「母になったからこそ、今やりたい」ママ演奏家トリオが出張コンサート コロナ禍明け活動再開

ママ演奏家3人の「ヴォルーナトリオ」

特集は母親たちの音色です。長野市で子育て中の女性演奏家3人が幼稚園などへの出張コンサートを始めました。コロナ禍で減った子どもたちが音楽に触れる機会を増やそうと奮闘しています。

クラシックの名曲に子どもたちが好きな童謡も。長野市の幼稚園で開かれた出張コンサートです。

演奏するのは、バイオリンの宮下朱里さん(39)、ピアノの小林亜矢さん(38)、チェロの塚尾桃子さん(36)の3人。

名前は「ヴォルーナトリオ」。3人とも子育て中の「ママ演奏家」です。

ヴォルーナトリオ・宮下朱里さん:
「みんな母親になったからこそ『今やりたい』っていう気持ちがあって。音楽を楽しいと思う気持ちを自分の子どもだけとか、(教室の)生徒だけじゃなくて、もっと広くのお子さまにというのが3人の中に湧いていて、タイミングがガチっと合った」

左から小林さん、宮下さん、塚尾さん

3歳から楽器を始めた宮下さんと小林さん。やがて中学校で同級生同士になります。
都内の大学で学んだあと、長野に戻りそれぞれ教室を開きました。

その後、イベントで久しぶりに会い、意気投合。2012年、「デュオ」を結成。企業のパーティーなどで演奏を披露した他、親子向けのコンサートも開いてきました。

小林亜矢さん:
「お母さん方から、子連れだと、音楽を聴ける場所がなかなか長野だと(ないと)。需要が結構あったみたいで、たくさん集まって楽しんでいただいた」

活動は順調でしたが予期せぬ出来事が。新型コロナウイルスの感染拡大で、活動休止を余儀なくされたのです。

宮下朱里さん:
「お子さんが集まって一緒に歌ったり、声を出して楽しんでねというコンサートだったので、これはできないなと思って、やむなく中断したんですけど」

3人で音合わせ(2月20日)

2人はコロナの5類移行などを受け、活動再開を決意。

チェロ・塚尾桃子さん:
「ちょっとかわいくいきたいね」

バイオリン・宮下朱里さん:
「ピチカートあまり目立たないね」

新たに宮下さんの友人で市内でチェロ教室を開いている塚尾さんが加わって「トリオ」になりました。

チェロ・塚尾桃子さん:
「生でしか伝わらない呼吸とか空気とか振動とかを感じてもらって、そこから得られるものはそれぞれですけど、心豊かに育っていってほしいなと」

塚尾さんの自宅

3人とも、現在、子育て中。宮下さんと小林さんは男の子1人、塚尾さんは3人きょうだいの母親です。

コロナ禍に出産・育児を経験した3人。子どもたちが音楽に触れる機会が減ったことを実感していました。

小林亜矢さん:
「私たちの活動自体もそうですし、世の中的にコンサートに限らずお出かけとかがどんどん縮小されていたので」

もう一つ、実感したのが子連れで出かけることのハードルの高さ。

宮下朱里さん:
「やっぱり荷物が多くなりますよね、こどものオムツだ着替えだ。出かけるといっても『わっせわっせ』という感じに」

左から宮下さん、塚尾さん、小林さん

そこで、「トリオ」は「出張コンサート」に力を入れることにしました。

宮下朱里さん:
「今回チェロも加えて、こっちから出向いちゃおうと思って」

2023年10月ごろから育児や教室のレッスンの合間を縫って、練習を重ねてきました。

子どもたちはー。

塚尾さんの長女・すずさん(小1):
「(お母さん頑張っているのはどう?)たのしそう。(一緒に)やりたい」

小林さんの長男・一颯さん(小1):
「楽器をひいているところがかっこいい。たのしくがんばってほしい」

左からバイオリン・宮下さん、ピアノ・小林さん、チェロ・塚尾さん

ピアノ・小林亜矢さん:
「おはようございます」
「ピアノの位置移動できますか」

この日は、市内の幼稚園に「出張」。

チェロ・塚尾桃子さん:
「距離がいつもより近いので、生の音をダイレクトに受け取ってもらえるかなと」

年少さんから年長さんおよそ30人が集まりました。

チェロ・塚尾桃子さん:
「和光幼稚園のみなさん、こんにちは」

華やかなドレスに身を包んだ3人が登場。コンサートのスタートです。

バイオリンの宮下さん

紙芝居:
「森の動物たちのお話。病気のリスさんを助けよう」

園児たちが楽しめるようオリジナルの紙芝居と共にクラシックの名曲を披露します。

♪花のワルツ/チャイコフスキー

♪ハンガリー舞曲第5番/ブラームス

園児:
「はやっ!」

♪四季より“春”/ヴィヴァルディ

楽器を紹介

楽器を紹介するコーナー。

チェロ・塚尾さん:
「音を出してみるから床を触ってみてください」

園児:
「ひびいてる、床に響いてる」

チェロ・塚尾さん:
「耳だけじゃなくて体いっぱいに音楽を感じてくれたらうれしいです」

ピアノの小林亜矢さん

最後は園児に歌ってもらいます。

♪「さんぽ」

年長:
「たのしかった。おとがよかった」
「迫力がすごかった」
「(楽器やってみたい楽器は?)ピアノ」

チェロの塚尾桃子さん

保護者はー。

母親:
「生の演奏を間近で見られて感動しました」
「連れていくのも大変ですし、来ていただいて本物の音が体育館全体に響くのはいい体験だなと」

「ヴォルーナトリオ」の出張コンサート

園児にも保護者にも好評だった「ママ演奏家」の出張コンサート。活動を始めた年明けから依頼は既に10件以上舞い込んでいます。

ヴォルーナトリオ・宮下朱里さん:
「音楽が身近に、園児の中にあるものとして、こういうの楽しいなとか、ハラハラするなとか、自然な気持ちを表現できる子になってくれたらいいなと思っているので、またぜひ伺いたい」

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