鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地建設を巡り、馬毛島周辺で漁を営む権利が侵害されたとして、同市の漁師浜田純男さん(68)が12日、国に対し馬毛島の港湾施設工事差し止めを求める訴訟を鹿児島地裁に起こした。
訴状によると、種子島漁協組合員の浜田さんは25歳から漁業を始め、馬毛島東岸でトコブシ漁やアサヒガニ漁を営んできた。「工事で馬毛島周辺の漁場が不可逆的に破壊される。漁業制限で主要な漁場で長期間操業できない」と工事の差し止めを求めた。
種子島漁協が漁業権の一部放棄と22億円の漁業補償に同意した点は「漁協の放棄決議は水産業協同組合法の目的の『水産業の生産力の増進』に逆行し無効」などと主張している。
浜田さんは会見で「漁協が多数決で漁業権を放棄できるのだろうか。納得がいかず補償金は受け取れない。宝の島を後世に残したい」と訴えた。弁護団の菅野庄一弁護士は「漁業権を放棄させる国の手法は沖縄県の辺野古埋め立てや長崎県の諫早湾干拓と同じ構造だ。過ちが繰り返されている」と指摘した。
馬毛島の基地整備では同日、防衛省への市有地売却などを巡る住民訴訟の第1回口頭弁論が鹿児島地裁であった。裁量権を逸脱し違法で価格も不適正として、西之表市民30人が市に対し、八板俊輔市長と国に2億3430万円の損害賠償を請求するよう主張。市側は請求棄却などを求めた。
訴状などによると、八板市長は2022年8月の住民説明会で「(市有地を)売るということは考えていない」と明言したが、11月に国と売買契約を締結するなどした。