『Eye Love You』二階堂ふみが迫られた“究極の選択” テオが飯山教授に明かした衝撃の事実

心の声を聞こえてしまうがゆえに、たくさんのことに傷ついてきた。誰かと恋をすることも諦め、人と目を合わせることも恐れるほどに。もし、この“テレパス”の力を手放すことができたら、ずっと誰にも言えなかった“大きな秘密”という名の荷物を下ろせたら、どんなに楽になるだろうか。だが、それは同時に世界で一番愛する父とのコミュニケーションが絶たれることを意味していた。

火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)第8話は、侑里(二階堂ふみ)に“究極の選択”が迫っている様子が描かれた。テオ(チェ・ジョンヒョプ)の部屋で見つけた絵本『心が聞こえる少女』。そこに綴られていたのは、まるで侑里とテオが出会い、恋に落ちることが決まっていたかのような内容だった。そして、お互いに愛を伝え合った2人のその後についての描写も……。

しかし、ラストまでは目を通すことができなかった侑里。ただ、気になるのは2人にはさまざまな不幸が降りかかるという予言のような言葉だった。実際に、侑里の周りでは絵本の通りにトラブルが起きる。落雷とひっくり返った亀のイラストは、雷鳴に驚いてぎっくり腰になった亀井(ゴリけん)の姿に繋がり、散らばるお金は侑里の会社に出資予定だったVCの経営破綻を表しているようだった。そして、絵本にはテレパスの能力をなくす方法も示されていた。それは「愛する人と33秒間目を合わせること」。ところが、侑里にはこの力があるからこそ会話ができる父・誠(立川志らく)がいる。能力がなくなれば、父とは二度と話せなくなる。能力があるからこそ辛いことも多かったが、それを耐えられたのも言葉を発することのできない父と会話ができたから。

しかし、絵本には「急ぎなさい、早くしないと、あなたの“一番大切なもの”を失いますよ」という文字が……。会社の危機があり、父の容態急変があり、これ以上大切なものを失いたくないと思う一方で、父と意思疎通ができなくなることへの覚悟が決まらない侑里。そんな侑里の背中を押したのは、他でもなく父の誠だった。意を決して33秒間、見つめ合うことにした2人。最愛の家族と「これがラストの会話だ」というとき、自分だったらどんな言葉をかけるだろうか。そんなことを考えずにはいられないシーンだった。束の間、夢のような時が流れる。「お父さんの娘に生まれてきてくれてありがとう」と誠の口から直接語りかけられる感謝の言葉。ずっと味わえなかった侑里のコーヒーをすする誠の姿に、胸がいっぱいになる。

そして、不自由な体にはなったけれど、侑里を守ることができて誇らしかったこと。そして今を「幸せ」だと侑里を安心させる誠の言葉は、まるで抱きしめられているかのように温かかった。だからこそ、この言葉が聞けなくなってしまうことがどうしようもなく寂しくてたまらなくなった侑里の気持ちも痛いほどに伝わってくるのだ。33秒が経ち、涙が溢れて止まらない侑里。そんな侑里の耳に「お父さんも大好きだよ」といつもと変わらず誠の声が届く。「え~!?」と拍子抜けな気持ちと、「ほんとに良かった~」と安堵する思いで、侑里の表情はくしゃくしゃだ。そして気づくのだ、いつの間にかこんなにも侑里の表情が豊かになっていたことを。

きっと誠以外にテレパスの秘密を受け入れてくれた真尋(山下美月)の存在も大きかっただろう。そして何より、どんな侑里も愛していると伝えてくれたテオの言葉も。まだ、テオにはテレパスについて打ち明けることはできていないが、きっとテオなら大丈夫ではないかという安心感が生まれつつあるのだろう。以前よりもずっと素直に感情を表に出して、笑ったり、泣いたり、くるくると表情を変える侑里を見ていると、彼女が人と関わることへのためらいを乗り越えたようにも感じた。

そんな矢先に明かされた、衝撃の真実。やはりテオはとっくに侑里がテレパスであることに気づいていたということ。そして、さまざまな不幸が降りかかるという運命も承知の上で、侑里を愛し続けていく覚悟だという。私たちも侑里も、まだ絵本の結末を知らない。だが、もしかしたら「一番大切なものを失う」とはテオ自身のことなのではないだろうか。そうでなければテオの父親代わりである飯山教授(杉本哲太)があれほど幸せそうにしているテオに、侑里との別れを提案したりはしないだろう。

遠くに行ってしまった人への変わらぬ愛を歌う主題歌の「幾億光年」が、いつもよりも意味深に聴こえて胸をざわつかせる。しかし、テオの決意は揺らがない。「僕は侑里さんをずっと愛し続けます」と瞬きひとつせず、飯山教授を見つめて韓国語で語りかけるテオの強い意思を感じた。そして、「先生。僕はユンテオですから」と微笑むテオ。その笑みには、どんな意味があるのだろうか。絵本に登場する少年とは違う人物であるという自分自身への鼓舞なのか、それとも何か運命づけられた今後を幸せへと導く勝算があるのか。

テオは母親を亡くしたことで、どんなに愛しい人でもいつかは別れを迎えるという現実を味わった。だから、いつか来るであろうその日を恐れるよりも、いかに今この瞬間を共に生きる愛する人に、その想いを伝えることがいかに大事かを知っているのかもしれない。これまでの侑里に対するストレートな愛情表現も、決して勢いだけではなかったということだろう。いつだって最後の会話になっても悔いはないように。惜しみなく愛を伝え続ける大切さを、テオに教わったような気がした。
(文=佐藤結衣)

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