国交省、厚労省/能登半島地震踏まえ上下水道の復旧方針検討、8月にも検討結果

国土交通、厚生労働両省は能登半島地震の被災状況を分析し、上下水道施設の復旧方針などを検討するための有識者会議を立ち上げた。地震の特徴や被災状況を検証し、復旧の方向性を明確にする。さらなる耐震化に向けたハードの条件や上下水道一体での被災地支援体制といった地震対策の在り方も検討する。5月に中間まとめを示し、8月にも最終的な検討結果をまとめる。
12日に「上下水道地震対策検討委員会」の初会合を東京都内で開いた。国、地方自治体の職員や有識者など16人で構成する。委員長に就いた滝沢智東京大学大学院教授は「今回の地震の教訓を今後の地震対策に生かす。復旧の進め方をもう一度考え直す機会として、忌憚(きたん)のない意見をいただきたい」とあいさつした。
会合では能登半島地震による施設の被害状況を報告した。水道管は斜面崩壊が発生した箇所を除き、耐震化を完了した多くの箇所で機能を確保できたとの調査結果を提示。現行の耐震基準が有効であるとの見方を示した。委員からは浄水場と配水池を結ぶといった重要区間を災害時に運用できるよう、多系統化を進めるべきとの意見があった。
下水道管は詳細検査で不具合が確認された施設延長が60%を超えた。ただ、ほとんどで流下機能を確保できていたとの結果も報告し、現行の耐震基準の有効性を確認できたとした。委員からは下水処理場に直結するような重点区間での耐震化に力を入れるべきとの指摘があった。
復旧の方向性としては広域計画を再検討し、将来的な施設の統廃合を考慮して配管が不要で、地震災害に強い浄化槽への転換を進める案も示した。委員からは、原形復旧ではなく、より災害に強い形での再整備を求める声や、ドローンやデジタル技術の活用で維持管理の効率化する意見が出た。 水道と下水道で工程を調整するなど、より円滑に復旧を進めるための支援体制や手法に関する意見も募った。委員からは、上下水道の復旧の優先順位を事前に決めたり、井戸水などの代替手法を備えたりすることが必要との指摘があった。水道と下水道の復旧状況を共通地図で確認できるシステムの構築を提案する委員もいた。
国交省は会合で現行の耐震基準の有効性が確認できたとし、被災自治体に現行の耐震工法指針や対策指針を基に本復旧に着手するよう提言する。5月と8月に計2回の会合を開き、より詳細な被災状況や災害対策を検討していく。

© 日刊建設工業新聞社