草彅剛は人を楽しませる天才 『ブギウギ』羽鳥のまさかのアドリブを制作統括が明かす

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

第112話、羽鳥善一(草彅剛)の「作曲二千曲記念ビッグパーティー」に向けて、スズ子は羽鳥を驚かせようと余興の企画を考えていた。そして、愛子(小野美音)のダンスを見てサプライズを思いついたスズ子は、さっそく茨田りつ子(菊地凛子)に相談。「この貸しは大きいわよ」と言われながらも、「東京ブギウギ」のメロディに乗り、2人揃って華麗なラインダンスを披露した。

制作統括の福岡利武は「実際にはパーティーではなく、2000曲記念のコンサートがありました。そこでサプライズとしてみんなでラインダンスを踊ったそうで、服部良一さんがすごく喜ばれた、というエピソードがありまして。その写真が残っているのですが、淡谷のり子さんがとても楽しそうに踊っているんですよ。『なぜ淡谷さんはこんなに楽しそうなんだろう』というのが印象的で、是非やってみたいと思いました」と制作経緯を語る。

ブルースの女王として君臨するりつ子は、ダンスからほど遠いキャラクター。台本を読んだ際の菊地の様子については「だいぶ驚かれていましたね。『私、ついに踊るのか』とおっしゃっていました(笑)。『そんなに踊れないのだけど……』と心配もされていたので、踊れなくて大丈夫ですよ、と説明させていただきました」と振り返る。

練習期間は約1カ月。福岡は「菊地さんはことあるごとにラインダンスの練習をされていました。すごく体力を使うので、ケガをしないように入念に」と明かし、「撮影前はとても緊張するとおっしゃっていましたが、しっかりと足が上がるんですよね。すごく綺麗に踊っていらっしゃって素敵でしたし、『りつ子は、実は踊りもイケる』というところを表現されたのかなと。カッコいいステージになったと思います」と称賛する。

「ラインダンスは後ろにまわした手でお互いを支えながら踊るので、一体感が生まれるんです。家の庭で練習するシーンも含めて、菊地さんも趣里さんもとても楽しそうでした」

サプライズ満載なステージには、羽鳥も飛び入り参加。最後には派手に転び、「これが本当のサプライズだぁ!」と笑顔を見せるのだが、実はこの場面、台本には書かれていない草彅のアドリブなのだという。

「台本には<善一、足は上がっていないがとっても楽しそう>としか書かれていませんが、草彅さんが思い立って、こうした方がより面白いんじゃないか、と。草彅さんご自身、趣里さんと菊地さんの踊りを見てすごく喜んでいましたし、その中できっと“思いきり足を上げて転ぶこと”を思いつかれたのかなと思います。へっぴり腰で踊り続けただけでは終われないんじゃないか、ということではないでしょうか。おかげで、とてもチャーミングなエピソードになりました」

とくにパッドなどは着用せず、ケガをしないよう受け身を取るかたちで撮影に臨んだという草彅。福岡は「よく見ると、転ぶときにすごく足を上げているんですよ。楽しさも、勢い余った感じもありますし、とても上手にアクションされていて。現場ではみんながびっくりしましたが、『全然大丈夫です』とおっしゃっていました」と草彅の身体能力の高さに驚嘆する。

「その展開自体、台本に書かれていないわけですから、セリフも当然、草彅さんのアドリブです。『目には目を、歯には歯をだぁ!』というのは、ご自分の気持ちから出た言葉ですね。本当に素晴らしかったです」

あらためて、草彅剛は人を楽しませる天才なのだと思わされる今回のエピソード。物語は残り2週となったが、そんな草彅が楽しげに演じる羽鳥善一を、最後までじっくりと堪能したい。

(文=nakamura omame)

© 株式会社blueprint