福岡ソフトバンクホークスはなぜ「Z世代」の心を掴むのか?今年の「ピンクフルデー」では人気美容クリエイター・鹿の間とコラボ

「プロ野球を盛り上げたい」「Z世代をはじめ、あらゆる世代に親しんでほしい」。そんな想いから数々のアニメや人気キャラクターとコラボしてきたプロ野球・福岡ソフトバンクホークス。今年5月に開催する「ピンクフルデー」では、福岡発の人気美容クリエイター・鹿の間とのコラボも実施する。ユニークな施策を打ち続ける同球団の狙いとは?立役者のひとり、福岡ソフトバンクホークスの広報・鳥原早貴さんに伺った。(初出=NESTBOWL

◇**鳥原 早貴さん
福岡ソフトバンクホークス 広報室 広報企画課 課長代行**
鹿児島県生まれ。青山学院大学在学中、陸上部の日本インカレで日本一に輝いた経歴を持つ。2014年4月ソフトバンク株式会社に入社。5年間の法人営業職を経験した後、グループ内FA制度により2019年に福岡ソフトバンクホークスへ。2021年より広報室に異動し、現職に就く。

「アジアで一番」の収益をあげるホークス

――福岡ソフトバンクホークス(以下、ホークス)は、アジアで最も収益を出している球団としても有名です。主な売上構成をお聞かせいただけますか。

主に野球興行に関わるチケットやグッズ、飲食&ホスピタリティーのほか、スポンサー収入や放映権で構成されています。他球団との違いとして特徴的なものに、エンターテインメント施設「BOSS E・ZO FUKUOKA(ボス イーゾ・フクオカ)」の運営があります。2020年にオープンしたこの施設は、絶景アトラクションやチームラボ施設、王貞治ベースボールミュージアムなどのコンテンツを有し、福岡の新名所として福岡PayPayドーム隣に位置しています。

PayPayドーム横の複合エンターテインメント・ゾーン「BOSS E・ZO FUKUOKA(ボス イーゾ フクオカ)」

――球団の収益以外にもさまざまなチャネルを持っているところが他球団にはない強みですね。グッズ販売においても、有名アニメやキャラクターとコラボされています。

そうですね。さまざまなアニメやキャラクターとグッズのコラボや、イベント全体のコラボを行ってきました。例えば昨年は、ホークスの一大イベント「鷹の祭典」で地元の鉄道会社や放送局とのコラボを実施しました。今年は、ホークスを象徴するもうひとつのイベント「ピンクフルデー」で、福岡県出身の人気美容クリエイター・鹿の間さんとコラボし、当日入場者に配布するユニフォームデザインの監修をしていただきました。

会場全体がピンク一色になる 「ピンクフルデー」

試合後の「ピンクの花火セレモニー」

――「ピンクフルデー」とはどんなイベントですか?

もともと「女子高生デー」「タカガール♡デー」として17年間開催してきたイベントを、昨年「ピンクフルデー」に名称変更しました。野球観戦はもちろん、入場者全員に配布する限定ユニフォームで球場がピンクに染まり、当日限定のさまざまな企画で非日常の楽しみ方ができるイベントです。

スタートした2006年当初は、ファンの大半が男性という従来のプロ野球のイメージから脱却し、当時プロ野球に最も縁遠いとされていた女子高生をターゲットにしたイベント「女子高生デー」として、球界で初めて女性来場者全員にユニフォームを配布しました。

2014年に「タカガール♡デー」に名称変更してからは、多い年で女性来場者が70~80%を超えるイベントにまで成長。そして昨年「ピンクフルデー」として生まれ変わり、世代や性別を問わず全員が楽しめる人気イベントとして、ピンク色が満ちる=“球場がピンク一色に満ちる、そして来場した方全員の楽しいが満ちる一日になってほしい“という願いを込めました。

――2023年の「ピンクフルデー」ではどのような催しをしましたか。

昨年は、5月に福岡PayPayドームで2日間実施しました。ピンクフルユニフォームを来場者全員に配布するほか、ピンクリボンバルーンの配布やピンクフル写真館というフォトスポット、ピンクの限定グルメやグッズなど、とにかく来場者の方々が非日常の空間を味わっていただけるような空間を目指しました。試合後のセレモニーではグローバルボーイズグループ・INI(アイエヌアイ)が出演し、花火とパフォーマンスでピンクフルデーを大いに盛り上げてくれました。

――若者層が楽しめるコンテンツやゲストへの反響はどうでしたか?

