冷蔵パウチ食品の宅配で食事作りの3つの手間を解消エネルギー会社が食品宅配サービスを展開
大阪ガスが、2023年9月にスタートした「FitDish(フィットディッシュ)」は、全国で展開する冷蔵パウチ食品の定期宅配サービス。約40種類のメニューの中から好みに合わせた食品が月に1度家庭に届きます。冷凍ではなく冷蔵にこだわり、「日常の忙しさ」の解決を目指すこのサブスクサービスについて、「FitDish」の責任者である藤田敦史さんに、事業誕生の裏側をお聞きしました。
藤田敦史さん/大阪ガス エナジーソリューション事業部 計画部 電力・サービス企画チームリーダー
新しい価値の提供を考え浮かび上がったのが「食」3つの手間の解決を目指す
これまでの事業の延長性とは違うところで、お客さまに選んでいただく会社になるには、お客さまに役立つサービスを提供するには、と考えた結果生まれたのがこの「FitDish」です。
毎月1回和・洋・中の主菜・副菜合わせて40種類以上の中から10~40パック(プランにより異なる)が冷蔵パウチで届く
私自身、2人の子どもを育てています。
下の子どもが幼稚園の頃、妻に「夕ご飯、何食べる?」と聞かれ、無邪気に自分が食べたい献立を答えたところ「そういうことを聞いているんじゃない」と言われて…。
その会話で、夕飯の献立を決めるといっても、家族の体調や好み、栄養のバランス、調理にどれくらいの時間をかけられるのか、同じようなメニューが続いてないか…、そんないろいろなことを考えて決めなくてはいけないということに、初めて気づきました。
献立を決めた後も、買い物に行って、材料をそろえて…。本当に大変ですよね。
忙しい毎日の生活、日々の食事の用意だけでも、そんな「考えること」から解放できたらというのが、この事業を考えるスタートでした。
できあがった食事をただ届けるのではなく、作る前の段階、献立を考えるところからカバーできれば、まだ世の中では珍しいサービスですし、便利なものになるのではないかと思ったんです。
そこから、「献立を考える」「買い物に行く」「調理する」3つの手間を、まるごと解消できるサービスにしよう!となりました。
こだわりの一つは「おまかせ診断」
特徴の一つが「おまかせ診断」です。
家族構成などの基本情報のほか、食の好み、アレルギーなどの簡単な質問に答えてもらい、その結果から満足度が高いと考えられるメニューを選んでお届けします。
おまかせ診断の質問画面(例)
この質問も、一から作るので大変でした。質問数はどれくらいなら最後まで回答してもらえるのか、質問の順番も、好きなものから聞くのと嫌いなものから聞くのと、回答しているうちに不安に感じないのはどちらか、きちんと私の好みを分かってもらえていると信頼を得るには、どんな順番が良いのか…。
社内や関係者に試してもらいながら決めていきました。
「おまかせ」のみで、利用者が自由にメニューを選べないという仕組みは、社内でも議論のポイントに。
サービスを利用された方からも「好きなメニューを選びたい」「選べないから利用をやめる」という声もあります。
でも「選べる余地」があると、「こっちを選べばよかった」という後悔を生んだり、「この日までに選ばなくては」という新しいタスクを作ってしまいます。
することがたくさんある日常の忙しさを解消するためのサービスなのに、それでは意味がない。
最初に目指した「考えることから解放する」という提供価値を磨き上げ、これまでにないサービスにすることを大切にした結果、「おまかせ」のみになったんです。
スタートしてみると、「選んでもらえて助かります」という声のほか、「子どもが苦手だと思っていた魚料理をパクパク食べた」「好き嫌いの解消になる」という声も。
我が家もそうですが、子どもが小さいときに食べなかったものや、一度作ってあまり食べなかったメニューって「作っても食べなかったら…」と、作らなくなっていくんですよね。
「選べない」に振り切ったからこそのプラスだったと思っています。
人気の「さばの味噌煮」は、藤田さんも好きなメニュー。骨を取った魚を使用しているので、子どもがそのままパクパク食べられるという点が喜ばれているそうです
時短を意識したからこその「冷蔵」
冷凍ではなく冷蔵にしたのも時短、「忙しさの解消」を大切にしたから。
冷凍の場合は解凍が必要になるので、食べるまでに意外と時間がかかります。冷蔵であれば、電子レンジ加熱で1~2分。副菜はそのまま食卓に並べられるものもあるので、5分もあれば盛り付けて食べられる状態に。
また冷凍庫が満杯で、“冷凍庫渋滞”が起こっている家庭が多いということも一つの理由。
FitDishは冷蔵で1カ月程度保存できるので、好きなタイミングで利用してもらえるのもポイントなんです。
初の「食品を届ける」取り組みだけに、気が遠くなるような作業もたくさん
メニューは、大阪ガスクッキングスクールが監修しています。
大阪ガスは、「食」の近くで事業を展開してきましたが、「食品を届ける」事業は初めての試み。
協力してくれる食品メーカーを探す、安全の基準を作るなど、本当に大変で。一緒にできる会社と出会うまでにはかなりの時間がかかりました。
我々が目指す「忙しい人に役立つものを作りたい」という思いに共感していただけるメーカーさんなのか、安心してものづくりをお任せできるのか、リスクコンサルタントなどプロの方にも協力してもらって工場の視察なども重ねて決めていきました。
事業化までは約1年半。本当に気が遠くなるような作業でした。
毎日の食の楽しみにかかわっていきたい
そのまま電子レンジで最短1分であたためOK。湯せん調理も可能です。副菜にはそのままたべられるものも
今は、夕食を意識した約40種類を揃えていますが、今後は、朝食やスイーツ、おつまみ、おもてなし料理など利用シーンを拡げていきたいと考えています。
利用者は、一人暮らし、子育てファミリー、年配の方など、幅広い層。年齢も30代から70、80代まで、まんべんなくいらっしゃいます。
1品だけ作って、あとはFitDishを使う。今日は、全部FitDishで、料理をお休みする。などいろいろな使い方をしていただいています。
アレンジメニューの紹介もしています。
利用後には、フィードバックできる仕組みも用意しているので、どんどん好みのメニューが届くようになっていきます。
365日、いろいろな食の楽しみ方がある。そのあらゆるところに関わっていきたいと思っています。
■事業がスタートするまでの流れ
2019年4月 新規事業担当に。
2021年4月 子どものプリントを管理するアプリ「プリゼロ」をローンチ。並行して、続く新事業の創発を検討。
2022年3月 いくつかの候補から「FitDish」を新事業として検討することが決定。商品・物流・システムなどの準備を進める。
2023年9月 サービス開始。
FitDish
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