ルーキーらしくあり、初戦らしくもなく。デビュー戦9位のアコスタ、堂々バトルと犯したミス/MotoGP第1戦カタールGP

 ペドロ・アコスタ(レッドブルGASGASテック3)のMotoGPクラスにおけるデビュー戦は、ルーキーらしくもあり、ルーキーらしくもなかった。けれど、アコスタの速さを強烈に残したレースだったことは、確かだった。

「今日はたくさんのことが起こった。40分の間にね! スタートはあまりよくなかったけど、そのあとは全部がすごくよかったよ。フロントタイヤのフィーリングも最高だった。Moto3クラスの最初のシーズンから、こんな風に攻められたことはなかった。最後の瞬間まで、どれほどのスピードを保ち、バイクを止められたか……、本当に驚くばかりだった。だから、満足だと思わないとね!」

 MotoGPクラスのデビューレースを終えたペドロ・アコスタ(レッドブルGASGASテック3)は、そう言い切った。いつものように明るい笑みを浮かべながら、けれど、いつもよりも興奮した様子だったかもしれない。

 アコスタは8番グリッドから決勝レースをスタートして、激しい勢いで前のライダーを追い、一時は4番手にまで浮上した。その後、ずるずると後退したが、アコスタの走りはエネルギッシュで、気勢にあふれていた。タイヤが終わってしまいポジションを下げたが、十分に存在感を示し、なによりも上位ライダーの走りを間近で見て学習していたのである。

 さらに、アコスタ自身が語ったところによれば、21周の間に1、2回しかミスしなかったのだという。「昨日(のスプリント)は11周だったけど、もっとミスをしたんだよ」と言うから、やはり修正能力も素晴らしい。もはや、ルーキーらしからぬ走りとパフォーマンスである。

 一方で、当然というべきか、まだ、ルーキーらしさも混在している。タイヤのマネージメントについては、アコスタにとってこのレースにおける、大きなミスだろう。レース前半、アコスタの後ろで走っていたアレックス・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)は、アコスタの走りを見ながらこう思っていた。「本当にアグレッシブだったよ。まるで予選のアタックモードみたいだった! だから、もしそのまま最後まで走り切ったら驚きだな、と思っていたんだ」

 そして実際のところ、最後まで“予選モード”で走ることはできなかった。アコスタもタイヤマネージメントがよくなかったとわかっていた。「10コーナーで(タイヤが)白煙を上げているのが見えたでしょ。これはテレビ用にはいいね!」と、いつものように冗談を飛ばしてジャーナリストを笑わせると、「とにかく、こういうミスをしたのは満足でもある。ポルティマオに向けてより多くの情報を得られていて、しっかり準備ができるわけだからね」と、からりとして言った。アコスタのコメントや表情には、湿っぽさが全くないのだ。

「たぶん……、僕には、彼ら(上位のライダー)と最後まで走るペースはなかったかもしれない。タイヤを使いすぎてしまったのかも……。でもとにかく、スタートの改善と、序盤から彼らと走ること、それからもうちょっとリラックスすることを心掛けることだね」

 アコスタはもう一つ、決勝レースで見せ場というべきシーンをつくった。マルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)へのオーバーテイクである。アコスタは序盤にM.マルケスの後ろである5番手に浮上して、しばらくその背中を見て走っていた。非凡な才能を持つ二人のスペイン人ライダーの緊迫した攻防には、アコスタが新たな風であることを、より感じさせるものがあった。

「彼(マルク・マルケス)をパスするのはとてもおかしな感じだった……、失敗できない、と思っていたのでね(笑)。つまり、行くなら行かなきゃ、という。彼は僕よりもブレーキングが深くて、『無理……、無理……、いまだ、インサイド!』といった感じだったよ。彼と戦えてすごくナイスだった」

 堂々たるオーバーテイクを見せたアコスタは2周だけM.マルケスの前で走り、その後、ポジションを落としていく。

 開幕戦を終えたばかりではあるが、そのレース、そして語る言葉に、すでにアコスタは“戦い”の土俵に立っているようだった。走りも、そしてメンタリティーも。開幕戦のレースは、アコスタの存在を鮮烈に印象づけた。

スプリントは8位、決勝レースは9位。KTM勢としてはブラッド・ビンダーに次ぐポジションでゴール

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