政倫審 安倍派4人の嘘と矛盾を徹底検証! 萩生田も含め証人喚問は絶対必要だが、マスコミ報道は大谷の結婚一色

衆議院TVインターネット審議中継より

昨日3月1日、衆院政治倫理審査会に注目されていた西村康稔・前経済産業相、松野博一・前官房長官、塩谷立・元文科相、高木毅・前自民党国対委員長の「安倍派4人衆」が出席した。だが、誰もが想定したとおり、4人は裏金づくりについて「関与していない」と真っ向から否定し、責任逃れの厚顔無恥ぶりを発揮した。

ご存知のとおり、政倫審の開催をめぐっては、野党は裏金のキックバックを受けていた自民党衆院議員51人全員の出席を求めていたが、自民党執行部はそれには応じず「派閥の事務総長経験者」縛りで押し通した上、完全非公開にしろとまで主張。野党が呼んでもいなかった岸田文雄首相が出席を決めたことで中継入りでの公開となったが、岸田自民党がいかに「統治不全」の学級崩壊状態に陥っているかがあらわとなった。

無論、この期に及んでもすったもんだが繰り広げられた元凶は、安倍派の幹部連中が傲岸不遜な態度を取りつづけていることにある。実際、昨日の政倫審では、裏金事件の核心を問われると、安倍派4人衆の面々は「承知していない」「知らない」を連発。たった5年間のあいだに総額6.7億円もの裏金をつくり出すという背信行為の責任など、微塵も感じていない様子だった。

さらに、政治倫理を審査する場であるというのに、連中が性懲りもなく「口裏合わせ」してきたと感じさせる場面もあった。それは、2022年に当時会長だった安倍晋三・元首相が裏金キックバックの廃止を主張したとされる経緯をめぐる説明だ。

たとえば西村氏は、2022年4月上旬に安倍氏、当時会長代理だった塩谷氏、下村博文氏、世耕弘成氏、安倍派の会計責任者で立件された松本淳一郎事務局長が集まり、その場で安倍氏が現金でのキックバックは「不透明で疑念が生じかねない」と主張、「現金での還付をやめる」と指示したと説明。塩谷氏も「(安倍氏は)透明性を高めるために現金はやめたほうがいいという考えだったと思う」と説明をおこなった。

だが、この説明はあまりに不自然だ。安倍派ではパーティ券のノルマ超過分を現金でキックバックしていたわけだが、これ自体は派閥から議員の政治団体への寄付というかたちで政治資金収支報告書に記載していれば法的に問題はない。つまり、現金でのキックバックではなく、収支報告書への不記載が違法であり、問題なのだ。しかも、このとき安倍氏のもとで決定したのは「現金でのキックバック」ではなく「キックバックの廃止」であり、辻褄が合わない。

ところが、塩谷氏は「不記載の話は出ていない」「現金での還付は不透明ということだった。それ以上の記憶はない」と強弁。西村氏も「違法性について議論や認識していたことはない」と言い張った。ようするに、西村氏と塩谷氏は、自分たちが「違法性があるとは認識していなかった」と主張するためには、安倍氏が問題にしたのは「収支報告書への不記載」ではなく「現金でのキックバック」だったと言い張るしか道がないため、口裏を合わせてきたのだろう。

⚫︎キックバック復活の経緯説明で露呈した「違法性認識」のゴマカシ

自己保身のために辻褄の合わない詭弁を繰り返す……。あまりに政治倫理が欠如しているとしか言いようもないが、しかし、今回の安倍派4人衆の説明では、大きな矛盾や食い違いが露呈した。

それは、裏金事件の大きな焦点のひとつである、キックバックの復活の経緯をめぐる説明でのことだ。

西村氏や塩谷氏の説明によると、2022年7月の安倍氏の死去後、安倍派内からは裏金キックバックの継続を求める声が出たことから、同年8月上旬に塩谷氏の事務所で塩谷氏、西村氏、下村氏、世耕氏、松本氏の5人が集まって協議を実施したという。

前述したように、西村氏は「(派閥からの)還付が適法とか違法とか法的性格は議論していない」という主張を繰り広げたが、一方、質問に立った立憲民主党の枝野幸男・前代表は、この協議に出席していた下村氏の発言をもとに切り込んだ。

というのも、下村氏は1月末に開いた会見において、8月上旬の協議では出席者のひとりから「個人のパーティに(キックバック分を)上乗せして、収支報告書で合法的なかたちで出すという案」が出されたと口にしていた。この案は虚偽記載にほかならず合法的でもなんでもないのだが、枝野氏は、じつは西村氏は安倍派で唯一、このかたちで裏金を処理していたため、下村氏が言っていた案を出した人物は西村氏ではないのか、と追及したのだ。

