「生活必需品の消費税ゼロ、子育て無償化で手を結べ。55年体制の社会党みたいになるな」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第37回】

3月1日、立憲の山井和則衆院議員の演説は衆院史上最長を記録。「戦っているフリで、国民の理解は得られんかったね」(泉氏)

与党は支持率が低迷しているが、野党も国民のほうを向いていない。

それが明らかになったのが、3月1日の衆院本会議。立憲民主党が、衆院予算委員長に対する解任決議案の趣旨説明を2時間54分もおこなうなどの抵抗をしたが、この戦術は批判を浴びた。

一方、立憲と自民党の両国対委員長の会談により、年度内の予算成立が決まった。その代わり、政治改革に関する特別委員会の設置を自民に確約させたことが、立憲の成果だとも言われている。

しかし、昔ながらの永田町の国対政治を見せつけられた国民にとっては、何やっとんねんという話。

私は今回、久しぶりに衆院本会議を傍聴した。野党は身内で盛り上がっていたが、本来は国民が拍手喝采するような戦略を取るべき。政権交代が遠い印象を与える野党の体たらくに、私は残念な思いだ。

まず、野党第一党の立憲は、かつての社会党に近づいているように思う。55年体制の社会党は、自民と争っているように見えて、実際は「国対政治」で着地点を探り、自民と裏で手を握っていた。

立憲の政倫審での追及も、本気を感じられなかった。裏金問題を解明するなら、最低でも証人喚問が必要。案の定、政倫審に出た自民議員の弁明には中身がなかった。

そして、トータルな戦略が見えない。以前、泉健太代表が「今後5年で政権交代を目指す」と言って批判されたが、最近は「救国内閣」とか「ミッション型内閣」と言いだし、次の総選挙で政権交代をすると主張する。

しかし、実際に他党に働きかけているわけでもないし、具体策を示しているわけでもない。そもそも、次の衆院選の獲得目標の「150議席」が中途半端。

さらに、人材面でも代わり映えしない。政倫審で目立ったのも、もう見飽きた顔ぶれ。これでは、国民は期待できない。イメージ刷新を図るなら、外から新しい人材を抜擢したほうがいい。そうすれば、新しいヒーロー、ヒロインが現われるかもしれん。

次に日本維新の会は、馬場伸幸代表が自ら白状したように「第二自民党」。政策面で自民と近いということもあるが、選挙でも結果的に自民を利している。関西以外では小選挙区で勝てる見込みもないのに、比例ブロックでの復活当選狙いで候補者を乱立している。自民のために候補者を出しとんのかと思うほど。

とはいえ、維新は市長や知事を獲っている。批判もあるが、政治は結果。たとえ地方でも、「もうひとつの選択肢」を示そうとしていることには意味がある。

共産党は、野党としては一定の役割を果たしていると思うが、ある意味で “化石” 。海外の共産党の中には、名前や路線を変えたりしているところもあるが、日本の共産党については変化が乏しい。委員長を女性に変えただけで、イメージが変わるわけやない。共産はいつまで独自路線を貫くんやろか。

国民民主党は、与党か野党かわからん「コウモリ」状態。ガソリン税の上乗せ部分の課税を停止するトリガー条項について、与党と協議すると言いながら、結局、反古にされて協議から離脱してしまった。自民から甘く見られているということやね。

新党「教育無償化を実現する会」は、国民民主から離党した前原誠司氏らが設立した。党員はたった5人で、政党要件は満たしているが、これはひと言でいうと、「第二維新の会」。実際、国会でも維新と統一会派を組んでいて、それにより伸びない状況になっている。

れいわ新選組には、「信者」と言われるようなコアな支持層が数多くいるが、結党当初の勢いは感じられない。代表の山本太郎氏は、前回の総選挙で「消費税率5%」で立憲、共産、社民の各党と一致したが、裏切られたと言っている。だがそれでも、大同団結を目指すべき。

ポイントは、国民のためか、党勢拡大のためか。最近、山本氏は「れいわを大きくする」と言うことが増えてきているように感じるが、「我が党」を中心に考えるんやなく、国民のために、れいわには大同団結の旗を振ってほしい。

与党の公明党は、もともと「福祉の党」と言われ、国民に寄り添うイメージがあった。しかし、与党になってから変質した。

私が国会議員時代の20年前は、厚労大臣の坂口力(ちから)さんを筆頭に、まさに「福祉の党」として自民に働きかけていた。ときに政権離脱カードをチラつかせ、与党の中で一定の役割を果たしていた。

ところが、いまや国交大臣ポストを握り、「ザ・自民党」の古い政治に染まり、かつてのような役割も果たせていない。公明は原点に戻るべきではなかろうか。

以上、自民以外のおもな政党についてコメントしてきたが、私自身のスタンスは、無所属市民派。政治の恩師・石井紘基さん(民主党)の遺志を継いで国会議員になったので、そのときだけは民主党員だったが、2005年には離党している。今もとくに支持する政党はないし、敵対している政党があるわけでもない。

ただ今後、国政をダイナミックに変えていくには、やはり政党は無視できない。その際の判断基準は、国民を本気で救う気があるかどうか。右と左、与党と野党という古い対立を脱して、「国民に近いチーム」と「国民から遠いチーム」の対決に持っていきたいと考えている。

とにかく、国民生活を豊かにすること。具体的には、食料品などの生活必需品の消費税ゼロ。そして、子育てにかかる医療費、保育料、給食費などの無償化。さらにはトリガー条項の発動。これらの点で大同団結すればいい。

たんなる野党批判をするつもりはない。ここまで自民も総理も人気がない今が、政権を打倒して、国民を救うチャンスや!

© 株式会社光文社