【連載コラム】第55回:2024年シーズンのサイ・ヤング賞候補たち ドジャース・山本由伸はナ・リーグ4番手

写真:山本由伸はサイ・ヤング賞争いに加われるか ©Getty Images

日本時間3月20日に韓国・ソウルで行われるドジャース対パドレスの開幕戦まであと1週間となりました。先週の新人王に続き、今週は両リーグのサイ・ヤング賞争いの行方を展望していこうと思います。

まずはア・リーグから。アメリカのブックメーカーで紹介されているオッズを見ると、昨季自身初のサイ・ヤング賞を満票で受賞したゲリット・コール(ヤンキース)が最有力候補となっています。しかし、日本時間3月12日に「コールが右ひじのMRI検査を受ける予定である」というニュースが飛び込んできました。現時点ではコールの右ひじについて、詳しい状況は不明ですが、コールが長期離脱するような事態になれば、ヤンキースにとって大きな痛手であるのはもちろん、サイ・ヤング賞争いにも大きな影響を与えることになるでしょう。

コールに次ぐ「第2グループ」を形成するのは、ケビン・ゴーズマン(ブルージェイズ)、コービン・バーンズ(オリオールズ)、フランバー・バルデス(アストロズ)、ルイス・カスティーヨ(マリナーズ)、パブロ・ロペス(ツインズ)といった顔ぶれ。ゴーズマンは昨季最多奪三振のタイトルを獲得してサイ・ヤング賞投票で3位にランクインしました。また、バーンズは2021年にナ・リーグのサイ・ヤング賞を受賞した経験があります。いずれも有力なサイ・ヤング賞候補と言えるでしょう。さらに、昨年8月と9月にそれぞれ月間MVPを受賞したコール・ラガンズ(ロイヤルズ)とタリック・スクーバル(タイガース)を推す声もあります。彼らが本格的なブレイクを遂げれば、一気にサイ・ヤング賞争いに加わってくるかもしれません。

ナ・リーグは昨季最多勝と最多奪三振の二冠に輝いたスペンサー・ストライダー(ブレーブス)が本命です。オープン戦でもここまで4試合に先発して14イニングを投げ、3勝0敗、防御率0.00、22奪三振、WHIP0.93と絶好調。昨季は防御率が3点台後半だったため、サイ・ヤング賞投票では4位にとどまりましたが、投球内容自体はトップクラスでした。昨季はツキに恵まれなかった部分もあり、今季はさらに数字を伸ばし、圧倒的な成績を残す可能性も秘めています。

アメリカのブックメーカーのオッズでは、ザック・ウィーラー(フィリーズ)とローガン・ウェブ(ジャイアンツ)がストライダーの対抗馬という位置づけで、山本由伸(ドジャース)は4番手という評価が多くなっています。データサイト「ファングラフス」は今季の山本の成績を14勝8敗、防御率3.80、194奪三振と予想。日本での通算防御率が1.82、昨季は1.21をマークしていることを考えると、防御率3点台後半というのはなかなかシビアな予想と言えますが、この予想を裏切って2点台の防御率を記録するような展開になれば、サイ・ヤング賞争いに加わる可能性もあります。ただし、中5日以上での登板が続くことが予想され、仕事量の面では他球団のエースに差をつけられることになりそうです。

日本人投手では、ダルビッシュ有(2013年と2020年)と前田健太(2020年)の2位が最高。まだ日本人のサイ・ヤング賞受賞者は現れていません。日本球界で史上最多タイとなる3度の沢村賞に輝いた山本は、MLBの舞台でも投手の頂点に立つことができるのか注目です。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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