中国の大学、血栓が識別できるナノ薬剤送達マシンを開発

中国の大学、血栓が識別できるナノ薬剤送達マシンを開発

10日、スマートDNAナノマシンのサンプル。(南京=新華社配信)

 【新華社南京3月12日】中国江蘇省南京市にある南京郵電大学はこのほど、同大の科学研究チームが血管内で自動的に血栓を見つけて正確に薬剤を送達できるスマートDNAナノマシンを開発したと発表した。関連する研究論文はこのほど、国際学術誌「ネイチャー・マテリアルズ」オンライン版に掲載された。心筋梗塞や脳卒中などの治療に新たな解決策を提供することが期待されている。

 論文の共同責任著者の一人、同大の汪聯輝(おう・れんき)教授によると、血栓は心筋梗塞や脳卒中などの急性疾患を引き起こす元凶であり、臨床では通常、血栓溶解薬による治療を行う。この薬は人の体内のタンパク質分解酵素プラスミンを活性化し、プラスミンは血栓の主成分フィブリンを溶解させる働きを持つ。

 汪氏は「血栓溶解薬の不適切な使用は危険を招きかねない」と指摘。人体の血管が傷つくと、フィブリンが血液を凝固させて傷口を修復するが、薬が不適切に投与されると、過剰なプラスミンがこれらの正常な部位のフィブリンも無差別に溶解させてしまい、血液凝固機能の異常を引き起こすのだと述べた。

中国の大学、血栓が識別できるナノ薬剤送達マシンを開発

スマートDNAナノマシンの製造原理とマシンが血栓を自動的に識別する論理的判断プロセスを示す模式図。(南京=新華社配信)

 薬剤の作用を血栓に限定して発揮させる方法はないか。論文の共同責任著者の一人、同大の晁潔(ちょう・けつ)教授によると、チームは7年近くを費やし、血管内で血栓を自動的に識別できるナノ薬剤送達マシンを設計したという。

 研究者たちはまず、DNA折り紙技術を利用して長さ90ナノメートル、幅60ナノメートルの長方形を作り、次にその長方形上に血栓溶解薬分子を置いた。さらに、DNAの三重鎖構造を利用して、長方形を丸めてナノチューブにし、薬剤を保護する一種のドアコントロールスイッチを設計した。

 晁氏によると「ドアコントロールスイッチはナノマシンの核心に当たる」という。このドアコントロールスイッチにはトロンビン(血液凝固の中心的役割を担う酵素)のアプタマー(aptamer、特定の物質と特異的に結合する核酸分子)が備え付けられており、トロンビンを自動的に追跡することができる。トロンビンの濃度は血栓付近では高く、傷口周辺では低いため、ナノマシンは濃度に基づいて、マシンの現在位置が血栓なのか傷口なのかを判断でき、濃度が高ければナノチューブを開いて血栓溶解薬を放出する。

中国の大学、血栓が識別できるナノ薬剤送達マシンを開発

汪聯輝(おう・れんき)氏(左から5人目)、晁傑(ちょう・けつ)氏(左から4人目)、高宇(こう・う)氏(右から4人目)ら研究チームの集合写真。(資料写真、南京=新華社配信)

 論文の共同執筆者の一人、同大の高宇(こう・う)副教授授によると、小動物モデル実験の結果では、従来の薬物投与法と比較して、脳卒中や肺血栓塞栓症におけるナノマシンの血栓溶解効率がそれぞれ3.7倍と2.1倍高まることを示し、凝血機能の異常の発生率も大幅に低下したという。

 汪氏は、DNAナノマシンは人体の塩基で構成されており、人の体内で分解および代謝でき、生体適合性に優れていると指摘した。(記者/陳席元)

中国の大学、血栓が識別できるナノ薬剤送達マシンを開発

原子間力顕微鏡(AFM、画面奥)を使用してサンプルのDNA構造を分析する方法を学生に指導する汪聯輝(おう・れんき)氏(マウス操作中の人物)、晁傑(ちょう・けつ)氏(後列に立っている女性)、高宇(こう・う)氏(左端) 。(資料写真、南京=新華社配信)

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