名称を変更したことで認知の部分に不安はありつつも、イベントのコンセプト自体は変わらないので、そういったメッセージの発信なども通じて期待以上の成果を得ることができました。

フォトスポット「ピンクフル写真館」では選手と写真が撮れるイベントも開催。## Z世代の心を掴むため、鹿の間にオファー

――今年の「ピンクフルデー」の開催内容について教えてください。

今年は5月17日(金)〜19日(日)に、福岡PayPayドームで開催します。福岡で3日間の開催は球団として初の試みで、初日はピンクリボンユニフォームを来場者全員に配布します。これは毎年、ピンクフルデーに選手が着用するユニフォームで、それを楽しみにしているファンの方も多く、今年はそのレプリカを配布することにしました。2〜3日目は、鹿の間さんとのコラボによる限定のピンクフルユニフォームを配布します。

鹿の間さんデザイン監修のピンクフルユニフォーム2024のデザイン「トイロ」

――今回の鹿の間さんとのコラボは、どのような経緯でスタートしたのですか。

「タカガール♡デー」を「ピンクフルデー」に名称変更したことも、すべてはこのイベントを性別や世代を問わず楽しんでもらえるものに昇華させたいという想いからです。その一方で、私たちにとって優先度が高いターゲットというのは変わらずZ世代ですから、イベントの象徴となるユニフォームをZ世代に興味を持ってもらえるものにしたいと考えたのが始まりです。そして、数多くいるインフルエンサーの中でも地元・福岡の出身で活躍する鹿の間さんだったら、ホークスとZ世代との架け橋になってもらえるのではないかと、オファーしました。

――どのように制作されたのか、とても興味深いです。

私たちだったらまず野球のユニフォームとして考えるところを、鹿の間さんは「ファッションとしてこのユニフォームをどう着るか」という視点でお話されていたのがとても新鮮でした。例えば、ピンクだけじゃなくてブルーやイエローも使うなど。そういう視点は私たちにはなかったので、コラボならではの発想だなと感じます。

鹿の間さんの制作風景## 「ガンダム」や「ちいかわ」コラボでシナジーが生まれた

――これまでもたくさんのコラボをしていますが、どんなものが印象的でしたか?

昨年の「鷹の祭典」で実施した「実物大ν(ニュー)ガンダム立像」とのコラボはとても印象に残っています。私がかなりのガンダムファンということもあるのですが(笑)。昨年4月にオープンしたららぽーと福岡に「実物大ν(ニュー)ガンダム立像」ができたこともあり、「鷹の祭典」とのコラボが実現しました。

このコラボでは、ガンダム立像を「鷹の祭典」仕様に装飾したり、アムロ・レイ役の古谷徹さんにナレーションをしていただいた映像を放映したり、ファンにはたまらない内容になりました。イベント当日のセレモニアルピッチには古谷さんにもご登場いただき、開催前の話題づくりからイベント当日まで、とても良い流れを実現できた事例になりました。

――双方のファンにとってたまらない、とても面白い取り組みですね。

一見、野球とつながりのないコンテンツとコラボすることで、面白いシナジーが生まれるので、これは今後も取り組んでいきたいことのひとつです。ほかにも昨年は人気キャラクター・「ちいかわ」とのコラボイベントも行いました。グッズやグルメ販売のほか、球場には「ちいかわ」の着ぐるみも登場し、ファンの方に喜んでいただきました。

「野球を盛り上げたい」の一心でチャレンジ

福岡ソフトバンクホークス 広報室 広報企画課 課長代行 鳥原早貴さん

――鳥原さんが今後コラボしたいと思っているものはありますか?

あくまで個人的な考えですが、意外に球団同士のコラボというのはあまりないので、あえて他球団とのコラボもやってみたいなと思います。各球団にいる九州出身の選手とホークス選手がコラボして、その地元が盛り上がるようなグッズをつくったりしたら、地域活性化にもつながって面白いと思いました。

ほかにもジャンルの垣根を超えて、ほかのスポーツチームとコラボするのも面白そうです。昨年はJリーグチームのアビスパ福岡とコラボをしたのですが、双方のファン同士が垣根を超えて楽しめるきっかけづくりができたと感じています。

――これからもたくさんのアイデアが出てきそうで楽しみです。最後にメッセージをお願いします。

私自身、入社するまではあまり野球を見てこなかった人生でした。でもホークスを通して、野球というスポーツの魅力を深く知ることができました。だから、今は野球に興味がない人たちも「ピンクフルデー」や鹿の間さんとのコラボをきっかけに、野球を少しでも好きになってくれたらうれしいです。

「ピンクフルデー」は野球観戦だけでなくイベントとして楽しめるコンテンツが盛りだくさんなので、ぜひ一度参加してみてください!

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