砺波で再起「前向くしかない」 輪島朝市の南谷さん ベニズワイ箱詰め、いつか輪島で

ベニズワイガニを箱詰めする南谷さん(右)と美有さん=砺波市太田

 能登半島地震で甚大な被害が出た輪島朝市で、干物や塩辛などを販売してきた南谷良枝さん(48)が砺波市の作業場を借りて出荷作業を続けている。「前を向いてやるしかない」。中学時代の同級生を頼って砺波で再起し、避難先の加賀、当面の生活拠点にする金沢と、輪島との長距離移動を続けながら、輪島でなりわいが再開できる日を夢見ている。

 12日は海産物販売会社「紅とら」(砺波市)の作業場で、金沢港で朝どれし、ゆでたベニズワイガニを長女の美有さん(22)らとともに約50箱を箱詰めした。「ありがとう」と手書きしたメッセージカードを添え、全国の注文先に発送する作業に精を出した。

 輪島市気勝平の加工場は地割れで傾いた。中学の同級生の道上喜治さん(48)からの誘いで、2年前から取引もあった道上さんが経営する紅とらの作業所で、今月3日に続いて発送作業にあたった。南谷さんは「商売が全くできていなかったので、本当にありがたい」と感謝し、紅とら支配人の臼井和重さん(55)は「安心して仕事ができるように今後も支援したい」と協力を惜しまない。

 南谷さんは二次避難先の加賀市の旅館から、金沢市金石地区で借りた一軒家への引っ越しや、発起人として23日に同地区で出張開催する輪島朝市の準備に追われる。輪島の加工場の様子も気がかりで週に1~3回は帰る日が続く。長距離の移動で昨年末に美有さんが購入した車の走行距離は2万キロを超えた。

 「この先、どうなるんだろう。どうなっていくのか分からない」と漏らした南谷さん。その思いや悩みを拭い去るように「もうこうなったら、やるしかない。前を向いてやるしかない」と力を込めた。

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