立川談志師匠「信用というのは理不尽の連続だ!」立川志の輔、駆け出し時代のエピソードを振り返る

放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。3月3日(日)の放送は、落語家の立川志の輔(たてかわ・しのすけ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。

(左から)小山薫堂、立川志の輔さん、宇賀なつみ

◆談志門下入門は「波乱の人生の始まり」

1954年生まれ、富山県出身の志の輔さん。もともと落語にあまり興味がなかったという志の輔さんが、落語に興味を持つきっかけとなったのは、明治大学入学時のサークル勧誘でした。

落語研究会に入った理由について、「三宅裕司さんが私の2年上なんですけど。立て看板を持った先輩が『あなた新入生? こっちこっち、105号室、こっちに来て』って言われてついて行くと、高座が作ってあって。三宅さんをはじめ、2年先輩の人たちが落語をやっているんです。そうすると、若者たちが100人以上集まっていて、同じところでドーン、ドーンと笑うんですよ。“この人が言うひと言でこの塊が笑うんだ、これが落語か!”と思って、その一瞬で虜になったようなものですね」と振り返ります。

それを聞いた小山から「師匠を(落研に)引っ張って行った人が、落語会の歴史を変えた人じゃないですか(笑)。その方のことはもう覚えていないですよね?」と質問が。その人は志の輔さんの1年先輩だといい「今は新潟で自転車屋の跡取りになっています。毎回、新潟公演で彼と会うと、『俺がお前を引っ張って行ってやったんだぞ』と恩着せがましく言われますね(笑)」と話します。

宇賀が「いつ頃から本格的に落語家を目指そうと思われていたんですか?」と尋ねると、「落語を一生懸命覚えて、若いうちにいっぱい楽しい話を頭の中に入れておこうと素人了見で思いましたけど、プロになろうとは1回も思っていなかったんですよ」と志の輔さん。

大学卒業後、“演劇を勉強してみたい”という思いから劇団に所属し、2年間芝居の勉強に励んでいたものの、たまたま飲み屋で出会った広告会社の人から「うちの会社に来ない?」と誘われたのがきっかけで、広告代理店に勤務することに。

そんな志の輔さんが、師匠である立川談志さんの門を叩いた経緯について、小山が「談志さんのところにはどうやって入門されたんですか? そもそも、取り合ってもらえないイメージがあるんですけど」と聞くと、志の輔さんは「基本的にはうちの師匠は、来るものは拒まず。その代わり、気に入らなければクビだと。そんなのがたくさんいた時代ですけど、私が履歴書を持って行ったら、『ふーん、大学は出たのか。養成所に通って演劇をやってみたけどダメでした。広告をやってみました、会社に入りましたがダメでした。落語でもやってみるかっちゅう気持ちなんだろうけどね。まあ、どっかそこらあたりをウロウロしてろよ』というのが最初の言葉だったんです」と回顧。

これに小山は「そこらあたりをウロウロしていろと言われても、どの辺にいていいのかが……(苦笑)。(それを聞いた)志の輔師匠はどう捉えたんですか?」と反応。

志の輔さんは「入門させてもらえないと困りますから。『帰れ!』と怒鳴られるまで帰るつもりはないので、兄弟子のところに行きまして、『「入門したい」と言ったら「そこらでウロウロしていろ」と言われました』と言ったら、『じゃあ、俺の後ろについて、俺の真似をしながら一つひとつ覚えていけよ』と言う兄弟子がいてくれたので、その人に助けてもらってなんとか過ごしました」と話します。

ところが、それから半年が経たないうちに「(談志師匠が)『俺は落語協会を脱退する』と宣言したんですよ。これから寄席に出るつもりでいたのに、『俺は協会を出るから、お前は寄席には出ない』と。『しゃべるところは自分で探せ。俺がひとりでお前を育てるんだ。文句はねえだろう?』と」と志の輔さんは師匠とのやり取りを明かします。

談志師匠の弟子となってすぐに、この先どうなるのか分からない状況に立たされるも、師匠についていくしかなかったという志の輔さん。そんななか、「(師匠は落語協会を脱退後)落語立川流というものを42年前にこしらえまして。そこの最初の弟子に幸か不幸かなってしまいました。“さて、どうなるものか”と思っていたら(師匠から)『お前は俺の実験第一号ということだよな。何でもいいからやってこい!』と言われて。そこから私のとんでもない波乱の人生が始まっちゃったんですよ」としみじみ。

弟子として師匠の身の回りの世話をするにあたり、「どういうときに機嫌がよくて、どういうときに機嫌が悪くなって、何があると喜んで、何がないと怒るのか。兄弟子からはどういう人かは聞いてはいましたけど、それを掃除、洗濯、料理の合間に会得していくんです。それで上手くいかなくて落ち込んでいると、『いいか、信用というのは、理不尽の連続だ!』と言うわけですよ」と駆け出し時代のエピソードを回顧。

小山が「今の時代ではなかなか言いにくい言葉ですよね(笑)」と驚いていると、志の輔さんは「今の時代でも談志は言っていると思います。ですから、弟子はいなくなっているでしょうね(笑)」と笑い飛ばしつつ、「でも、『理不尽の連続だ!』は談志らしい、いい言葉です」と話していました。

立川志の輔さん

<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/post/

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