【フラワーC】前走の距離と着順にツボあり 両方の好データに唯一合致したカニキュル 

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は3月16日(土)に中山競馬場で行われるフラワーCについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった13頭を検討対象とし過去10年のデータを使用する。

重要データ:前走1着の距離短縮馬

3歳の世代限定重賞では距離短縮馬に注目したい。フラワーCにおいては前走が同距離だった馬が【4-3-2-33】で単勝回収率33%、複勝回収率55%。距離延長馬が【4-4-6-61】で単勝回収率26%、複勝回収率49%。距離短縮馬は【2-4-1-21】で単勝回収率307%、複勝回収率146%となっている。日本の競馬はダービーやオークスを頂点として番組が構成されているため、中距離馬のレベルが高くなりやすいことが要因だろう。

また、フラワーCは1800m戦。世代限定戦、特に牝馬のこの距離は短距離馬と中距離馬が入り乱れやすい。そうなるとタフな中山コースということも重なって中距離に適性のある馬が優位だ。距離短縮馬の回収率は20年にアブレイズが12番人気で勝ったため極端に高くなっている点には注意が必要だが、勝率、連対率、複勝率、どれを取っても優秀であることは頭に入れておくべきだ。

もうひとつフラワーCの傾向で挙げておきたいのが前走1着馬が【9-5-4-49】で優秀ということだ。前走1着以外から唯一勝利した馬は21年のホウオウイクセルでフェアリーS2着からの臨戦だった。できればクラスに関わらず前走1着の馬、ないしは重賞級のレースで連対している馬を狙いたい。

今回上位人気が予想されるカンティアーモ、テリオスサラ、ミアネーロは距離短縮、前走1着、どちらにも該当しない。エルフストラックは前走が同距離の1勝クラスで2着。それぞれ少しデータから外れるが及第点。そして今回距離短縮かつ前走1着のデータに該当するのはカニキュルただ1頭だ。

【今回距離短縮となる出走予定馬】
・カニキュル
・ホーエリート

【前走1着の出走予定馬】
・カニキュル
・ヒラボクミニー
・マルコタージュ

前走の敗因:菜の花賞のミアネーロ

ミアネーロは前走菜の花賞5着。前項で紹介した「今回距離短縮」、「前走1着」の好走データ2つには該当していないが、菜の花賞でかなり大きい不利があり、そこはデータだけでなくきちんと考える必要がある。菜の花賞は前半4F46.6秒、後半4F46.8秒で前傾0.2秒のレース。極端なトラックバイアスはなく、本馬を除けば実力通りの決着になったと言えるだろう。

本馬に関しては4コーナーで外を回ったが、鞍上のC.ルメール騎手は直線で進路ができた内を狙った。だが、そのスペースを複数の馬にカットされ、手綱を目一杯ひっぱって減速してしまった。それでも追われるともう一度伸びて上がり最速タイを記録しており、スムーズなら1着の可能性は十分あった。素質は上位の1頭だ。

血統解説:エルフストラック、カニキュル、ミアネーロ

・エルフストラック
日本での牝祖は祖母ウィッチズハット。ブラックタイプを見れば伯父に北海道スプリントC勝ちのハリーズコメットがいる程度でそこまで派手さはない。母スペルオンミーは現役時ダートの短距離でJRA2勝(地方1勝)の準OP馬。本馬の半姉にはルーラーシップ、エピファネイア産駒がいるが2頭ともダート中距離などで2勝している。ダートでの活躍が目立つこともあったのだろう、カリフォルニアクロームをつけた本馬もダートでデビューした。

その後は芝へ転向。現時点では芝に適性が出ていることは意外だが、牝馬かつ若いために柔らかさがあるようだ。とはいえ走りはパワータイプ。操縦性も高く、時計のかかる馬場や中山のようにパワーを求められるコースがベストだろう。前走は馬場が重たくなって時計勝負にならなかったことが好走の要因かもしれず、良馬場となるとどうか。

・カニキュル
日本での牝祖は祖母グレイトフィーヴァー。同馬は競走馬としてラプレヴォワイヤントH(GⅡ・芝12F)で3着の実績がある。遡ればフランスを中心に欧州で長らく活力を見せているファミリーで、日本でもフサイチホウオー、トールポピー、ナサニエル、アヴェンチュラなどがいるアドマイヤサンデーの牝系と源流は同じだ。弥生賞3着のアーデント、京都新聞杯2着のヴェローナシチー、日経新春杯3着のシュペルミエールなどが近いところにいて活力は抜群だ。母シャルールも現役時は芝中距離で4勝し、福島牝馬SとクイーンSで2着の実績がある。本馬も母同様にジワジワとタフな展開を差してくるのが得意だ。

半兄トランキリテ(父ルーラーシップ)はダートで2勝し、その後芝で2勝。成長曲線が後ろにきやすい一族で古馬になってから本格化している。だが、デビュー当初は馬格がなかったトランキリテと違い、本馬はデビュー時から雄大な馬格を持っていることで早期から活躍できている。エピファネイア産駒ということでパワーも十分あって理想的な身体つきだ。タフな展開になりやすい重賞のペースは合いそうで前走からの上積みも期待できる。中山コースはもちろん問題ない。

・ミアネーロ
日本での牝祖は母ミスエーニョ。本馬の3代母Sassy Pantsが優秀で、ミアネーロの祖母Madcap Escapade(父Hennessy)がアッシュランドS(GⅠ・ダート8.5F)勝ち、Dubai Escapade(父Awesome Again)がバレリーナBCS(GⅠ・ダート7F)勝ちと、2頭のGⅠ馬をそれぞれ違う父との間から輩出した。母ミスエーニョも現役時はデビュターントS(GⅠ・AW7F)を勝利している。半姉にはファンタジーS勝ちのミスエルテ(父Frankel)がいて繁殖としても優秀だ。元々アメリカのダートで走れるファミリーだったこともあってパワーは十分。ミスエーニョがスピードタイプだったこともあり日本のスピードタイプの芝種牡馬をつければ芝で走れる馬が出ている。

ただ本馬は父がドゥラメンテということで成長力はあるものの、現時点での完成度はそこまで高くない。確かに前走は不利を受けたことが明確な敗因だが、不利を受けるような進路取りしかできなかったのは本馬の幼さによるものだろう。素質は高いが上位人気するようであれば逆らいたい。

Cアナライズではカニキュルを推奨

今回はカニキュルを推奨する。今年は例年に比べてメンバーレベルがやや落ちている感がある。ミアネーロなど将来的にはOPで走ってきそうな馬もいるが、現時点では本馬の能力の高さと適性を買いたい。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。



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