この追及に対し、西村氏は「アイデアのひとつとして、今後議員が開くパーティ券を清和会が購入するということはどうかという代替案が出た」「私自身も『検討できるのではないか』と発言した。この方策が実際に採用されたわけではない」と述べ、自分は発案者ではないと否定。状況証拠を考えると西村氏が発案者だと考えるのが妥当だが、問題なのは、下村氏が「合法的なかたちで出す案」と口にしていた点だ。8月の協議の時点で「合法的な案」が検討されていたということは、違法性を認識していたということにほかならないからだ。西村氏や下村氏、塩谷氏、世耕氏らが「違法性を認識していなかった」とは、到底考えられない。

政倫審でますます深まった、安倍派幹部らの「違法性の認識」をめぐる問題。しかし、今回の政倫審だけでは全容解明にはまったくいたらず、さらなる追及が必要であることがはっきりとした。

実際、肝心のキックバック復活を誰がいつ決めたのかについて、当事者たちはいずれも有耶無耶な説明に終始。西村氏は8月上旬の協議では「結論は出なかった」とし、自身が事務総長の座を離れた同年8月10日以降に決定したことであり自分は経緯を何も知らない、と主張。他方、塩谷氏は8月におこなった会合において「継続でしょうがないかなというぐらいの話し合いで継続になったと理解している」と発言。8月25日に西村氏から事務総長を引き継いだ高木氏は「11月に派閥の事務方から『やっぱり返すことになった』という話があった」とし、「執行部的な方々で決め、そのうち、そういったみなさま方で元に戻したように思っている」と述べた。

塩谷氏が口にした「継続でしょうがないかな」と決まった8月の会合とは、西村氏の言う8月上旬の協議と同じなのか、それとも違うのか。もし同じなのであれば「結論は出なかった」と言う西村氏の証言は嘘になるし、違うのであれば、高木氏が西村氏から交代して事務総長に就任するまでの13日間のあいだに決まったのか、あるいはそれ以降に高木氏も同席したかたちで決まったのか。はっきりしないことばかりが残されたかたちだ。

⚫無反省ぶりが丸わかり発言連発も、マスコミは大谷結婚一色で追及尻すぼみ

いや、有耶無耶な説明に終始したばかりではなく、安倍派4人衆の連中は政倫審という場、さらには国民を舐めているとしか思えない発言も連発。たとえば、西村氏は「秘書に指示していたので(パー券ノルマが)いくらかは具体的に意識したことはなかった」「(裏金は)秘書が判断して処理していた」などと「秘書ガー」を連呼。また、「派閥の経理・会計には一切関与していない」とシラを切った松野氏は「事務総長の役務は監督責任を求められるものではないんじゃないか」とまで言い出す始末だった。

このように、無反省極まりない姿勢を取りつづけた安倍派4人衆。逆に言えば、全容解明のためには、政倫審ではなく偽証罪に問われる証人喚問の実施が必要であることが明確になったと言えるだろう。もちろん、その場には、裏金キックバックのスキームをつくり上げた人物として指摘されている森喜朗・元首相をはじめ、巨額の裏金キックバックを受け取っていた萩生田光一氏、事務総長経験者でありながら自民党が政倫審に出席させなかった下村氏らを出頭させる必要があるのは言うまでもない。

だが、問題はメディアの報道だ。これほどの大事件についての審理がおこなわれたというのに、マスコミは大谷翔平選手の結婚の話題をトップニュースに扱うなど大騒ぎ。リベラル寄りの毎日新聞でさえ「攻め手欠いた野党」などと表現し、1日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日)にいたっては、安倍派4人衆が無責任な態度をとったことよりも、政倫審の裏で予算案強行採決に踏み切った岸田政権に抵抗する立憲など野党を「昭和のやり方」などと批判していた。メディアがこの体たらくだと、岸田自民党は政倫審で裏金事件の幕引きとするのは必至だ。

問題が噴出しても、自民党が開き直ってメディアもそれを看過、なぜか「だらしない野党」などと責任を転嫁する。安倍政権以降、こうした光景が何度繰り返されてきただろう。今度こそ膿を出し切るためにも、世論こそが裏金事件の幕引きを許さず、証人喚問の実施をはじめ全容解明を強く訴えていかなくてはならないだろう。
(編集部)

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