“鳥山明が血肉となっている”『青の祓魔師』 神木出雲役・喜多村英梨の演技をたっぷり堪能

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。3月4日から3月10日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

今週はマンガ・アニメファンに留まらず多くの人にとってつらい訃報が続きました。特に40代男の筆者にとって、鳥山明さんの生み出した作品やその系譜にあるものは好き嫌いではなく、自分の中で血肉となって当たり前に存在するものであり、今回の訃報にはただただ呆然とするばかりでした。その当たり前が今後新たに生まれないことに愕然としますが、今はご冥福をお祈りします。

というわけで今回は自分と同じく……というのもものすごくおこがましいですが、「鳥山明が血肉となっている」と書かれていた加藤和恵さんのマンガを原作とする作品からです。

◯神木出雲ちゃんがものすごくがんばった『青の祓魔師』
今週は伏線回収とパワーアップという燃える展開を重ねてきた『勇気爆発バーンブレイバーン』、歌ものとして最高にドラマティックだった『SYNDUALITY Noir』の両オリジナルロボットアニメも文句なしに神回でしたが、一番泣けたのが『青の祓魔師 島根啓明結社篇』(以下、『青エク』)です。今回のシリーズでは麻呂眉でツンデレな神木出雲ちゃんが悪の組織に連れ去られて追い詰められるなか、主人公の奥村燐たちがそれを救い出そうとしていました。

第9話で窮地に陥った出雲が仲間を回想し彼らが好きだったことに気付いたところで、ついに燐が救出に現れた段階で涙腺にきていましたが今回の“よさ”はそのはるか上。同じく捉えられていた出雲の母・玉雲が命がけで娘を救い、立ち直った出雲のもとに殺されたと思われていた使い魔が復活。そして出雲は仲間たちと共闘し、極悪非道の外道院ミハエル(今どき珍しいくらい救いようがない外道な悪役)を撃破します。

と、ここまででAパート。Bパートも出雲がずっと探していた生き別れの妹と再会するも……というつらい話から、心優しい同級生の杜山しえみに対して胸の内を激白するくだり(ここは映像もいい)、そして最後に母の墓前で新たな決意を表明して、と出雲関連でグッとくるシーンばかり。少年マンガ的な美味しさてんこ盛りでした。

それに伴って、出雲役の喜多村英梨さんの迫真の演技がたっぷり堪能できたのも印象的。玉雲役の大原さやかさん、しえみ役の花澤香菜さんとのやり取りは声優の真髄を見せられた思いです(ちなみに前回は「あたしって、ほんとバカ」みたいなことも言ってくれた)。キタエリさん、今期は『道産子ギャルはなまらめんこい』でもヒロインの母役としていい味を出してくれていますが、彼女や近年の小清水亜美さんや能登麻美子さんといい中堅声優の活躍はまた独特のうれしさがあります。

先に挙げた『勇気爆発バーンブレイバーン』や『SYNDUALITY Noir』は今後さらなる盛り上がりもあり得そう……というわけで今週は『青エク』をピックアップしました。アニメは第3期の終盤に入っているため視聴ハードルの高さを感じる人もいるかも知れませんが、少年マンガの定番と何となくでもキャラクターを把握さえしていれば泣けること必至なエピソードです。

◯芸が細かい『魔法少女にあこがれて』

もうひとつは重箱の隅話です。先週、おそらく今期イチのアイドル回として紹介した『魔法少女にあこがれて』第9話。そこで敵対していたロード団のロコムジカ(ロコ)とルベルブルーメ(ルベ)が寝返り主人公たちの仲間に加わるのですが、そのふたりがなぜか禊としてエロ酷い目にあう……というのが今回のお話です(本当に酷いので、そういうのが嫌いじゃない人はぜひ観てほしい)。

それで、この第10話の放送分からこれまで人公たち3人を描写していたエンディング映像やCMが5人揃ったバージョンになりました。エンディング映像が変化するだけなら稀によくあるレベルの演出ですが、それに併せてCMも変更されるのはなかなか珍しい気も。『魔法少女にあこがれて』、やはり侮れない作品です。

(文=はるのおと)

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