BMW、レース開始時刻を早めル・マンへの“ハシゴ”が可能となるようDTMに異例の要請

 6月8〜9日に開催されるDTMドイツ・ツーリングカー選手権のザントフォールト戦が、WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースのテストデーとバッティングしている問題で、BMWはザントフォールトでの日曜のレース開始時刻の変更をDTMと協議している。

 BMWのモータースポーツディレクター、アンドレアス・ルースは、従来の13時30分というレースのスタートタイムを今回に限り変更するために、ADACドイツ自動車連盟に対して要請したと語った。

 本稿執筆時点では、BMWのシェルドン・ファン・デル・リンデ、レネ・ラスト、マルコ・ウィットマンという3人のドライバー、さらにABTスポーツラインのケルビン・ファン・デル・リンデ、SSRパフォーマンス・ドライバーのミルコ・ボルトロッティ、エミル・フレイ・レーシングのジャック・エイトケンが、この日程バッティングの影響を受ける予定となっている。

 ルースは、影響を受けるドライバーたちが「2~3時間早く」ザントフォールトを出発できる解決策を見出したいと説明した。そうすれば、ドライバーたちはサルト・サーキットに到着していくらかの周回を行うのに間に合うよう、オランダから飛行機で移動する時間を確保できる見込みだ。

「我々はADACとDTMと話し合いを行っており、もしそこに可能性があるのなら、これを変更するかもしれない」とルースはSportscar365に語った。

「我々だけの問題ではないと思う。他メーカーでも同じ問題を持つドライバーが何人かいる」

「我々は迅速に決断を下さなければならない。 DTMは重要な選手権なので、両立ができれば理想的だ」

「もちろん、日曜日の(DTMの)レースからドライバーを撤退させたくはない。しかしまた、テストデーは我々にとって非常に重要だ」

「だから、そこ(ル・マン)にドライバーがいることも重要だろう。そんなわけで、我々は議論を続けている。何が可能なのかを、見ていかなくてはいけない」

 ル・マンに出場するドライバーはテストデーに参加し、タイム5回の計測ラップを含む最低10周を完了する必要があるが、過去にはこれを逃したドライバーもいた。

 テストデーと他の場所でのレースイベントがバッティングすることは、珍しいことではない。昨年、現ハイパーカードライバーのラスト、セバスチャン・ブエミ、ジャン・エリック・ベルニュ、ロビン・フラインス、ノルマン・ナト、ニコ・ミューラーは、ジャカルタで開催されたABB FIAフォーミュラE世界選手権と重複したために、テストデーを欠席している。

 これは、過去5年間にル・マンに参加したことがあれば、テストデーをスキップできるというプラチナドライバー限定の免除規定があるからだ。

 このため、昨年のル・マンに参戦したラスト、ボルトロッティ、エイトケンはテストデーの参加義務はない。ただし、ファン・デル・リンデ兄弟とウィットマンは今年がル・マンデビューとなる。

 ただし、ル・マンの補足規則では、チームがACOのスポーツ委員会に書面による要請を提出した場合、「国際競技」に参加するドライバーはテストデーを欠席することが許可されると規定されている。

 免除が認められた場合、関係するドライバーは(テストデー後のレースウイーク初日の)水曜日の最初のフリープラクティスセッション中に、少なくとも5周の計測周回(コース上のコントロールラインを通過することが条件)を完了することが求められる。

 それにもかかわらず、ルースは、BMWドライバーがテストデーに参加することは単にレギュレーションを履行するだけの問題ではなく、BMW Mハイブリッド V8のル・マン・デビューに先立って貴重なトラックタイムを確保するためだと説明した。

「我々にとって、これは重要なレースであり、我々のドライバーたちも可能な限り、良い準備をすることが重要だ」とルースは語った。

「これが、我々にとって選手たちにトラックタイムを与えることが重要である理由だ。それ以外の場合は、シミュレータ内でのみ運転でき、実際のトラックでは運転できない」

「レネ、確かに彼は何度かル・マンに参戦(していて規則の条件はクリア)しているが、その一方で、彼はすでにそこでレースをしていて、同じくLMP1マシンでレースをしたことがある人物なので、その経験をもとにした彼からのフィードバックは我々にとって非常に重要でもある」

「なぜなら、そのコースを初めて走るドライバーがいたとして、おそらくいくつかのことはその人にとって新しいことになる。その点、レネはそれがトラック固有の問題であるかどうかを判断できるわけだ」

「結局のところ、我々にとって3人全員がテストデーにおいて重要だ。確かに、レギュレーションを満たすために周回をすることは重要だ。しかし、それが最も重要なレースに向けて最善の準備をする方法でもあるのだ」

 DTMの広報担当者はSportscar365に対し、スケジュール変更の可能性についてBMWから連絡を受けており、選択肢を検討していることを認めた。

「DTMのレースは世界150以上の地域で生中継されているため、多くの影響を受ける可能性があり、我々はこの要請を慎重に評価する必要がある」とADACは声明で述べている。

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