情報BOX:バイデン米政権の25年度予算教書、主な内容

[11日 ロイター] - バイデン米政権は11日、2025会計年度(24年10月―25年9月)の歳入や歳出、経済予測を盛り込んだ総額7兆3000億ドル規模の予算教書を発表した。潜水艦や戦闘機予算が減る一方、治安対策で捜査員増員が盛り込まれたのが特徴だ。

<移民対策>

米国とメキシコの国境を越える不法移民問題は有権者の間で懸念が深まっていることが世論調査で示されているため、移民関連の歳出は増加した。

ホワイトハウスは昨年、国境警備強化のため国境警備隊員や難民審査官、移民裁判所判事の増員を掲げ、136億ドルの緊急支出を繰り返し要請したが実現しなかった。

<国防>

国防・国家安全保障の予算要求額は8950億ドル。わずか1%増にとどめることで野党共和党と昨年合意した経緯があり、ステルスF35戦闘機とバージニア級潜水艦向け予算を減額する内容となった。

一方、改めて歳出を求めたのが国境警備やイスラエル、ウクライナ、台湾、その他の国家安全保障問題。共和党議会指導部が何カ月も阻止している。

このほか、アフガニスタン人向け特別移民ビザ発給の2万人増や、人工知能(AI)の安全利用を支援する取り組みも盛り込んだ。

<ヘルスケア>

厚生省予算は1.7%増の1370億ドルを要求した。65歳以上を対象とする高齢者向け公的医療保険メディケアでバイデン政権が実現した医療給付を、国民皆保険を目指すオバマケアを含む一般の医療保険の被保険者にも拡大する。

医療費は11月の大統領選の重要争点の一つとみられており、バイデン政権は看板政策インフレ抑制法(IRA)を活用することで国民福祉が一段と行き渡ることを狙う。具体的には全ての処方薬の自己負担額を年間2000ドルまで、インスリンの自己負担額を月35ドルまでに制限し、薬価の値上げ率を物価上昇の範囲内に抑え込む。

<学生ローンと住宅>

11月の大統領選を控え、多くの家計の足かせとなっている2大費目の教育費と住宅費を減らす新たな予算措置を提案した。新規の住宅建設と既存の公共住宅の修繕に数十億ドルを投入するほか、2年間の住宅ローン減税を実施する。低所得者などを対象にした住宅バウチャーの支給拡大などによりホームレスになりかねない人への緊急支援を実施する。

地域住民向けの2年制高等教育機関コミュニティカレッジに無料で通学できる機会の提供や12週間の有給の家族休暇、4歳児向け就学前教育の無償化などの政策も盛り込んだ。

<犯罪対策>

暴力犯罪抑制とその予防基金に5年間で計12億ドルを割り当てることで、殺人事件の解決や医療用麻薬フェンタニル押収強化のため捜査員を増員するほか、検事や法医学専門家の雇用を支援する。

また、選挙実務を安全に行うため新たに助成金として数十億ドルを支出するほか、司法省の反トラスト法部局の予算で前年比28%増の2億8800万ドルを掲げた。

<食費支援>

農務省の予算は前年の要求額から14億ドル増やした77億ドル。女性や幼児、子供の栄養プログラムが柱。

インフレ抑制法の一環である気候対策関連では、数千人の雇用を含めて60億ドル、農業研究と教育に20%増の3億6500万ドルを要求した。

<宇宙>

航空宇宙局(NASA)予算要求額は253億ドル。前年度にNASAが受け取った金額よりも50億程度ドル多い。宇宙防衛関連では、宇宙軍への294億ドルを含めて計337億ドルを要求した。

<経済予測>

米経済は、景気後退を回避しながらインフレを抑制する「ソフトランディング(軟着陸)」を実現しつつあるという一段と楽観的な展望を示した。24年の経済成長率(実質国内総生産の成長率)予想は1.7%、25年は1.8%。30年までに2.2%に伸び率が拡大すると見込んだ。消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は、24年が2.9%、25年に2.3%と予測した。

失業率は4%を念頭に置いたものの、今後10年間で3.8%に低下して完全雇用の状態が見込まれるという。

こうした経済予測は昨年11月に設定された。政府関係者によると、足元の状況で予測すれば数値はより楽観的なものになるという。

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