ゴジラも担当!怪獣造形界のレジェンドが初監督作品を語る 円谷の薫陶受け、三船から斬られた逸話も

怪獣造形界のレジェンド・村瀬継蔵氏 初監督作品語る

映画の好みや楽しみ方は人それぞれ。このコラムでは、元映画館スタッフで映画企画屋の宮本裕也さんが、独自の視点から映画の“観かた”を紹介します。今回は、ゴジラシリーズも手掛けた怪獣造形界のレジェンド・村瀬継蔵氏の初監督作品について解説します。

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『ゴジラ』シリーズや『大怪獣ガメラ』『仮面ライダー』などの造形を手掛け、怪獣造形の礎を作ったと言われている怪獣造形界のレジェンド、村瀬継蔵氏。

村瀬氏による初監督映画『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』が2日、大阪アジアン映画祭で世界初上映され、村瀬監督と佐藤大介氏(プロデューサー・特撮監督)による舞台挨拶が行われた。

俳優の三船敏郎氏や、「ウルトラマン」シリーズの生みの親である円谷英二氏とも親交があった村瀬氏。本作の原案は実に約50年前に遡る。

原案『カミノフデ』は、香港映画『北京原人の逆襲』(監督:ホウ・メンホア/1977年)の制作に携わっていた頃にアイデアが生まれた。ところが、映画化を提案した制作会社は倒産、映画化も白紙になった。

時を経て2017年になり、アイデアを見た関係者から映画化の話が持ち込まれた。脚本の再考、資金集めなどを経て完成。2024年夏に劇場公開されることが決まったという。

2日の舞台挨拶で村瀬監督は、「私も円谷英二さんや作品などから、特撮、作る楽しみを教わったうちの一人。本作では、次世代のクリエイターのために“子どもたちに特撮に興味を持ってもらう”、“楽しめる作品を創り上げる”思いで完成させました」と語った。

佐藤大介さんによると「50年前のアイデアを現代の物語として完成させるには改編も必要」だったとのこと。佐藤さんは「脚本家チームと連携し、現代にも通じる内容になりました。本当に多くの方にご協力いただききました」と語った。

その証拠に、本作には『シン・ウルトラマン』の斎藤工や『ゴジラ』シリーズの佐野史郎、釈由美子、樋口真嗣監督など、特撮界では誰もが知る顔ぶれが出演している。

主題歌はDREAMS COME TRUEが担当。村瀬監督と同郷の吉田美和(Vocal)が、本作に共感し実現したという。曲タイトルはなんと「Kaiju」。これもファンにはたまらない曲名だ。

舞台挨拶では、レジェンドだからこそ話せる逸話で観客を沸かせた村瀬監督。『日本誕生』(監督:稲垣浩/1959年)では“八岐大蛇(やまたのおろち)”の制作に携わり、主演の三船敏郎氏と映画の中で格闘したのだとか。「八岐大蛇の中に入って、三船さんに切られるシーンはよく覚えています。作るのも好きですが、怪獣を演じるのも好きでした」と明かした。

『カミノフデ』にも八岐大蛇や大魔神が登場。50年前のアイデアが、現代の技術を駆使してどのように生まれ変わったのか。ファンにはたまらない演出をはじめ、現代人風にアレンジされた特撮ファンの叫びも描かれている。

村瀬監督は「作品作りを通して昔を思い出した。円谷さんなどに育ててもらった恩、特撮への想いを、今度は作品を通して返したい」と語った。

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