鉄道車両・部品を使ったアップサイクルの取り組み! インテリア小物や家具など様々なものに姿を変えています

鉄道車両の寿命は、30~50年といわれています。寿命をむかえた車両ですが、一度資源に戻し他のものに生まれ変わらせる「リサイクル」に関しては以前から知られていますが、近年ではリサイクルに加え、車両の部品をそのまま他の製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」という取り組みを行う事例も耳にするようになってきました。

今回は、鉄道が好きな方にとってはうれしい、鉄道車両・部品などを利用して、他の製品として手元に残しておける「アップサイクル」の取り組みの一部を紹介します。

Osaka Metroの廃車再生プロジェクトでの取り組み

まずは、大阪市の地下鉄、Osaka Metroの取り組みです。
Osaka Metro では、地元のクリエイターやものづくり事業者をマッチングしての共創プロジェクト「Osaka Metro クリエイト」という取り組みを行っています。その中で、廃車車両の部品・部材を鞄や家具などに再生し、引退後も多くの方々に親しんでいただけるように商品化する「廃車再生プロジェクト」を実施。2022年1月に最初の試作品お披露目会を行ってから、継続的な取り組みとして様々なものの商品化を行っています。

OsakaMetro廃車再生プロジェクトの商品(写真:OsakaMetro )

この取り組みの第1段として商品化された「RAU-RAU-G HAITETSUバッグシリーズ」は、つり革の持ち手と連結部の貫通ほろを用いたユニークな「ショルダーバッグ」で、大阪を拠点に袋ものやバッグの縫製を担うサンワードが企画・製造を行いました。
第2弾で商品化されたうちの一つ「愛犬吊り革リード」は、通勤・通学で見慣れた白い吊り輪とその上に収まっている細長いプラスチックの広告枠を使ったペット用品となっています。
Osaka Metroの取り組みでは、この他にも色々な商品が企画されています。

新幹線の座面シートを、東北の有名家具メーカーの協力で家具としてへよみがえらせる

JR東日本で、廃棄処分される運命だった新幹線の座面シートの予備資材を活用するために始まったこのプロジェクトでは、沿線地域でのつながりがあった有名な家具メーカーである天童木工との共同作業によって”新しい価値のある商品”が開発されました。

JR東日本の新幹線座面シートが天童木工職人の手によって希少チェアに(写真:JR東日本)

現在販売されている第2弾としてのこの取り組みでは、東北新幹線などのE5系、秋田新幹線のE6系、北陸新幹線・上越新幹線のE7系の3つのJR東日本の新幹線計12種類の座面シートと、8種類の椅子の形とを組み合わせた96種類の中から、自分だけのオリジナルチェアをオーダーメイドで製造してくれるというものになっています。いつも利用している新幹線と同じ座面シートの椅子が、家庭内で感じられるという画期的な製品です。受付期間や数量には限りがありますので、興味がある方は早めにチェックしてみてください。

【より詳しい記事はこちら】 新幹線の座面シートを使った”天童木工コラボチェア”がすごい 自宅で憧れの新幹線を感じられるオーダーメイドの椅子が登場! | 鉄道チャンネル (tetsudo-ch.com)

座席モケット端材で様々な小物を作成し、鉄道イベントで販売

JR東日本大宮支社と、オーダーカーテンなどのインテリアコーディネートを提案するジアス(本社、埼玉県さいたま市)とが連携して、座席モケット端材を活用した様々なアップサイクル商品を企画、製造しました。

座席モケット端材を活用した商品 (写真:ジアス )

こちらは、JR東日本大宮支社が、地元さいたま市で裁縫技術を持ちアップサイクル商品作成の実績がある企業を探して実現。「鉄道のまち大宮 鉄道ふれあいフェア」(2023年11月25日開催)という、大規模な鉄道関連イベントで販売されました。

東京メトロは引退する丸の内線02系座席シートからポーチやキーホルダーを!

東京メトロの丸ノ内線02系は、1988年の導入から約35年が経ち、2024年3月までに引退の予定となっています。東京メトロでは、車両が引退することに伴って発生する廃材の再利用についての検討と、面影を別の形で残すことができないかという考えから、車両部品のアップサイクルを行うことに決めたそうです。

引退後にも、丸の内線02系車両の思い出を持ち歩ける企画です
丸ノ内線02系座席シートを活用した商品例(写真:東京メトロ)

その素材をとしては、耐久性に優れた座席シート生地を採用し、座席シート生地と古着ジーンズ生地を組み合わせたアップサイクル商品を企画。これらは期間限定でクラウドファンディングを利用した上で製造を行い、「東京メトロロゴ入りポーチ」や「東京メトロボタン付きキーホルダー」として製品化されました。

JR東海の新幹線の車両を野球バットとして再利用

こちらはアップサイクルではありませんが、JR東海では、スポーツメーカーのミズノと一緒に、東海道新幹線の車両に使用していたアルミをリサイクルしての子供用の金属バットを共同開発し販売しました。

新幹線アルミを利用した子供用バット (写真:ミズノ)

リサイクルアルミでのバット作成は技術的に難しいとされていたようですが、バットに適した材料に成分調整し商品化を実現したとのことで、東海道新幹線再生アルミが約95%使用されています。配色には新幹線カラーを忠実に再現し、新幹線が好きな野球キッズ達に好まれる商品になっています。

京急は鉄道車両の部品を活用した分譲マンションを販売

こちら、少し変わった取り組みをご紹介します。京急電鉄では、引退した鉄道車両の部品を活用してリノベーションした分譲マンションの販売を開始しました。

京急グループでは2018年からリノベーション事業を手がけていますが、神奈川県横浜市の「プライムフィット横浜富岡」はその第2弾として、築28年の企業社宅を一棟リノベーション工事を実施・分譲をするという取り組みになっています。

「プライムフィット横浜富岡」Webページでの説明より (写真:京急電鉄)

このマンションの共用部には、鉄道業界初となる引退した鉄道車両の部品を利活用。新たに設けた共用部の集会スペースやワークスペースのソファに車両の「座席」を使用するとともに、荷物を置く「網棚」を活用した飾り棚を設置し、ワークスペースの入室表示に「車側灯」、マンションの階数表示に「車両番号銘板」を使用したものになるといいます。

マンションという非常に高額なものですのですぐ購入できるものではありませんが、鉄道車両が好きというファンにとっては、家を選択する際の動機の一つにはなるかもしれません。

希少性が高いアップサイクルの商品

今回は様々な鉄道会社が行っている、鉄道車両・部品のアップサイクルの取り組みをご紹介しましした。
このアップサイクル製品に共通しているのは、「期間限定」だったり「数量限定」という製品になっている事です。
愛着のある鉄道車両を他の製品として手元に残しておける というファンにはありがたい取り組みではあるのですが、元々は廃棄をする部品などを活用して作られている2次的な製造物であるということで、希少性のあるものになってしまうのは仕方がないところではないでしょうか。

今後もいろいろな製品が企画されるかもしれませんが、その製品に出会える機会は限られているかと思いますので、ご自分の気になるものがあれば積極的に調べてみる事をおすすめします。

(鉄道チャンネル)

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