蓄ナビ」というものがあって、何が必要かを教えてくれます。居住人数、性別、年齢、一戸建てか?マンションか?ペットの有無など情報を入力すると、必要な備蓄品目や数量をリストアップしてくれます。山村氏によると、「少し前までは3日分と言われたが、1週間分の備蓄が理想」だといいます。夫婦2人子ども2人の1週間備蓄は、例えば水76リットル、携帯トイレ140回分などとなっています。

(山村氏)

「トイレも100回分トイレが1つにパッケージされているものは比較的コンパクトになってきています。そういうものを分散して備蓄していく、いっぺんに1か所だけだと大変なんで、そういう工夫も大事だと思います」

(「情報ライブミヤネ屋」2024年3月11日放送)

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