日向坂46、一期生の相次ぐ卒業で世代交代を明確に打ち出す選抜制 2024年は正念場に?

日向坂46は11thシングルにて、四期生の正源司陽子という新たな顔をセンターに抜擢した。これまで一期生と二期生がセンターに立つことの多かった日向坂46が、まだキャリアの浅い四期生をセンターに起用することにより、次世代の育成というテーマを明確に打ち出してきた形だ。

その背景にはここ1年における一期生の相次ぐ卒業があるだろう。2023年7月に影山優佳、同年12月に潮紗理菜というグループの中核を担ってきたメンバーが卒業。その間にグループは9thシングル『One choice』で二期生の丹生明里、10thシングル『Am I ready?』で三期生の上村ひなのという表題曲センターを経験したことのないメンバーを起用し、さらには2ndアルバム『脈打つ感情』のリード曲「君は0から1になれ」ではキャプテンの佐々木久美をリード曲初センターに据えることで、グループの層の厚さを誇示するとともに、しっかりと土台を作り上げてきた。2023年は一期生の卒業を見据えた上での準備期間だったと言える。

世代交代の機運を決定づけたのが今年に入ってから発表された齊藤京子、そして高本彩花の卒業である。齊藤は8thシングル『月と星が踊るMidnight』でセンターを務めてきただけではなく、バラエティ番組『キョコロヒー』(テレビ朝日系)ではヒコロヒーとともにMCを務め、番組発の楽曲「After you!」をリリースするなど、グループ内外でその存在感を発揮していた。さらに、彼女の功績のひとつは、2023年5月に初の有観客ソロコンサート『MTV Unplugged Presents: Kyoko Saito from Hinatazaka46』を開催し、ソロアーティストとしての道を切り拓いたこと。また、高本は『JJ』(光文社)の専属モデル、『andGIRL』(主婦の友社)のレギュラーモデルとして活躍し、ファッションイベントにもたびたび出演するなど、日向坂46のファッションリーダーとして類まれなセンスを見せてきた。二人に共通する点を挙げるならば、他の卒業した一期生がそうであったように、いわば外向けの活躍をしてきたメンバーであり、グループの顔と言える存在だったことだろう。そんな二人が相次いで卒業を発表したことは衝撃をもたらすとともに、いよいよ日向坂46にも“世代交代”という言葉が浮かび始めてくる。

これまでの他のグループの事例を見ていても、長くグループを維持していくためには世代交代をいかに上手にクリアしていくのか、そのタイミングが非常に重要になってくる。すでに卒業を発表している二人を除けば、現時点で残された一期生は5人。日向坂46の前身となるけやき坂46の結成メンバーが12人であったことを考えると、すでに過半数が卒業、もしく卒業を発表しており、グループは徐々にではあるが少しずつ変わってきた。そんな中で長い年月グループに在籍してきたメンバーの卒業はファンにとっても強い感慨を与えるだけではなく、グループの内部構造をも大きく変える可能性を孕んでいる。日向坂46は選抜制を採用しておらず、結成から約4年半もの間、フォーメーションを変化させながらも一期生~三期生全員歌唱のスタイルを取ってきた。これによって日向坂46の強みである“ハッピーオーラ”というコンセプトを深化させることに成功してきたが、表題曲メンバーが固定化されることによるネガティブな側面も見えてきた。それが次世代メンバーの育成という課題である。日向坂46は若手メンバーへの移行を形式上は進めてきたとはいえ、フォーメーション全体を見た時にどうしても三期生や四期生が中核を担うことは難しかった。それゆえ、表題曲でセンターを務めたメンバーとその他のメンバーの立場的な差は広がっていくばかりだった。

そこで日向坂46の運営が手を打って出たのが、今作における選抜制の導入である。このことについては様々な意見が出ているところだが、グループに厚みをもたらすという意味で選抜制が非常に優位に働くのは間違いない。今回センターを務めるのは四期生の正源司。グループ加入から約1年半でのセンター抜擢である。その横にはグループの創設時から絶対的な中心を担ってきた小坂菜緒、佐々木美玲、金村美玖、加藤史帆といったメンバーが順当にフロントに抜擢される一方で、大きく変化したのが2列目と3列目。ここには藤嶌果歩、宮地すみれ、平尾帆夏、山下葉留花というフレッシュなメンバーが入り、これまでとは大きく様変わりした。日向坂46が結成時から選抜制を取り入れてこなかったことで、先述したメンバーの固定化という負の側面と、それに付随する正の面として安定した基盤が作られてきたことがあった。一期生~三期生がしっかりと基盤を固めてきたことによって、四期生にバトンを上手くつなぐことができた。さらに今回、正源司がセンターに抜擢されたことによって、選抜メンバーのさらなる流動化も予感させる。

選抜制に踏み切ったその背景にあるのは、やはり四期生の存在も大きいだろう。2022年9月に加入した四期生は「ブルーベリー&ラズベリー」(8thシングル『月と星が踊るMidnight』収録曲)や「シーラカンス」(9thシングル『One choice』収録曲)、「見たことない魔物」(10thシングル『Am I ready?』収録曲)、「ロッククライミング」(2ndアルバム『脈打つ感情』収録曲)といった四期生楽曲でパフォーマンスを磨きつつ、その集大成となる乃木坂46の五期生、日向坂46の四期生、櫻坂46の三期生による合同イベント『新参者 LIVE at THEATER MILANO-Za』も成功させている。四期生加入以降、彼女らが次世代の核となる準備を着実に整えてきた。いずれにせよ、四期生の成長により次世代への移行を巡る動きが加速したことは間違いない。

グループの展望を見据えた時に、草創期を知るメンバーが卒業していくことは免れない事実であるだろうし、世代交代を明確に打ち出すタイミングとしては時宜にかなっていると言える。ひとまず、この1年は日向坂46にとって正念場であると同時に、大きなチャンスとなるはずだ。

(文=川崎龍也)

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