大船渡に再生したチェロの音色響く 札幌の土田英順さん献奏

再生したチェロを手に談笑する土田英順さん(中央)と出井美保さん(右)、山口由香さん

 東日本大震災で弾き手を失ったチェロが、復興した街に柔らかな音色を響かせた。持ち主は津波で犠牲になった岩手県大船渡市の舩渡洋子さん=当時(78)。被災した自宅で見つかった楽器を修復し、11日の市追悼式で札幌市のチェリスト土田英順さん(87)が献奏した。「今もみんなのために音色を奏でているよ、安心してね」。参列した遺族が空に呼びかけた。

 大船渡市大船渡町のみなと公園展望広場で、土田さんがバッハ「G線上のアリア」など3曲を演奏。参列者は13年の歳月を思い返すように目を閉じてじっくりと聞き入り、涙を拭う人もいた。

 チェロは各地で支援コンサートを行っていた土田さんが大船渡を訪れた際、舩渡さんの友人から預かった。舩渡さんは大船渡町の自宅で被災し、チェロもそこで見つかった。中にヘドロが入るなど演奏ができる状態ではなかったが、友人がきれいにし、土田さんが札幌の工房で3週間かけて修理した。

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