被災の酒蔵に待望の新酒 氷見・髙澤酒造場、生き残った麹を使用 ラベルに「ありがとう」

震災後初めて出来た新酒を喜ぶ髙澤社長=氷見市北大町

 能登半島地震で被災した氷見市唯一の酒蔵である髙澤酒造場(北大町)は、酒造り再開後、初めてとなる新酒を仕上げた。震度5強の揺れの中で生き残った麹(こうじ)を使用した。14日から富山県内に出荷する。杜氏でもある髙澤龍一社長(47)は「酒を造れる喜びと搾れる喜び、瓶詰めして商品を届けられる喜びを感じている」と周囲の支援に感謝している。

 仕上がった酒は「純米吟醸 しぼりたて生酒」で、表面のラベルには銘柄「曙」の横に髙澤社長の名前で「ありがとうございます」と入れた。裏面は「AKEBONO ARIGATO♡(あけぼの ありがとう)」のタイトル。復興復旧はこれからだが、感謝の気持ちを忘れず前に進んでいく決意を記している。

 髙澤酒造場は地震で仕込み蔵の土壁が崩れ、蔵2棟が大きく破損。断水もあって、もろみを作る本仕込みは例年より約1カ月遅れ、2月上旬となった。

 1本目の新酒に使った麹は12月31日から1月2日に作った。発災時は仕込み蔵の麹室にあり、震災後、確認したところ、蔵の機械が破損するなかでも無事だった。酒造りを再開するまで冷蔵庫で1カ月近く保管していた。

 酒の搾り作業は今月2日に開始。3日間かけて搾り上げ、約1週間ほど寝かせ、すっきり、まろやかでキリッとした仕上がりになった。髙澤社長が描いていた通りの味になったという。

 1カ月遅れの作業に不安はあったが、酒造りに適した寒い日が続いたことが幸いした。今回は一升瓶400本、720ミリリットル瓶1千本と量は少ないが、今後は純米大吟醸、大吟醸など高級酒が順次続く。

 髙澤社長によると、震災後、富山市などの飲食店で応援の意味で商品を扱ってくれるようになった。ただ、商品が十分なく、あまり供給できない状態だった。出荷が本格化すれば、北陸応援割で訪れる観光客にも氷見の地酒として味わってもらえるようになる。

 髙澤社長は「落ち着いてくれば、能登と一緒に頑張ろうみたいなメッセージを込めた酒も作りたい」と意気込んでいる。

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