朝乃山、金星あと一歩 照ノ富士と大熱戦も2敗目

  ●「負けたら意味ない」

 大相撲春場所(エディオンアリーナ大阪)3日目の12日、西前頭筆頭の朝乃山(富山市呉羽町出身、富山商高OB、高砂部屋)は、横綱照ノ富士(伊勢ケ浜部屋)に寄り切られ、2敗目を喫した。がっぷりと組み合う力相撲となり、横綱を苦しめる場面もあったが、あと一歩及ばなかった。7度目の対戦でも壁を越えることができず「勝ち負けしかない。負けてしまったら何の意味もない」と悔しさをあらわにした。

 「当たったときに上体が浮いてしまって右を差された。そこで勝負ありだった」。支度部屋では悔しげにうめき声を上げ、荒い息のまま一番を振り返った。

 満員御礼の大観衆が見守る中、結びの一番の土俵に上がった朝乃山。5場所ぶりに横綱と土俵の上で顔を合わせ、大きく息を吐いた。先に左上手を取った後、攻めきれない。土俵中央まで戻されると、十分な右四つに持ち込まれた。左上手を強烈に引きつけた寄りに屈し「あそこまで完璧に組んでは駄目」と首を振った。

 それでも熱のこもった相撲に歓声が沸き上がった。花道を引き揚げる際、モニター前で立ち止まった朝乃山は取組映像を見詰め、厳しい表情を浮かべた。一方の照ノ富士は「胸が合ったら変なことをせず、落ち着いていこうと思っていた」と振り返り、横綱の貫禄を見せつけられる格好になった。

 場所前の出稽古では、二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)から「相手に上手を取らせないためには踏み込みをコンパクトにする」という助言を受けた。この日の朝稽古でも意識したというが「土俵に上がったら分からなくなってしまった」という。

 1勝2敗で黒星が先行となり、4日目は大関霧島(陸奥部屋)との一戦を迎える。昨年の秋場所、九州場所と2連敗中だが、2人目の大関撃破で星を五分に戻せるか。勝ちへの執念が問われる。

  ●能登半島地震支援へ62年ぶり勧進大相撲

 日本相撲協会は12日、能登半島地震の被災地支援として、4月16日に東京・両国国技館で勧進大相撲を開催すると発表した。

 「能登半島地震復興支援勧進大相撲」と題し、入場料の全額を義援金として寄付する。勧進相撲は寺院や神社などの建立、修繕の寄付を募るため相撲を披露する行事で、江戸時代に盛んに行われた。今回は62年ぶりとなる。

 当日は土俵入りや、郷土力士をはじめとした幕内、十両の取組のほか、OB戦や力士とのふれあいコーナーなども予定されている。協会は「相撲を通して北陸を思う一日、皆さまのご来場をお待ちしています」としている。

  ●「横綱に勝ちたい」 一問一答

 ―取組を振り返って。

 当たったときに胸を合わせてしまった。上体が浮いてしまい、右を差された。そこで勝負ありだった。がっぷり組んだら駄目。

 ―立ち合いの狙いは。

 上手は取れないと思った。左手は下からいこうと思っていたが。左がどうだったか分からない。

 ―力相撲で勝ちへの思いも伝わった。

 そりゃ、(横綱に)勝ちたいっすよ。

 ―手応えを感じる部分もあったのではないか。

 勝ちか負けしかない。負けたらなんの意味もない。

  ●地元呉羽で声援

 富山市呉羽会館では、地元住民や子どもら35人が手製のバルーンやタオルなどのグッズを手に朝乃山を応援した。横綱戦を食い入るように見詰め「頑張れ」などと声援を送った。

 朝乃山が押し出されて負けるとため息が漏れた。呉羽町青年会の若林正浩会長(48)は「次に期待できる取り組みだと思う」と期待を寄せた。

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